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王都ダンジョン【百鬼夜行】へようこそ!  作者: 藤原キリオ
第九章 ダンジョンアタック
132/170

131:【白の足跡】vs四九階層



「「「「は、【白爪】陛下!?」」」」


「ん?」



 地上部の屋敷の入口。

 ベン爺こと【白爪】ベンルーファスがその声に振り返る。

 そこに居たのは五人の獣人。獅子、黒豹、大猿、犀、そしてカモノハシ。



「おお、【白の足跡】じゃったな。頑張っとるようじゃの」


「お、俺たちの事をなぜ!?」


「そりゃ獣王国のアダマンタイトの事は知っていて当然じゃろう。【赫鬣(せきりょう)】【瞬影(しゅんえい)】【飛刃(ひじん)】【灰壕(はいごう)】それと【猛獣使い(ビーストマスター)】じゃろ?」


「「「「おおっ!それは俺です!」」」」

「……私、アダマンタイトじゃないのに……ノハシ」


「嬢ちゃんはある意味四人以上に有名人じゃろうが。何も強さだけじゃリーダーは務まらんよ」



 憧れの【白爪】に知られていた四人は興奮冷めやらぬといった感じで騒いでいる。

 特に憧れていないヒョッコリは一人冷めていたが、それでも王族に知られていたという現状に多少の緊張が見えた。

 とは言え今さら王族との会話ごときでオドオドするようなヒョッコリではない。

 リーダーとなり四人に付き合ってきた事でどれだけ苦労させられたと思ってるノハシ。そりゃ精神も図太くなるノハシ。



「で、お前らどの階層行くんじゃ?」


「四九階層ノハシ」


「おお、んじゃ一緒に行くか」


「「「「なんとっ!【白爪】陛下と一緒!?」」」」

「あー、お邪魔じゃなければよろしくお願いするノハシ」



 構わん構わんとベン爺は【白の足跡】の五人を引き連れ、転移室へと向かった。

 四人は相変わらずテンションが高い。戦いに赴く前にはいつも高いのだが、今日は一段と高い。

 対するヒョッコリはベン爺と共に行く事で、厄介な″ゴブリン王国″を楽に攻略できないかと思案していた。





「ちょっと待つノハシ~~~!!!」



 楽に攻略…………ダメでした。

 テンションの上がり切った四人は即座に入都。ゴブリンをなぎ倒しながら大通りを北進し始めたのだ。

 「俺が目立って【白爪】陛下にいい所を見せる!」「いや俺だ!」「いや俺だ!「いや俺だ!」そんな感じだ。

 そこにヒョッコリが辛うじて繋ぎ止めていたパーティーとしての姿はなく、四人が競い合い、邪魔しながらゴブリンを倒すという鉄級パーティーもビックリの醜態を晒していた。

 最近ではヒョッコリが待てと言えば言う事を聞いてくれていたが、今日はダメらしい。

 叫びながら四人の後を必死に追う小柄なカモノハシ。


 こりゃマズイわ、とヒョッコリの一歩後ろで獣王国の後輩を眺めていたベン爺もさすがに口を出す。



「待てい、お前ら」

「「「「はいっ!」」」」



 ピタッと止まる四人。直立でベン爺へと振り返る。

 なんで陛下の声は聞こえるノハシ……とヒョッコリが項垂れている。



「お前らは何をやっておるんじゃ?獣王国最強のパーティーの戦いとは個人の力でバラバラに戦う事なのか?なぜリーダーの言う事を聞かん。そんな事では―――」



 大通りのど真ん中で先代獣王陛下による説教が行われた。

 時々襲って来るゴブリンを片手間にぶっ飛ばしながらの説教だ。四人は直立不動でベン爺の言葉を聞き逃すまいといつになく真面目な表情をしている。


 ベン爺はパーティーとしての戦い方を懇々と説明した。

 斥候は視野を広く危険を察知し、盾役は攻撃に出向かず体勢を整える。遊撃は味方との距離を離さず、攻撃も突出してはならない。

 どれも当たり前の事で、ヒョッコリが普段から口酸っぱく言っている事である。

 しかしベン爺は冒険者時代にも後進の育成を行い、王城でも騎士団を率いていた経験があった為、教えるのが上手かった。バカ相手でも分かりやすい指導だった。


 それから四人の動きは見違えるほど変わった。

 これがベン爺が居る今だけなのか、これからも続いてくれるのかはヒョッコリが不安に思う所である。

 四人が並んでゴブリンと戦う様を後ろから見つつ、ヒョッコリとベン爺が話す。



「ありがとうございますノハシ、陛下」

「嬢ちゃんも大変じゃのう、ちょっと同情するぞい」

「……陛下がリーダー代わってくれると助かるノハシ」

「ワハハッ!若者に交じって老いぼれが出しゃばりたくないわい。レレリアの嬢ちゃんと適度に遊ぶくらいがちょうど良いわ」



 残念ノハシ、とがっかりした様子のヒョッコリだったが、すぐに顔を上げ、前の四人に指示を出し、魔法での参戦をし始めた。

 そんなヒョッコリの様子に満足気なベン爺。


(やはりこのパーティーの肝はこの嬢ちゃんじゃな)


 獣王国最強と呼ばれるパーティー。

 数十年前には自分たちもそう呼ばれたが、【白の足跡】は当時の自分たちに比べて粗削りすぎる。

 粗削りのままアダマンタイトになったのはそれだけ個人の力量が優れている証だ。

 大器晩成。四人の器は自分より大きいのかもしれない。

 しかし器がいかに大きかろうと中身が伴わなければただの空の器。

 空のままか、水を注ぐか、酒を注ぐか、それはヒョッコリ次第だなとベン爺は少し楽し気に笑った。





「頑張れよ」


「「「「はいっ!」」」」

「助かったノハシ」



 ボス部屋へと向かう【白の足跡】を激励したベン爺。

 さて、どうしようかと少し悩む。

 ベン爺が模擬戦しようと思っていたゴブリンキングは【白の足跡】によって倒された。ならばリポップするまで待とうか、それとも日を改めようかと。


 そんな矢先、広場に入って来た別のパーティーに声を掛けられた。



「なんじゃ【白爪】がおったのか。タイミングが悪かったな」


「……【剣聖】か」




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