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105:とある猫獣人のインタビュー



「本日はお忙しい所お時間頂きありがとうございますニャッ!さ、早速ですが……」


「ちょ、ちょっと落ち着きましょう、ニャニャシーさん!とりあえず席に着いて!」



 立て看板による告知の翌日、すぐにシェケナベイベータイムズの新聞記者ニャニャシーが屋敷を訪れた。記事は鮮度が命と言わんばかりの早い対応である。大スクープを目前にして興奮冷めやらぬ状態であった。

 今は屋敷二階の応接室にて、ビーツ、シュテン、タマモと共にローテーブルを囲んでいる。

 主題のオオタケマルはおやすみ中につき欠席である。


 ホーキの淹れた紅茶を飲んで落ち着いた後、改めてビーツは説明し始めた。



「――で、僕も【三大妖】も居なかったですし、ジョロたちは避難誘導で忙しかったですし、かと言って僕も迎撃に参加しないってわけにもいかないな、と」


「ニャるほど。あ、【奈落の祭壇】の事も後で伺いたいですニャ」


「了解です。それであの規模の魔物の群れに対して出せるのがオオタケマルだけだったんですよ。ただオオタケマルの存在を言ってなかったんで逆に混乱させる事態になっちゃいまして……あ、ビーツが謝っていたと書いておいてもらえますか?」


「了解ですニャ」



 ビーツはそういう話に持って行きたかったらしい。

 緊急事態でオオタケマル以外に出せなかったんですよと。

 実際はヌラあたりでも単独で対処できたであろうが……。



「人化した姿は絵織物のまんまですかニャ?身長はオロチ殿と同じくらい……」

「そうですね」

「竜化の場合はどうですかニャ?あ、私は実際に見たわけじゃニャいもので」

「えっと、ユーヴェさんのウィンドドラゴンは知ってますか?」

「はい、一度見た事ありますニャ」

「あれの三~四倍です」

「ニャんと!デカッ!城に匹敵しますニャ!」



 メートルと言っても通じないのでビーツの感覚だが、オオタケマルは尻尾の先まで含めれば百メートルを越える。

 一方でユーヴェの従魔であるウィンドドラゴンは二~三十メートル程だ。これは竜種の中では小柄な部類である。

 それでも劣化竜種であるワイバーンが十メートル弱なのでさすが竜種は格が違うというわけだ。しかしその竜種の中にも″格″が存在するというだけで……。



「あ、人化した姿で空を飛んでいたって情報もありましたけど……」


「そうですね。竜は翼を羽ばたかせて飛んでいるわけではなくて、魔力で飛んでいるらしいです。いわば飛行魔法ですね。ですんでオオタケマルは人化して翼がなくても飛べると」


「へぇ~そうニャんですか」


「そういう魔物って多いらしいですよ。オロシやアカハチも羽根を持ってますけど実際は魔力で飛んでいるらしいです。あ、いつか分かりませんけどモンスター図鑑でドラゴン特集やる時はそこら辺も説明で書きますんで」


「おおっ!その情報は嬉しいですニャ!発売日が決まったら教えて欲しいですニャ!」



 どう区分けされているのはビーツにも不明だが、実際に翼を使って飛行する魔物と魔力で飛行する魔物が居る。

 鳥や虫系の魔物は前者が多いがアカハチもキラークイーンビーという虫系なのだ。しかし眷属のキラービーは前者なので余計に分からない。



「それでダンジョンボスって事ニャんですけど……地下百階に居るってことですかニャ?それとてっきり【三大妖】がダンジョンボスかと思ってましたけど……」


「えっと、【三大妖】はダンジョンボスではないですし、オオタケマルが百階に居るのも確かです」


「うーん、つまりオオタケマル殿は【三大妖】より強いって事ですかニャ?」


「うむ」「うむ」

「二人も頷いてますけど個人戦で従魔最強なのは間違いないですね」


「ニャんと……!これまたスクープですニャ!」



 従魔最強である事を他でもないシュテンとタマモが認めている。

 これまでの巷の定説では従魔最強が【三大妖】であるとされていた。誰も疑わなかったであろう。何せ聞いた事もない種族の災害級の魔物であり最古参の三体なのだから。

 それをも越えるとは、さすがはドラゴン……とニャニャシーは興奮を露わにする。



「ちなみにエンシェントドラゴンとはどういった種ニャんですか?」


「えーっと、それを言ってしまうとボスの能力をバラす事になるので今は言えません。ただあの巨体で飛べる事、ブレスが強力だという事、人化できる事、これはすでにバレているので書いても大丈夫です」


「ニャー、確かにあまり詮索できませんニャ。今日もですけど普段表に出ない事は関係ありますかニャ?」


「うーん……関係あるようなないような……まぁ地下百階のボス部屋に居るのがダンジョンボスの役目でもありますから」


「確かにそう言われればそうですニャ」



 普段ずっと寝てるとは言えないビーツであった。

 種族特性かもしれないのでネタバレになるかもしれないし、違うにしても「寝てます」とは言いづらかった。

 結果としてダンジョンボスはボス部屋に居るのが当たり前という回答になったが、それもまた正しいのでビーツとしては満足である。



「従魔とニャった切っ掛けはどんニャ感じだったんですかニャ?正直ドラゴンを従魔にするって……まぁユーヴェ殿みたいに卵から育て上げたというのニャら分かるんですが……」


「あー、【聖典】の″世界一周編″の下巻知ってます?」


「もちろん読んでますニャ。あっ!あの種族も名前も出されてなかった従魔ですかニャ?あれが百番目だったんですかニャ!?」


「そうそう。それがオオタケマルです。情報を隠す必要があったんで、アハハ……」



 現在、世界で二番目に売れている本はビーツ著作のモンスター図鑑シリーズである。

 では世界で一番売れている本はと言うと【魔獣の聖刀】の英雄譚シリーズだ。

 正式な名前は『聖典~【魔獣の聖刀】の英雄譚~』となる。

 著作はデューク・ドラグライト。


 彼は前世でも無類の本好きであったが特に神話やファンタジー系にはまっていた。そんな彼がファンタジー世界に転生した以上、本場のファンタジー本を読みたいという欲求に駆られるのは当然であった。なにせそれは″ノンフィクションのファンタジー″なのだから。

 しかし本自体が高価であり英雄譚は多くあったものの日記や伝記、吟遊詩人が歌うようなものばかりで、彼が読みたい『小説』とはほど遠い。というか『小説』というものが世界に存在していない。


 なので彼は転生者三人とパーティーを組み冒険者となり世界を巡る事にした。

 「小説がないのなら自分で書けばいいじゃない」と。

 「チートテイマーと六属性魔法使い(セクストゥープル)が一緒なら話題性に事欠かない。おまけに四人共転生者。絶対に何かしら事件が起こる」と。


 そして彼は自身の二つ名を【聖典】とする。

 これから発売されるであろう自作の『小説』が実家の職である教会組織経由で発売される事も見越して『この世界にない教会出典の著作物』という意味を込めた。そう、世界に聖典なんてものは存在しないのだ。だから小説=聖典としてもいいだろうと。

 つまり彼の二つ名は【小説家】のデュークという意味である。


 結果として彼らは英雄となり英雄譚【聖典】も大ヒットした。

 今では世界中で売られ、さほど裕福ではない一般人でも買う者が多い。

 当然ニャニャシーも全巻読破しており、世界一周編の下巻に出て来た「とある魔物」の詳細も知っている。



「ニャるほどニャ~」

「あっ、そういえばデューク君、今度新刊出すって言ってましたよ」

「ニャニャッ!?いつ!?いつですかニャ!?」

「いや、いつかは知りませんけど……」



 思いもかけず聖典のファンだったニャニャシー。

 オオタケマルの話より食いつきが良いなぁとビーツが苦笑した。




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