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117:獣王国の【白の足跡】



「どうしてこうなった……ノハシ」



 宿の一室で頭を抱えうずくまる。

 小柄なカモノハシ獣人の彼女がそうすると、まるで小さい球体だ。

 毎度のように思う疑問を解消すべく、今まで自分の身に起きた境遇を見つめ直す。





 獣王国王都、冒険者ギルド。

 そこに初めて訪れた彼女はパーティーも組んでいない新米冒険者だった。

 ギルドの中はどこの街でも同じように喧噪の雰囲気に満ちている。

 だがその日のギルドは、何やら冒険者同士での言い争いが起こっていた。


 獅子の獣人男性はこう言う。

 「俺は攻撃力だけなら【白爪】陛下をも越える。だから【白爪】陛下を継ぐのは俺だ」と。


 黒豹の獣人男性はこう言う。

 「力は及ばないが素早さだったら【白爪】陛下をも越える。だから【白爪】陛下を継ぐのは俺だ」と。


 大猿の獣人男性はこう言う。

 「探索能力や飛び道具なら俺だ。確実に【白爪】陛下以上だ。だから(略)」と。


 犀の獣人男性はこう言う。

 「攻撃で【白爪】陛下に劣っても防御ならば負ける気がしない。だから(略)」と。



 それを見た彼女――ヒョッコリは大体のいきさつを理解した。

 獣王国、特に王都において未だ【白爪】ベンルーファスの人気は高い。

 世間的に英雄が【魔獣の聖刀】というパーティーにあろうとも、獣人の中で英雄と言えば【白爪】を思い浮かべる者が多い。

 そして名だたる冒険者たちが″次期【白爪】″を目指し、切磋琢磨しているのだ。

 もちろん全員ではないし、ごく一部の思想ではある。ヒョッコリも別に【白爪】を目指して冒険者になったわけではない。


 だから全くの他人目線でつい呟いてしまったのだ。



「……だったら四人で組めば【白爪】陛下を越えるんじゃないノハシ?」



 別に大声を出したわけでもない。

 たまたまヒョッコリが喋ったタイミングで静かになっただけだ。

 それでもその声はギルド内に通った。


 四人の獣人が一斉にヒョッコリを向く。

 静まったギルドと四人からの目線に「えっ、何?何これ?」と困惑するヒョッコリ。

 そして獣人男性四人の声が揃った。



「「「「それだ!」」」」




 ヒョッコリにとっての誤算はいくつもある。


 その四人が四人ともソロのミスリル級、しかも二つ名持ちという超有能な冒険者だった事。

 四人が揃いも揃って【白爪】ベンルーファスを尊敬し、いがみ合っていた事。

 さらに四人ともに脳筋バカであった事。


 ……さらにさらに、なぜか四人をまとめ上げた事でパーティーリーダーに抜擢された事。



 当時銅級のヒョッコリは頭を抱える日が続いた。

 どうしてこうなったノハシ、と。

 しかし超有能たちを率いるリーダーとしては胸を張って活動しなくてはいけない。

 力を信奉する獣王国では尚更だ。


 好き勝手する四人をどうにかまとめ、リーダーっぽく言い聞かせる毎日。

 引っ張っているようで引っ張られ、分不相応な高ランクの依頼を受ける日々。

 そして短期間でヒョッコリはミスリル級、四人はアダマンタイト級にまでなった。

 もともとソロでミスリルの力はあった四人だ。

 パーティーとして機能すればさらに上位に行くのも当然。

 そしてパーティーとして機能させるにはヒョッコリが必要。……たとえ本人にその気がなくても。


 そうして胃が痛くなる毎日を過ごしていた矢先、ギルドに情報が入る。

 冒険者として復帰していた【白爪】陛下がビーツ・ボーエンの従魔に惨敗したと。


 復帰した時点で【百鬼夜行】に行こうと五月蠅かった四人だったが、長期依頼が入っていた為、ヒョッコリは何とか押さえつけていた。

 が、依頼が終わり、そんな情報が入れば行かざるを得ない。……というか止めるの無理ノハシ。



 かくして獣王国、現・最強パーティー【白の足跡】が参戦する運びとなった。


 特大剣使い、獅子の獣人【赫鬣(せきりょう)】のハウルガスト。

 双剣使い、黒豹の獣人【瞬影(しゅんえい)】のホロウバーツ。

 ナイフ使いの狩人、大猿の獣人【飛刃(ひじん)】のヘキサエッジ。

 盾戦士、犀の獣人【灰壕(はいごう)】のフロストン。


 そして、魔法使い、カモノハシの獣人【猛獣使い(ビーストマスター)】のヒョッコリ。


 巨躯の四人と彼らの半分以下のサイズのリーダー。

 彼らは一路、王都に向けて旅立った。



「目指せ【百鬼夜行】!【白爪】陛下の無念を晴らすノハシ!」

「「「「おう!」」」」



 こうなりゃヤケである。





 登録を済ませ宿でヒョッコリが膝を抱えている頃、登録名簿でそれを確認したビーツ。



「うわぁ、今度は獣王国最強の【白の足跡】か……。アダマンタイトが四人でリーダーだけミスリル級なんだ、珍しいなぁ。……いや、でもきっとリーダーなんだから四人以上に強いんだろうなぁ、何か理由があってミスリル級なんだろうな。……でも、カモノハシって……居るんだ……初めて見るなぁ」



 ヒョッコリへのハードルが知らぬ間にどんどん高くなるのはいつもの事である。

 比例して胃痛が増すのだ。




新ジャンル:主人公系カモノハシ。これは流行る!

……どうしてこんなキャラが産まれたのか、未だに謎ノハシ……。


白の足跡は「ハ行」縛り。

ハウルガスト、ヒョッコリ、フロストン、ヘキサエッジ、ホロウバーツ

無駄にカッコイイ名前(一名以外)を意識しました。

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