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王都ダンジョン【百鬼夜行】へようこそ!  作者: 藤原キリオ
第一章 ダンジョンのある日常
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11:サキュバスとサキュバス



 地下一〇一階層の居住区画。


 いつものように掃除道具を持って通路を歩く侍女の姿があった。

 サキュバスのホーキである。

 彼女は欲に執着するサキュバスにあって『奉仕欲』を本幹としている。

 仕事は多く、掃除・洗濯からビーツの給仕まであるので、他の従魔の眷属などを利用し、仕事にあたっているのだ。

 ちなみに彼女自身に眷属召喚はできない。


 ホーキは『研究室』と書かれたプレートが貼ってある部屋の前で立ち止まる。

 若干、眉間にしわを寄せながらドアノブを回し、部屋の中を確認すると、「はぁ」と大きくため息を吐いた。


 部屋の中は、ゴミ屋敷のごとく、ガラクタやら衣類やら資料やらがばら撒かれ、中央には倒れ伏した女性がいた。

 知らない人が見れば事件が起こったのかとでも思う所だが、ホーキは冷静に倒れた彼女に近づき、声をかける。



「お嬢様、起きて下さい」

「zzz」



 何の反応もない事にこめかみをピクつかせながら、ホーキは持っていた掃除用具のバケツを、その女性の頭に落とした。



「ふあっ!?何、何!?」



 慌てて起きた女性は、ダンジョン【百鬼夜行】のトラップデザイナー、サキュバスのモクレンだった。

 ずれた丸眼鏡を付け直し、白衣の袖でよだれを拭いている。

 それに対し、ホーキはため息交じりに話しかけるのだった。

 


「お嬢様、寝るのならば自室でと何度も申し上げましたが?」


「はっ!ホーキ!あ、いや、ついつい研究に熱が入っちゃってね~……あはは」


「片付けもせず、食事もとらず、風呂にも入らず、いくら『創作意欲』のサキュバスと言えど、ずぼらが過ぎます」


「ごめんなさ~い」


 

 こうなったホーキには素直に謝ったほうがいいという事は長年の経験で分かっているのだ。



 モクレンとホーキは【百鬼夜行】の中で、唯一の同族である。

 百体もいるのだから種族のかぶりもありそうなのだが、ビーツの能力なのかたまたまなのか、なぜかモクレンとホーキ以外には居ない。


 逆に、なぜ同族が従魔になっているのかと聞かれれば、同時に従魔契約したからとなる。

 廃れた集落のただ二人の生き残り。

 長の娘と、その侍女。

 サキュバスらしくないサキュバスは、何の因果かビーツ・ボーエンに出会い、今はダンジョンで働きながら楽しく過ごしている。



「私はもうお嬢様のお付きではないのですから、ご自分の事はご自分で出来るようなさって下さい」


「う~ん、分かってるんだけどね~」



 ビーツの従魔である以上、ホーキの主人はビーツである。

 モクレンも分かってはいるが、ホーキに甘えてしまう所があるのだ。



「はぁ……とりあえずお嬢様はお風呂に行って下さい。その間に部屋を片付けますので」


「分かったけど……変にいじったりしないでね!特にその魔石と……」


「はいはい承知しています。お風呂の後は食事でもしていて下さい。どうせ食べてもいないでしょうから」


「う~~わかったよ」



 掃除の邪魔だと言うように、部屋から追い出すホーキ。

 しぶしぶという表情で部屋を出ようとするモクレン。

 扉の前でふと立ち止まり、くるりと振り返る。



「お付きじゃないってわりには未だに『お嬢様』なんだね」


「お嬢様はお嬢様ですから」



 何でもない事のようにホーキは言う。

 その言葉にモクレンも微笑んだ。



「ありがと【ルヴィエラ】」



 そう従魔になる前の名前を出し、モクレンは部屋を出て行った。

 部屋に残されたホーキは少し笑い、そして掃除を始めるのだった。




■従魔No.52 ホーキ

 種族:サキュバス

 所属:狐軍

 名前の元ネタ:箒神

 備考:奉仕欲を力とするサキュバス。

    元々はモクレンの従者であったが、二体揃って従魔となる。

    それからはビーツを一番の主としてダンジョンの家事全般を取り仕切っている。


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