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この世界の裏側で誰かが何かをしている〜最強のモブと自重出来ない美少女双子妹〜  作者: 涼月 風
第二章

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閑話 静葉と指輪




 デパートで買った指輪を壬 静葉に渡す為、俺は学校に指輪を持って行く事にした。

 朝の通学途中、俺が見慣れぬお洒落な袋を持っていると陽奈が話しかけてきた。


「お兄、それお菓子が入ってるの? 」


 陽奈の頭の中では、お洒落な物=高級な菓子らしい。


「違うよ。壬に浄化で世話になったからプレゼントをデパートで買ったんだ。因みに、お菓子ではない」


「なんだあ、お菓子じゃないのか~~」


 陽奈は、これでお終いになるが、瑠奈はというと……


「兄様、そんな話は聞いてませんが? 」


 そうだよねーー、そうくるよね……


「世話になったら何か贈るのが常識だろう? 特別な意味はないよ」


「千歩譲って、いいえ、一万歩譲って良しとしましょう。ですが、中身は何なのでしょうか? 」


「中身は内緒だ」


 瑠奈が怖くて言えない……


「兄様、内緒とは私には言えないという事で宜しいのですか? 」


 顔近いし、それに眼が~~眼が~~!


「瑠奈、これは大した物ではない。今度、瑠奈や陽奈にはこれの数倍の物をプレゼントしよう」


「わかりました。一億歩譲って良しとします」


 譲り過ぎだって……


 そんな妹達との遣り取りを終えて、学校に着くと壬は既に来て椅子に座りスマホを見ていた。


 スマホを買ってから壬は、スマホ人間になっている。

 暇な時は、ずっと見ていた。


「静葉、おはよう。土曜日家に行ったんだけど居なかったぞ」


「そうなの? 」


「何処かに出かけてたみたいだな? 」


「うん、近所の神社で結婚式の手伝い」


 結婚式? 公園で行く人を見かけたが……


「そうか、何見てるんだ? 」


 静葉が熱心にスマホを見てるので聞いてみた。


「指輪」


「えっ、そ、そうか」


 俺は壬の見ていたスマホを覗き見る。


【ダイヤ 2カラット 金額1280000円……】


 渡しづらっーー!!


「これ、欲しいの? 」


「綺麗」


「そうなんだ……」


 マジかよ……俺、高校生だよ。丸が一つ、いや二つ多いよね~~


 俺は、持っていたお洒落な袋を鞄に押し込んだ。


 静葉が期待してたのって、あのレベルなの?

 これ、渡したら……


ーー[妄想中]ーー


「えっ~~マジなの!! こんな安物しか買えないなんて旦那様って甲斐性ないのね」


ーー[妄想終了]ーー


 嫌、静葉は、そんな子じゃないはずだ。

 きっと……


ーー[妄想中]ーー


「これ何? 指輪じゃ安すぎる。もしかして鼻輪? 」


ーー[妄想終了]ーー


 あ~~ダメだ。この指輪じゃ自信が持てない!


「旦那様、どうしたの? 」


 頭を抱えて妄想していた俺を心配してくれたようだ。


「ううん、大丈夫。問題ない」


 俺は席に着き、窓の外を見つめる。

 余裕を見せているが、内心は焦っていた。


 女子が求める指輪のレベルってあんな高額なの?

 そう言えば、あのストーカーアイドルが俺に買えと言っていた指輪も高かった気がする……


 もう一度、買い直すか?

 しかし、買えるだけのお金がない。

 バイト代は、もう残り少ないし、カードで払うには、トラウマレベルの過去を思い出してしまう。


「みんなーー、席についてーー! 」


 ホームルームが始まったようだ。

 篠崎先生の声が教室に響き渡る。


「そうそう霞君、あとで職員室に来て」


 そう先生に言われた。


 そうか、篠崎先生に相談すれば良いのかもしれない。

 大人だし、色々男の人からプレゼントをもらっているだろうから。


 俺は、休み時間に職員室を訪ねた。





「あ~~なんかイライラするわーー! 」


 原因はわかっている。

 あの女のせいだ。


 祝い金も奮発して5万円も包んだのよ!

 出来る女の余裕を見せたかったのもあるけど、意地なの!私の!


 そしたら、何?

 “ 私の彼、年収1000万円超えてるのよ ” って言うじゃない?

 亀みたいな顔してさ、何が彼よ。

 どこかの沼にでも住んでればいいんだわ。


 それに見せびらかすように左手の薬指の指輪をチラチラさせて。

 ツッコンで欲しいのかしら?

 豚に真珠だって!!


 300万円のダイヤの婚約指輪にティ◯ァニーの結婚指輪だって?

 直ぐ離婚して質屋に直行する癖に……


 別に羨ましくなんかないわよ。

 私だって彼氏ができれば、プレゼントの一つや二つ……

 あ~~なんか虚しくなってきた。

 そうよ!

 私はこの27年の間に彼氏がいた事は無いわ!

 それが何だっていうの!!


 あ~~あ、あんな女にご祝儀なんて、とんだ出費だったわ。


「先生、用って何ですか? 」


 そう言えば霞君を呼んだのだったわ。

 彼には靴の件で世話になったし、そのお礼に結婚式に出席した神社で「学業成就」のお守り買ってきたのよね。

 渡さないと……


「土曜日はありがとうね。おかげで間に合ったわ」


「そうですか。それは、良かったです」


「そうそう、これを渡そうと思ったのよ。お礼にね」


「良いんですよ。忘れたい事もありますし……」


 まぁ、私も忘れたいわ。

 あの女ごと、綺麗サッパリね!


「そんな事を言わずに受け取ってくれる? 」


「わかりました。ありがたく頂きます」


 霞君の用はこれだけだし、あとは、書類の整理をして次の授業の用意を……


「もう、用事は済んだわよ。行ってもいいわ」


「あの~~その~~実は……」


 何か相談事かしら?


「どうかしたの? 」


「せ、先生は、男の人に指輪を貰うとしたらいくらぐらいの値段が妥当だと思いますか? 」


 えっ、指輪の話?

 さっきの事声に出てたかしら……


「300万円とか言って見せびらかす子もいたけど、気持ちが大事だと思うわ」


「300万円、300万円……」


「どうしたの? 呆けた顔して」


「いいえ、何でもありません。有難うございました」


 霞君は逃げるように職員室を出て行った。


「何だったのかしら? 」





「マジかよ……世間では百万単位が普通なのか? 」


 篠崎先生に聞きに行ったら、300万円と言っていた。

 そのあと、何か言ってたようだけどもう、俺の耳にはもう入らない。


 朝刊配達のバイトで、月に46200円

 指輪が買えるまで、続けると……

 約28ヶ月……

 年単位にすれば、約2年と3カ月かよ!


 すると渡せるのは、この学校を卒業する頃だ……


 放課後も他のバイトをするか……


 しかし、邪鬼討伐もあるし……


「う~~む」


「霞君、何唸ってるの? 」


 廊下で、考え事をしていたら水沢 清香に声をかけられた。


「えっ、唸ってた? 」


「うん、なんか如何にも“ 悩んでます ”って顔で唸ってたよ」


 水沢と話していると、行き交う男達から冷たい視線を感じる。

 休み時間に女子と話をするなんて、モブのすることではない。


「大丈夫だよ。またね~~」


 俺は、明るく言ってその場を立ち去った。


 世間は世知辛いものだ。

 いつから金銭主義の世界になったんだ?


 300万……

 いや、静葉が見てたのは128万円だっけ……


 128万円、128万円……


 お経のように金額を唱えながら頭の中では、大変な約束をしてしまったと後悔していた。


~~時は放課後~~


 俺は、まだ指輪を渡していない。

 嫌、渡せなかった。

 このまま、渡したらきっとバカにされる。

 だから、お金が貯まったら新しい指輪をプレゼントするつもりだ。


 妹達と一緒に帰る約束をメッセージでして、校門前で待っていると静葉が見えた。

 俺より先に妹達に見つかったようで、何やら3人で話しながらここまできた。


「お兄、まだ壬さんにプレゼント渡してないんだって? 」


 そうか、陽奈はその話を壬にしてしまったのか……


「あ、うん。ちょっとタイミングがあ~~」


「早く渡しなよ」


 陽奈の催促に壬も期待するような目でこちらを見ている。


 仕方ない……

 お金が貯まったら新しい指輪を買う事にして、取り敢えずこれで我慢してもらおう。


 俺は、バッグの中からお洒落な袋を取り出して、静葉に渡した。


「ありがとう。中見ていい? 」


「えっ、ここで見るの? 」


「お兄、私も見たい」

「そうですね。兄様が内緒にした品を明らかにしましょう」


 静葉は、丁寧にその袋から小さな箱を取り出した。

 リボンを解いて中身を確認する。


 心臓が破裂しそうだ……


 静葉は、指輪を取り出してうっとりとした顔でそれを見ていた。


「わぁ、指輪だったんだ。いいなぁ~~」

「兄様、こ、これはどういう事でしょうか? はあ? 」


 瑠奈怖いんだが……


「旦那様、ありがとう。綺麗、大事にする」


「そ、そうか。安物で悪いんだけど……」


「そんな事はない。水色の石。アクアマリン。私の誕生石でもある」


 良かった……喜んでくれた……


「お兄、つけてあげなよ」


 俺は、陽奈に言われるまま指輪を取って壬の指に嵌めた。


「あれ、少し大きいかな? 」


 静葉の薬指には少し大きかった。


「大丈夫。この指なら丁度いい」


 静葉は、指輪を左手の人差し指に自分で嵌めた。

 確かに、丁度良い大きさみたいだ。


 うっとりした目でその指輪を眺めている静葉は、とても綺麗だった。


 だが……


「兄様、指輪を嵌めるのに、なんで左手の薬指を選んだのですか? 意味はお分かりですよね? 」


 意味なんてあるの?


「嫌、母さんがその指につけてたからだよ。違うの? 」


「はあ~~そうですよね。兄様ですものね。ですが、女性に指輪を贈るなんてどういう意味があるかはご存知ですよね? 」


「壬が欲しいと言ったから買ってきたんだけど」


「はあ~~私は、兄様に教育をしなければならないようですね」


 瑠奈の怒りがピークに達している。

 何か、瑠奈のご機嫌が治る方法は……


「そうだ。瑠奈にはこれをあげるよ。きっと必要になるから」


 俺は、ポケットにしまってあった篠崎先生からもらったお守りを瑠奈に渡した。


 瑠奈は、その中身を見て……


「えっ…………まあ、そういう事でしたら私もやぶさかではありません」


 どうやら機嫌が直ったようだ。


「お兄、私には? 」


 そうだ。陽奈がいたんだ……


「陽奈には、これから美味しいものをご馳走してあげよう」


「本当? やったーー! 」


 陽奈のご機嫌をとるには食べ物に限る……


 壬にお礼を言われて俺達は、陽奈が食べたいと言ったかき氷を店で食べて家に帰った。





 その頃、篠崎先生は……


 机の引き出しやバッグの中を覗いて探し物をしていた。


「あれ、来月出産の姉さんに渡そうと思ってた安産祈願のお守りどこにいったのかしら……」


 篠崎先生の手には、代わりに学業成就のお守りが握られていた。





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