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この世界の裏側で誰かが何かをしている〜最強のモブと自重出来ない美少女双子妹〜  作者: 涼月 風
第二章

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第53話 学校での戦闘(1)




 校門前に並んで立っている数人の男達の前で、俺は隠形を解いた。

 霞の術で周囲は、目を凝らしても見えずらい状態になっている。


 数人の男達の中に一人、体格の良いオッさんがいた。

 おそらく、紅の者だ。

 奴には、聞かねばならぬ事がある。


 そして、その男達の中には、見たことのあるこの学校の生徒がいる。

 俺を体育館裏に呼び出したヤンチャ君達だ。


 1人少ないようだが、最近絡んでこないと思ったがそういうことだったのか……


 中央にいる体格の良い50代のオッさんは見た事は無い。

 そのオッさんはタバコをふかし紫色の煙を吐きながら俺を睨みつけていた。


「お前は『紅の者』か? 」


 俺はそのオッさんに問いかける。


「俺の仲間が世話になったようだな。霞の者」


「こいつらに何をした? 」


「前に倉庫で見たんだろう? アレの改良版だ」


 ヤンチャ君達は、3人とも普通の姿に見える。

 だが、その身体から湧き出る妖気は人のものではない。


「そう言えば名乗ってなかったな。俺は、紅の者、副頭領の炎獄熊(えんごくぐま)だ。覚えておくといい」


 気怠そうに吸っていたタバコの吸い殻を俺めがけて投げ付け、また新しいタバコに火を着けた。


「炎獄熊か。噂には聞いたことがある。それにしても名乗りをあげるとは、珍しい忍者もいた者だ」


「ははは、他の奴はしらねぇ。俺は、礼儀を重んじるタイプなんでな」


 炎獄熊と名乗った奴は、確かに油断ならない相手だ。

 だが、俺の神霊術を使えば造作もない。


「あ~~言い忘れてた。校舎の中に俺のツレが見物してるぜ。こんなクソみてぇなガキの祭りにも赤い花火が上がればちっとは盛り上がるだろうぜ」


 そうか、こいつの余裕ある態度はそういう事か……


「女郎蜘蛛といい、お前といい人質を使うのが好きな奴らだな」


「これも戦術という奴だ。さて、本当の祭りを始めようじゃねぇか」


 炎獄熊が、ニタニタ笑いながらヤンチャ君達を見た。

 妖気が溢れ出し、その身体は膨れ上がる。


 角が二本生え出し、その形相はこの世の怨みを凝縮した顔となる。

 その姿は、この世のものとは思えない。


「まさか、大嶽丸(おおたけまる)なのか……」


「あはははは、ご明察。良く分かったな。褒めてやるぜ」


「討伐され封印された首を盗み出したのか? 」


 伝承では、大嶽丸という鬼は、鈴カ山に住んでいた鬼で「三明(さんみょう)(つるぎ)」に守られていた。

 三明の剣とは、大嶽丸が阿修羅(あしゅら)から贈られた剣で顕明連(けんみょうれん)大通連(だいとうれん)小通連(しょうとうれん)と呼ばれる三本の剣の総称で、これがある限りは討伐はできないとされていた。

 だが、鈴カ山に天下った天女が田村丸に力を貸して「ソハヤノツルギ」で首を撃ち落としたという。


 ヤンチャ君は最早、人間の姿はしていない。

 一番大きな大嶽丸を中心に左右に一回り小さした鬼が控えている。

 どいつも、元この学校の生徒だ。


「さぁ、仕事だぜ! こいつはお前らの餌だ。思い存分喰い散らかすがいい」


 炎獄熊の掛け声で、鬼達が動いた。


 一歩踏み出すだけで、土が腐り邪鬼が湧き出る。


 炎獄熊は、いつの間にか後方に下り、建物の上にいた。

 高みの見物を決め込んだようだ。


 俺の愛刀『夜烏』が、湧き出る邪鬼を斬り裂き、大嶽丸を脇腹に迫った。


 だが、そこには左に控えていた鬼が持っている剣で防いだ。


「そうか、お前達が『三明の剣』というわけか……」


 大嶽丸を守るように、俺の攻撃を全て剣で防ぐ。


 神霊術を使って倒してもいいが、校舎の中の仲間が気になる。

 だが、その時、ある気配を感じた。


 そうか、じゃあ遠慮なく目の前の鬼は、あるべき所に帰ってもらおう……


 俺の眼は、金色に光り輝きはじまた。





 霞の立ち込める校舎の中にはで、(つちのえ) シャルロット・リズは、執事のセバスと共に湧き出る邪鬼を撲殺していた。


「キリがありませんわ」


「ええ、ですが霞様は、もっと厄介なモノの相手をしています。ここは、私達が少しでもお役に立ちませんと戊家としての面目が立ちません」


「小癪な男ですわ、霞 景樹。ですが、ここは、セバスの言う事を聞いておきましょう。セバス、少しの間、時間を稼いで下さい」


「畏まりました」


 戊 シャルロット・リズは、メイスに仕掛けられたボタンを押す。

 すると、長さ30程度のメイスが音を立てて伸びた。

 特注の伸縮性のあるメイスのようだ。

 今は杖のように長くなっていた。


 戊家の神霊術は、主に穢れた土地の浄化である。

 だが、穢れた土地を浄化してしまえば、それ以上は邪鬼は湧き出ない。


 戊 シャルロット・リズは、神霊術を発動する。

 伸ばしたメイスの先端で、足元に魔法陣を描きその中にルーン文字を刻んだ。

 小指を噛んで一滴の血をその魔法陣に垂らすと、魔法陣は輝き出した。


【我、ここに大地の浄化を執行す。穢れを祓い清浄なる土地と成せ! 】


 そう唱えると、魔法陣の光が広がっていき、半径50メートル程の円状の魔法陣が広がった。


 低下した神霊術を魔術で補い、その効果を向上させたようだ。


「お嬢様、お見事です」


「これでは、まだ、全てをカバーできませんわ。移動しますわよ。セバス」


「はい」





「霞がかかりましたね」


 清崎(きよさき) (ながれ)は、(みずのえ) 静葉(しずは)と一緒に元菜園部管轄の図書館の屋上に来ていた。


「多分、旦那様。霞の結界、綺麗」


 暗雲立ち込める中、霞が漂う周辺は幻想的な景色を作り出していた。


「流石、霞の者ですね。でも、邪鬼の数が多いです。持久戦になれば生徒達に被害が出てもおかしくありません」


「わかってる。少しでも数を減らす」


 壬 静葉は、左手人差し指に嵌めたアクアマリンの指輪を見つめていた。


 そして、浄化の神霊術を発動させる。


【……清霧(ミスト)!】


 浄化の霧が霞の結界と混じり合うように周囲に広がる。


 清崎 流は、懐に納めてあった扇を取り出して、神楽を舞うようにその扇を仰いだ。


 浄化の霧が、その風に乗り広範囲に広がっていく。


 地中から這い出てくる邪鬼は、その浄化の霧に触れ妖気がなくなり霧散していく。


「静葉様、今度は、こちらの方角を……」


「わかった」


 壬 静葉は、頷いて別の方角の歩いて行った。





「ヤベェーー楽しくなってきた」


「何、馬鹿なこと言ってるの? 流れ弾が一般人に当たらないように注意するのよ」


 生徒達がを校舎の中に誘導した(かのと) 誠治(せいじ)柚木(ゆずき) 麗華(れいか)は、生徒達の保護を(かのえ) 絵里香(えりか)に任せて校庭に這い出る邪鬼の討伐を行っていた。


「剣はダメだが、銃だけは自信がある。そんなドジは踏まねぇよ。それより、麗華。お前、邪鬼が見えるようになったんだな? 」


「景樹君に施術してもらったのよ。それより、誠治こそ弾は足りるの? 」


 そう言いながら、鉤爪(かぎつめ)のついた手甲で邪鬼をぶん殴っている。


「ああ、この間、パーティーの時に壬のお嬢様に会って頼んでおいたんだよ。この数なら余裕と言いたいが、ちょっと敵さんの数が多すぎるな」


 辛 誠治は、次から次へと這い出る邪鬼に、少し焦った表情を浮かべた。


 その時、地中から光が広がってきた。


「何だ? これは? 」


「わからないけど、悪そうな感じはしないわ」


「おーー邪鬼が湧き出てこなくなったぜ。もしかして、戊家の土地浄化か? 」


「それだけじゃないわ。見て。霞の中に清浄な空気が混ざり始めてるわよ」


「本当だ。これは、知ってるぜ。壬家の神霊術 『清霧』だ」


「そう、初めて見たわ。綺麗な神霊術なのね」


 戊家の土地浄化で穢れが祓われ、新たな邪鬼は這い出てこなくなった。

 そして、地上にいた邪鬼は壬家の神霊術で霧散していく。


「麗華、戊家と壬家ばかり良い格好させる訳にもいかねぇぜ。あの2人が、この学校全体をカバーできるはずがねぇ。俺達は、あいつらの死角部分を補うとするか」


「誠治の事は嫌いだけど、今回は協力してあげるわ」


「昔の事、まだ怒ってるのか? 」


「当たり前よ。散々、私を好き勝手にしてニューヨークに行っちゃったのよ。許せるはずがないわ」


「男には、やらなければならない事があるんだよ」


「女だって、いつまでも待ってるだけの存在なんていう都合の良い勘違いはしない方が良いわよ」


「ああ、そうだな。今の麗華を見てれば納得できるよ」


「やっと、私を認めたわね。今日は気分が良いわ」


 そう言いながら麗華は、残った邪鬼に足蹴りしていた。





「ほう、霞と戊家の土地浄化、それに壬家の神霊術か……これは、珍しいものが見れたぜ……」


 周辺が暗くなり、周辺に霞が立ち込めた為、生徒達と一般来客は校舎内に入って様子を見ていた。


 時より、金属音と雷のような暴発音が鳴り響いていたので、近所で工事が始まったのかと勘違いをしている。


「まったく、呑気な奴らだぜ……」


 一般来賓客に紛れ込んだある者は、ニヤリと笑った。

 彼の目には、校舎の中から今にも飛び出しそうな表情で外を見ている、ある女性に視線を固定させていた。


「庚のお嬢様か……ひひひ」


 男の下品な笑いは、知らずに声に出ていたようだ。


 だが、その笑い声に誰も気付いている様子はなかった……





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