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王都ダンジョン【百鬼夜行】へようこそ!  作者: 藤原キリオ
第一章 ダンジョンのある日常
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01:初めての王都、初めてのダンジョン

この物語は、前作【大魔導士「ベギ〇ゴンって何属性ですか?」】の7~8年後という設定ですが、別に見なくても問題ないと思います。

一応URLを貼っておきます。

https://ncode.syosetu.com/n2993fu/



「しかし王都は人が多いね」



 そう呟いたのは十歳の新人冒険者ロビンだ。

 彼は同郷の仲間四人と共に大通りを眺めながら歩く。

 生まれ育った村から出て、冒険者ギルドで登録を行った後、王都まで一気に足を延ばした。


 村から町に出た際にも、その町並みや人混みに驚いたが、王都は想像以上だった。

 馬車が四台は楽に通れる広さの大通りには綺麗に石畳が敷き詰められ、その脇の歩道には絶えず人が流れる。

 まるで祭りでもあるかのように露店が並び、商店や住居の家々は二階建てや三階建てがほとんどだ。


 王都は巨大な円形を、ぐるりと城壁が囲っており、南・東・西にそれぞれ門がある。

 東西南北に大通りが十字を切るように走り、北の突き当りが王城だ。

 白い尖塔がいくつも連なった豪奢にして荘厳な城がそこからも見える。

 当然、北側に貴族が集まるようになり、南東・南西にはスラム街もある。



「ギルドもデカかったしな」

「村から出て来た身としては緊張しちまうよ」



 盾戦士のヒューズと魔法使いのベラムがそう話す。彼らはロビンより二歳年上だ。

 ロビンより一足先に冒険者になった先輩でもあるが、ロビンを加え五人パーティーとなり改めて新人パーティーとして王都での活動を始める。


 冒険者ギルドの王都支部は大通りが交差する中心、超一等地にある。

 これは単に金を積めば買える土地ではなく、王からの信頼が厚くなければ居を構えることさえできない、そんな土地だ。


 冒険者ギルドで拠点変更の手続きを終えた彼らは、大通りを挟んだ向かいの屋敷に向かった。



「ここでいいのよね……」



 そう呟いたのは回復術士のリーゼ。

 そこにあったのは大通り中心部に似つかわしくない貴族の邸宅を思わせる建物だった。

 こうした貴族邸宅は王都北側の貴族区に建つべきものだ。

 鉄柵と植え込みに囲まれたそこには、正面に大きな柵門があり、衛兵が二人、門を挟むように立っている。

 柵門の上には、アーチ状の看板が掛かっていた。



「ダンジョン【百鬼夜行】……ほんとにここだわ」



 剣士のレリュースが看板を見上げながら言った。

 大通り中心部という人通りの多い場所にあって、それでも尚、ここが一番人口密度が高いのだろう。

 そう思えるほど、引っ切り無しに人々が門をくぐる。

 冒険者だけではない。平民服を着た普通の都民も見受けられた。


 なぜ、ダンジョンに冒険者でもない人が?

 そう思った彼らが目で追って行くと、広々とした庭が目に入る。

 敷地にある屋敷より広いであろう庭では、人々が丸テーブルを囲み、庭内にも出された露店で買い物をし、飲み食いしながら何やら騒いでいた。

 その視線の先には大きな壁、いや、絵か。それも違う。

 冒険者が魔物相手に戦っている様子が伺える、動く巨大な絵だ。



「なんだあれ……」



 呆然として口を開けていた彼ら五人の元に、門番の衛兵が近寄った。

 門の入口付近で立ち止まっていたから通行人の邪魔になるのかもしれない。そう思い少し恐縮する。



「坊主たち、王都に来たのは初めてか?」

「は、はい」

「あの、あれ、何なんですか?」


「あれは『モニター』って言われてるダンジョン専用の魔道具さ。今のダンジョン内の様子がそのまま映し出されるんだ」

「えっ」



 彼らには理解が及ばなかった。

 遠くの出来事を近くで見ることが出来るなんて想像すらしたことがない。

 しかし、話を聞く限りそれはそういうものらしく、結局は「都会ってすごい」「百鬼夜行ってすごい」という結論で納得した。


 モニターで映し出されるダンジョンでの戦いは、滅多に戦う現場を見ることの出来ない一般都民からすれば大変興味深く、今では王都最大の娯楽と言ってもいいほどの賑わいを見せている。

 冒険者にしても、映されれば都民から祝福され、人気が出る・名を売れるなどの効果がある。

 今、一番下の階層で戦っている冒険者などは映される回数も多く、すでに英雄扱いである。



「屋敷のホールにもモニターはあるから、冒険者ならそっちで見る人が多いぞ」

「そうなんですか」

「入ってすぐにダンジョンの受付カウンターがあるから、潜るんならまずはそこで受付だ」

「分かりました。ありがとうございます」

「あ、あと初心者講習は受けたほうがいいぞ」



 初心者講習?と疑問を持ちながらも衛兵にお礼を言い、五人は柵門をくぐった。

 門から屋敷まで芝生と石畳が綺麗に並び、植木の向こうには庭園でモニター観戦する人々の姿がある。

 屋敷までの歩道にも露店がいくつかあり、冒険者用の薬や、おそらくダンジョンで必要になるのであろうランタンやロープなども売っている。

 また別の露店ではおみやげや小物なども売っており、危険なはずのダンジョンが観光名所と化しているのがよく分かった。


 そうして露店を眺めながらゆっくり歩いていると、端を歩いていたロビンの肩にぶつかる人影があった。

 急いで屋敷に向かっていたのだろう、その少年は青と黒を足したような髪の毛で深い緑の立派なローブを身に着けていた。



「あ、ご、ごめんなさい!」

「ああ、こっちこそ道を塞いじゃってて」



 少年が慌てて頭を下げるのをロビンは同じように頭を下げて対応した。

 その少年は十歳のロビンと変わらない年齢に思えた。

 自分のように若い子供もダンジョンに来るのかと、少し嬉しくなり笑顔を向ける。



「あ、えっと君たちは、初めてここに来たのかな?」

「ああ、そうだけど……」

「そっか!じゃあいっぱい楽しんでいってね!」



 そう言うと少年は屋敷に走って行ってしまった。

 どこかの冒険者パーティーの魔法使いか、はたまた屋敷で働いているただの少年なのか、いやそれにしてはローブが立派すぎるなど話しながら幾人かの人波に紛れ屋敷に到着する。



「うわ……」



 屋敷に入って早々、五人は足を止めて唖然としてしまった。

 冒険者が多いのは分かるし、正面の受付カウンター、その後ろのホールにモニター観戦している冒険者も大勢いるのは話しに聞いた通りだ。

 そんな様子より何より、この玄関から受付、そして奥の観戦スペースまでがやたら広い。

 外観から見た屋敷の広さよりも明らかに広い。

 さらにホールの左右にはいくつも部屋があるし、ホールの奥には二階に上がる大階段も見える。



「どうなってんだ……」



 ヒューズが思わず呟く。

 そして誰からともなく上を見上げると、様々な色彩の糸で編み込まれた巨大な絵織物が天井を覆っていた。

 ホールの半分を占めるかのような大きさのそれは、まるで今にも動き出しそうなほど写実的で、感動と畏怖を同時に覚える。



「これ……百鬼夜行……?」



 リーゼの問いに全員が頷いた。

 中央に立つ一人の少年と、彼が従える百体の従魔。その集合絵。

 何人か人間も見えるが、人型の魔物かもしれない。サイクロプスやスレイプニルなど有名な魔物も見える。


 そうして眺めて、ふと気付いた。

 中央に立つ人物は、青黒い髪でローブをまとった少年だと。



「あっ!さっきの子!?」

「えっ……じゃああれが……」

「英雄――【百鬼夜行】のビーツ・ボーエン!?」



 その問いかけに答える者はいなかったが、彼らは納得した。

 従魔を百体従えた希代の召喚士であり、英雄と呼ばれる冒険者パーティーの一人。


 【百鬼夜行】とは彼の二つ名であり、彼の百体の従魔の呼称であり――そしてこのダンジョンの名前でもある。




ロビンくんたちは主人公ではなく初心者視点キャラです。

いきなりぶつかってきやがったショタ野郎が主人公です。

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