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22:振り返り、そして挑む

実況系小説は書くのが楽しい。

苦手な人は二話ほど我慢を。



『さて、今までの従魔戦の戦歴をおさらいしておきましょう。まず一戦目、【聖戦の星屑】対サイクロプスのダイダラ。これが初の従魔戦でした』


『初の従魔相手で緊張が見えたのと、サイクロプスだと侮ったのが悪かったのう。ついでに言えばいきなりダイダラを出すとか運が悪すぎる』


『従魔スロットの確率ってどうなっているんですかね』


『四九階層じゃと単純に強い従魔が出づらく、弱い従魔が出やすくなっておるな。あとは種族差もあるから、ダイダラより弱くても種族的に強い・やっかいな従魔はダイダラより出づらいとかのう。四九階層でダイダラを出す確率は二百回に一回位じゃないかの』


『ちなみにヌラさんが出る確率は……』


『吾輩は何千回に一回じゃろうな。それで当たったら面白いんじゃがのう』



 そう聞くと【聖戦の星屑】がいかに運が悪かったのかが分かる。

 ちなみにその【聖戦の星屑】は装備を整える為に地上での冒険者活動をしている。

 これでホールに居ようものなら他の冒険者にいじられるか、慰められている所だ。



『話しを戻しまして、二戦目は【夢幻の国境】対レイスのエンラでした』


『これは運が良いのか悪いのか、エンラ自体は従魔の中でも弱い部類じゃから、十分に倒せるはずじゃった。しかしこのパーティーには光属性や火属性の攻撃魔法を使えるやつがおらんかった。敗因はそれしかないのう』


『レイスに物理のみというのは無理でしょうね。魔法使いのロナルドが水や風の魔法は使っていたようですが……』


『ほぼ効かんな。聞けば他のアンデッド階層じゃあレイスやゴースト系からは逃げておったらしいし、まぁ対策不足じゃろ』



 これには観客一同苦笑いである。

 それでよくアンデッド階層を突破したな、と思ったものだ。

 しかし属性対策の重要性を冒険者たちに示したとも言える。



『三戦目は【天馬の翼】がパーティーメンバーを五人に絞って戦いに臨みました』


『ゴブリンキングに見つかったというのもあるが、端から五人で戦うつもりじゃったようじゃの』


『対戦したのはデュアルホーンラビットのイナバでしたね』


『これも運が良いのか悪いのか……種族的には従魔の中でも下から二番目じゃからここで出る確率は高い。しかしイナバは従魔ナンバー五。ダイダラ以上に種族詐欺じゃな』



 実際に戦いを見た観客が「あー」と嘆息する。

 相手がデュアルホーンラビットとなれば【天馬の翼】でなくとも油断する。

 なにせ初心者御用達の魔物で、ダンジョンでも地下三階で若年冒険者に簡単に狩られる存在なのだから。


 しかし蓋を開ければ、とんでもない速度で突進され、なぜか土属性魔法まで使ってくる始末。

 驚いているうちに一人二人と倒され、気が付けばその場に残っていたのはピョンピョンと軽快に跳ねるイナバのみであった。悪夢である。



『さて、では【紅の双剣】がどの従魔と戦うのか!果たして勝って五〇階層一番乗りを決めるのか!期待が高まります!』


『楽しみじゃのう』





『――ゴブリンキングは気付いていない!【紅の双剣】の五人が一気に走る!さあそして……到達!ボス部屋に到達しました!』


『うむ、いいタイミングじゃったの。焦って見つかるかと思ったが、よく我慢したもんじゃ』


『さて、ここで【紅の双剣】も一息つきますね。これからの従魔戦に向けての最終準備でしょうか』


『今までずっとゴブリン相手だったのが急に変わるからのう。意識の切り替えをきちんとしないと先のパーティーのように痛い目を見るじゃろう』


『回復は問題ないようですね』


『ゴブリンキングと戦う可能性もあったからのう。その前に回復は終わっておるな』



 観客も息をのむ。

 どの従魔が出てくるのか。

 【紅の双剣】は勝てるのか。

 モニターを見る人は自然と口数が減っていた。



『さあ、【紅の双剣】がボス部屋中央に近づきました。リーダーのティルレインがパネルを操作します。まずは人数を五人と入力……そして従魔スロットが現れました』


『ちなみに吾輩が出たらデュラハンのロクロウが代わりに解説をやるからのう。先に言っておくぞい』


『ああっと!?【紅の双剣】の五人が膝をつき……祈り始めたっ!深いっ!この深い姿勢は教会でも見ないほどの真摯な祈りだーっ!』


『これはマモリ殿のせいじゃの……』



 庭園でも【紅の双剣】を応援する観客が祈り始める始末である。

 運で決まると散々言ってきたし、前解説のマモリも「祈りが足らん」と言ってしまったから起きた事態だが、これにはビーツも頭を抱えた。



『――祈りを解いたティルレインが……スタートの文字に触れた!スロットが回るっ!さて、何が出るか……っ!』


『他の四人も祈るよりも戦闘準備したほうがいいと思うがのう』


『ストップに触れたっ!スロットの回転が止まって……』



 【紅の双剣】も観客もモニターに釘付けである。

 もはや軽口もない。



『……きのこ!きのこの絵で止まった!』


『クサビラじゃな』


『従魔ナンバー四〇!マタンゴのクサビラだーーーっ!!!』



■百鬼夜行従魔辞典

■従魔No.65 エンラ

 種族:レイス

 所属:狐軍

 名前の元ネタ:煙々羅

 備考:実態のないゴースト系モンスターの上位種。

    と言っても本来は金級程度の実力で撃破可能。

    普段は色々なアンデッド階層でうろうろと彷徨っているが、魔物や人間の動きを観察するのが趣味の研究肌。


■従魔No.5 イナバ

 種族:デュアルホーンラビット

 所属:鬼軍

 名前の元ネタ:因幡の白兎

 備考:種族的な弱さランキングでは、スライムのクラビーに次ぐ最弱っぷり。

    しかし訓練と称した遊びを経て、常識外の強さを持った。

    とは言え所詮は兎なので、まともに戦えれば銀級上位程度の実力で勝てる相手。


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