表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
105/170

104:とある狸の(皮)算用



 ウェアウルフという魔物が居る。

 二足歩行の狼だ。力と速さに優れ、牙と爪で攻撃する。

 一体だけでも銀級上位のパーティーが最低限必要だが、やっかいなのは群れで行動する事。群れとなれば金級中位~上位が最低限となる非常に強力な魔物だ。


 似たような魔物でウェアラクーンというのが居る。要は狸だ。

 力も速さも危険度もウェアウルフに劣るが賢さや魔力では上回る。

 群れで行動するのは同じだが、賢さがある分″変わり者″も出やすい。一匹狼ならぬ一匹狸が出やすいというわけだ。



「ギョーブ殿、この値段ですと【三大妖】より高くなりますよ。さすがに厳しいのでは……」


「いやいや、オオタケマルはダンジョンボスやで?滅多に表に出ないダンジョンボスが高くなるのは当然やろ」



 地上部の屋敷内、地下一階への階段がある部屋の隣には『商談室』という部屋がある。

 そこで商人ギルドの担当と話しているのは、ウェアラクーンの【ギョーブ】であった。

 一八〇センチの身長と腹の出た体格。しかし太っているわけではなく顔つきは鋭い狸だ。


 ビーツは様々な商売に手を出している。

 【百鬼夜行】の運営自体は国営と同じ扱いなので衛兵やギルド職員の給料を出すわけではないが、屋敷内の飲食、庭園の露店などの出店契約、図鑑やカード、フィギュアの販売などなど枚挙に暇がない。


 これをビーツが個人で管理するのは無理だと判断し、金銭の動きや商人ギルドとの対応を全てギョーブに一任している。

 彼は人間の商人に憧れて群れを出た″変わり者″であった。ビーツが【百鬼夜行】を経営し商売の要素が出て来た時点で自ら率先して関わった。

 いわば【百鬼夜行】の経理部長・営業部長といった位置づけである。



「おまけに人化バージョンと竜バージョンの二種類!すでに型はこんな感じで出来てまっせ」


「おおっ!これはまたすごい!なんと精巧な……」


「こっちはトレーディングカード。まぁこれは次弾のロットでまとめるから試作やけど」



 オオタケマルの存在が看板で告知されてから、まだ二日である。

 今、王都で一番ホットな話題は例の巨大ドラゴン、百番目の従魔、ダンジョンボスである。

 フィギュアやカードの需要が出るだろうとはすぐに予想できた。

 なのでビーツは取り急ぎクローディアに原画作成を依頼したのだ。カードのデザインはもちろん、フィギュアのデザインもクローディアなのである。

 躍動感溢れる従魔の立ち姿をデッサンし、それを元にジョロが土魔法で雛型を作る。商人ギルドはその雛型を以って量産に当たるという流れだ。



「あぁ、もう出来てるけど?竜人バージョンと竜バージョン。フィギュアもカードも」



 どうやらとっくに用意してあったらしい。

 クローディア的にはいつ公表しても良いように書き溜めていたとの事。趣味でデッサンしているというのもあるだろう。

 いずれにせよビーツとしては「後はギョーブとギルドに任せよう」という状態である。

 というわけで公表から二日目にして、ギョーブの打ち合わせが行われているのだ。



「ではとりあえずフィギュアの製作から始めますが……人化バージョンと竜バージョン、どちらも同じ値段で売るつもりですか?」


「どうやろなぁ、竜バージョンの方が売れそうな気ぃするし」


「こう言っては何ですけど見た目が幼い従魔の方はあまり……」



 ビーツ的にはありがたい事だが、王都にはロリコンが少ない。

 【三大妖】でもタマモ・シュテンに比べオロチの売り上げはジョロにも劣る。まぁ【三大妖】であり最古参という事で知名度が非常に高い為、そこまで差はないのだが。

 これがマモリとなると顕著になる。幹部勢だというのに同じジョロに大きく離される。なんなら滅多に表に出ないコロモの方が上である。


 原因は見た目の幼さもそうだが、あぐらで菓子を頬張るというモデリングが問題なのだろう。

 しかしクローディアに悪意があったわけではなく、マモリを一番表現したポーズがそれであるとは本人の談だ。これに対しマモリは何とも思っていないようで、もしゃもしゃ何か食べていた。

 それでもエルフを中心に従魔内では売れている方なのだが……。



「ま、とりあえず初回ロットは同数、同値でええやろ」


「様子見ですね。承知しました」



 その後細かい打ち合わせをし、商談は終了した。

 ギョーブは管理層の自室へと戻ると、執務机に向かい何枚もの紙を見比べながら左手では電卓をカタカタと高速で動かす。

 その動きは熟練の事務員を彷彿とさせる。



「大旦那は何や対応で忙しいらしいけど、オオタケマルフィーバーが起こるのは確実や。この後も新聞社から掲載料の徴収と、グッズ販売の収入、オオタケマルにあやかった商品やら出店も出るやろ。ぐふふ……こら、こっちも忙しなるでぇ!」



 ちなみにギョーブ個人に給与が入るわけではない。

 個人資産が増えるわけでもない。

 商売の真似事が趣味なだけである。





■百鬼夜行従魔辞典

■従魔No.92 ギョーブ

 種族:ウェアラクーン

 所属:狐軍

 名前の元ネタ:狗神刑部狸いぬがみぎょうぶたぬき

 備考:【百鬼夜行】の商売全般担当。

    人間の商人に憧れ真似する変わり者。

    えせ関西弁で喋るが、それが種族特性なのか、誰かを真似しているのかはビーツにも不明。



ギョーブの姿は戦国ランスの徳川家康を参考。

言うまでもないかもですけどタマモは同じく戦国ランスのお町、ジョロは名取を参考にしています。

どんだけ戦国ランス好きなんだっつー話し。

知らない人で18歳未満は検索しないで下さい。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ