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この世界の裏側で誰かが何かをしている〜最強のモブと自重出来ない美少女双子妹〜  作者: 涼月 風
第三章

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第57話 帰り道で




 あれから、学校帰りに俺達の家に寄って勉強する事になった連城 桜ちゃんは、女子達が交替で教える事になり、陽奈は何故か戦闘訓練を桜ちゃんに教えていた。


 夕飯は、連城家の分も家で作って、俺と一緒にアパートに帰るという生活を送っている。


 その為、連城 萌は時間ができたようでダンスの練習に打ち込めるようになったらしい。


 そう言えば、テレビで連城 萌をみたが「キレッキレッ」のダンスを踊っていた。


 今日は、母親がいるそうなので夕食は俺達と一緒に食べる事になった。

 俺と瑠奈が夕食を作っている間、家に来ていた飯塚 早苗がその間桜ちゃんの勉強を教えている。


 今日のメニューは、グラタンとサラダと陽奈用にウィンナーを焼いた。それに飯塚が持ってきた鶏肉と人参、椎茸、高野豆腐が一緒に煮込まれている旨煮だ。


 みんなで、一緒に夕飯を食べる。


『いただきま~~す。むしゃ、むしゃ……』


「この鶏肉の煮物は美味しいな。これ、飯塚が作ったのか? 」


「ち、ちがう。それは、ばあちゃんが作ったんだ。友達の家に行くと言ったら持ってけと言われたんだ……」


 飯塚は、おじいさん、おばあさんと一緒に暮らしていたんだっけ。

 二人の事をよく言ってなかったような気がしたが、仲良くなったようだ……


「本当、美味しいです。どうやって作るのか教えてほしいです」


「そうか? 今度、ばあちゃんに言っておくよ」


 桜ちゃんが美味しいと言ってくれて飯塚は嬉しそうだった。

 生来面倒見の良い子なのだろう。

 中学からこの学園にいる飯塚は、頭も決して悪くは無い。

 だが、素行が悪かったせいで成績も落ちてたようだが、現在はその成績も盛り返してきている。


「美味い、美味い」


 陽奈に語彙力を期待しない方がいい。


「く、悔しいですが確かに美味しいです。桜ちゃんが教わる時に私も同行しようと思います」


 瑠奈は、煮物を分けた取り皿を手を振るわせながら持っていた。


 素朴な味。

 昨日、今日料理を始めて出せる味では無い。

 そんな深みのある美味しさだ。


「桜ちゃん、勉強はどうだ? 」


「みなさんが丁寧に教えてくれるのでとってもわかりやすいです」


「受験なんかしないで入学させちゃえばいいのにね。麗華さんも意地悪だよね」


「そんな事はありません。お金の心配がなくなっただけでもありがたいです。それに、皆さんに教えてもらって楽しいし……」


「陽奈、勉強は大事なんだぞ。受験をすれば基礎学力の向上にもなるし、入学してからも困らないからな」


「確かに、霞の言う通りだ。受験はテクニックも必要だが、学力は普段の努力の積み重ねだ。毎日、コツコツやる事が大事なんだ」


力説する飯塚をみんなが見てると、恥ずかしくなったのか顔を赤くして『すまない。トイレを貸してくれ』と言ってトイレに駆け込んで行った。


「お腹痛かったのかなあ」


 違うぞ、陽奈。

 痛かったのでは無い、心が火傷するくらい熱かったのだ。


【午後7時のニュースをお届けします。今朝、東キョウ都台トウ区の路上で男性が突然昏睡状態に陥るという事件が起きました。このような現象は、全世界で起こっており関係各所は原因の調査に乗り出している模様です……】


 テレビのニュースで流れた事件は、ここ何日か前から頻繁に起こっている現象だ。

 瑠奈は、食べるのをやめてニュースを見ていた。


「お母さんが言ってたよ。運び込まれる患者さんが増えてるって。それに、患者さんはみんな眠ってるような状態なんだって。話しかけても返事がないって言ってたよ」


 桜ちゃんのお母さんは看護士さんだ。


「そうなんだ……」


 この昏睡事件は、数週間前から全世界で引き起こされていた。

 茜叔母さんの海外出張は、この事件の調査を行なっているからだ。


「瑠奈、その後、何かわかったか? 」


「まだ、確証は掴めてません……」


 瑠奈が調べて確証が掴めないとは、やはりただ事ではない。


「全世界で急に起きたっておかしいよね。普通ならウイルスとか疑うけど、症状が寝てるだけなんてね」


 陽奈の言う通りだ。

 とにかく、原因究明が先だ。

 里に帰った母さんからは何も連絡がない。

 ということは、まだ、動く時期ではない事を意味している。


「怖いです……」


「大丈夫だよ。桜ちゃんに何かあったらお兄が全力で助けてくれるから~~」


「本当ですか? 」


「ああ、そうだ、この護符を桜ちゃんに渡しておこう」


 俺は、以前、壬 静葉に書いてもらった護符を取り出して渡した。


「護符って何ですか? 」


「お守りみたいなものだ」


「ありがとうございます。元気出ました」


 この子は、なんて良い子なんだろう?

 あのストーカー・アイドルの妹とは思えない。


 そんな話をしながら夕食も済み、桜ちゃんと飯塚を送って帰る。

 まず、桜ちゃんの家に飯塚と一緒に送って行き、あの足で飯塚の家に向かう。


 電車の中で飯塚は、話しかけてきた。


「送らなくても大丈夫だよ」


「そうもいかない。せっかく日常生活が安定してきたんだろう? ここで、何かがあったら元もこうもない」


「まぁ、それなら、そう言う事にしてやるよ」


 それからは黙ったままだった。

 新ジュクから総武線に乗り換え最寄駅の阿佐ガヤに着く。

 ここからは、徒歩で15分程だと言う。


「霞、何でその筒状のバッグを持ってきてるんだ? 」


 剣が入ってるとは言えない。


「美術部だからだ」


「意味がわかんないのだけど」


「突然、絵を描きたくなる事があるかもしれないだろう? 」


「ますます、意味がわかんない」


 呆れたような顔をする飯塚は、それでも何だか嬉しそうだ。

 まだ、16歳。

 これが、本来の姿なのだろう。


 駅近くの飲食店街を通り抜け、大通りを渡ると住宅地に変わる。

 学生向きのアパートが建ち並ぶ一角に飯塚の家はあるらしい。


「表通りと比べると結構、静かな場所なんだな」


「ああ、ここら辺は住宅街だからね。店といってもコインランドリーくらいしかない」


 確かに、小さな会社や事務所もあるが店はない。


「そうだ。飯塚にもこれを渡しておこう」


 俺は、桜ちゃんにも渡した護符を飯塚に渡す。


「これは? 」


「お守りだ。最近、物騒だからな」


「良いのか? 」


「ああ、持ってた方がいい。特にこの住宅街はな」


「意味がわからないが、ありがたくもらっておくよ」


 住宅街だけあって、霊が多い。

 霊との波長が合えば、取り憑かれる事もある。


 飯塚に護符を渡したのはそれだけでない。

 さっきから、女性の霊が、俺の服を引っ張っていた。

 何処かに案内してくれるらしい。


「飯塚お前の家は近いのか? 」


「ああ、あと5分くらいだ」


 5分か……

 昼間なら問題ないだろうが、夜となれば別だ。


「ちょっと、寄り道していいか? 」


「どうした? トイレか? 」


「まぁな」


 俺は、服を引っ張る女性の霊の後について行くと、川沿にある公園にたどり着いた。


 霊が指さす方向には、木々が繁っている。


「不味い! 」


「も、もしかして、漏らしたのか? 」


 その声を聞く前に、俺は駆け出していた。


「おい! 霞ーー! 」


 飯塚の声が周囲に響く。


 木々の影に、一人の女性が倒れている。

 それに、覆いかぶさるように小太りの男が下半身を出していた。


 駆けつけてきた俺を見て、下半身丸出しの男は驚き、そして怒鳴り始めた。


「なんだ!てめぇーー! 」


「それは、こっちのセリフだ」


 俺は、その小太りの男の首に手刀を打ち込む。


「うあっ」


 短い悲鳴をあげて男は、気絶した。

 女性の霊は、心配そうに倒れている女性のそばに寄り添っている。


 息はあるようだな……


 気絶していたその女性の顔には、殴られたような跡あり赤くなっていたが、めくれあがったスカートから下着が見えた。


 まだ、事は起きてない様子だ。


 飯塚が駆けつけてくる。


「霞、何急いで、あっ! お前、これは……」


「警察に連絡してくれ。それと救急車だ」


「ああ、わかった」


 飯塚も事態を把握出来たのだろう。

 慌てて、スマホを取り出して、警察に電話をしている。


 俺は、上着を女性にかけて小太りの男を拘束する。


 心配そうに寄り添っていた霊は、俺に向けて頭を下げていた。

 倒れている女性と顔立ちが似てる。


「霞、連絡はしたぞ。大丈夫なのか? その人は」


「危なかったが、最終的な行為は未然に防げたと思う」


「何で、ここで女性が襲われているとわかったんだ? 」


 霊に教わったとは言えないな……


「声が聞こえたんだよ。山育ちなもので耳がいいんだ」


「そうなのか」


 しばらくすると、警官が駆けつけてきた。

 救急車も到着する。


 静かな公園は、急に慌ただしくなった。

 野次馬も駆けつけてくる。


 女性は、救急車に運び込まれて病院に向かったようだ。


 この場所で警察官に事情を聞かれたが、俺と飯塚は一緒に警察署に行く事になった。


 最近、警官に縁があるな……


 俺はそんな事を考えていた。




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