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この世界の裏側で誰かが何かをしている〜最強のモブと自重出来ない美少女双子妹〜  作者: 涼月 風
第二章

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第52話 文化祭(3)




 もうすぐお昼になるというのに篠崎先生は、補習用のプリントの作成をしていた。

 職員室にも、生徒達が文化祭を楽しむ騒ぎ声や流行の音楽が聞こえてくる。


「いいわねぇ~~。もう一度学生に戻りたいわ」


 ノートバソコンで資料作成をしていた作業を止め、冷めてしまったコーヒーを飲む。


「あっ、そうだ。資料をESS(英語研究部)の人達に貸したままだったわ」


 篠崎先生は、職員室を出てESS教室に向かう。

 顧問をしているESS(英語研究部)の英語劇は、明日の午前中の発表だ。

 教室で生徒達が発表の練習をしているはずだと思い貸していた資料を取りに行った。


 校舎の中では、保護者や見慣れない制服を着た男女達が思い思いに出し物のある教室を覗いている。


 ESS教室は、別棟にあるため渡り廊下を使っていかなければならない。

 その渡り廊下のある中庭には、ギターを弾いて歌を歌っている生徒もいた。


「へえ~~なかなか上手ね」


 足を止める事なく別棟に向かうと、第1担任クラス生徒を発見した。

 壬 静葉だ。

 それも、この間、フランスから転校してきた2年生の戊 シャルロット・リズと一緒に歩いている。


「壬さん」


 篠崎先生は、声をかける。

 壬 静葉は、こちらを向きちょこんと頭を下げた。

 保護者も一緒にいるようだ。

 スーツ姿の女性が同じように頭を下げていた。

 また、戊 シャルロット・リズの隣には、初老の紳士が大きな包みを抱えている。


「壬さんはどこに行くの? 」

「美術部の部室」


(そういえば、私が入部届けを残務整理の忙しさの中で提出するのを忘れてたんだっけ)


「そうなんだ。後で先生も見に行くね」


 少し後ろめたそうな顔をして話しかけていた。


 すると、横にいた戊 シャルロット・リズが口を開く。


「篠崎先生ですわね。宜しかったら私達と一緒にお弁当を食べませんか? 」


 脇に控えている初老の紳士が手荷物を見せてお辞儀をしている。

 抱えていた大きな荷物は、お弁当のようだ。


「誘ってくれて嬉しいわ。でも、まだお仕事が残ってるから今日は無理かな。また、誘ってくれる? 」


「残念ですわ。でも、無理強いはいけませんわよね」


 戊 シャルロット・リズが返答をしていると、周囲が暗くなってきた。


「あれ、お天気良かったのに雷でもくるのかしら」


 篠崎先生は、空を見上げて呟く。


「嘘、昼間なのに……」


 壬の顔は真剣だった。


「静葉様、静葉様のお力なら高い場所がよろしいかと……」


「わかった。流。ついてきて」


 また、戊 シャルロット・リズは、


「こ、これは、どういう事ですの? 」


「お嬢様、こちらをお使い下さい」


 戊家執事セバスは、上着の中に手を入れてメイスを取り出し渡している。


「そういう事ですのね。行くわよ。セバス」


「はっ! 」


 異変を察知した壬、戊の者達は、動き始めた。


 その場に取り残された篠崎先生は、訳がわからない、という顔で立ち去っていく人達を見ていた。





 中等部の2年3組の催しである軽食店では、お昼時とあって混み合っていた。

 用意しておいたパンやクッキーは、底を尽きはじめている。

 人気なのは食事だけと言うわけではなさそうだ。

 クラスのみんながそれぞれコスプレをしていた。

 それ目当ての見物客もいるようだ。


「陽奈ちゃん、どうしよう。足りなくなるかも」


 頭に猫耳をつけている足利 恵 通称メグちゃんは、焦りの見える顔で陽奈に話しかける。


「困ったわね。でも、それだけ人気だって事でしょう? 喜ぶところじゃないかな」


 セーラー服を着て金髪の団子があるツインテールのウェッグを被っている陽奈は、至って前向きだ。


 厨房では、他の生徒達も忙しそうに働いている。

 その中で、陽奈と同じでセーラ服を着て水色のウェッグを被っている瑠奈は、手際よく焼きそばやオムライスを作り皿に並べていた。


「瑠奈ちゃ凄いね」


「うん、きっとお母さんが来てるから張り切ってるんだと思う」


「私、お父さんにパンの追加の電話してみるよ」


「そうね、お願い」


 メグちゃん家の仕事は、パン屋さんだ。

 ここで、提供しているパンは、メグちゃんが用意したものである。


 だが、忙しそうに働いていた陽奈と瑠奈は、作業している手を止めた。


「マジで、今なの? 場所と時間を選んでよね」


「陽奈、向かっていいよ。ここは、私が上手くやっておくから」


「瑠奈サンキュー! 」


 陽奈は、母親が持ってきてくれた剣が入った筒状のバッグを担いで教室を出て行った。





「景樹君、それ本当なの? 」


 麗華さんは、俺の母親の素性を聞いて驚いていた。


「ああ、でも話をしてる暇はなさそうだ。麗華さんは、生徒達を校舎の中に誘導してほしい。きっと、庚も協力するだろうからな」


「わかったわ。景樹君はどうするつもりなの? 」


「大物がいるようだ。そいつとこいつらを呼び寄せた者を叩く」


 闇から邪鬼が溢れ出てきた。

 その数、数百……

 普通の人には、見えないが憑依されればその者は、魂を喰い尽くされてしまうだろう。

 そして、魂の無くなった者は、抜け殻となって邪鬼の思い通りになる。

 肉体を得てしまった邪鬼は斬るしかない。


 普通の人から見れば、ただの殺人だ。

 だが、やらねばならぬ。


 ここで、剣を抜き溢れ出る邪鬼を討伐すれば、人目についてしまう。


 俺は、ある言葉を唱えた。


謹上再拝(きんじょうさいはい)、我、日喩三昧(にちゆざんまい)に入りて、陽の守護たる日天(にってん)・夜の守護たる月天(がってん)の眼を欺き陽炎(かげろう)となりて隠形す。願わくば、甲、乙、丙、丁、戊、己、庚、辛、壬、癸、各方位に鎮まり()方位八将神(ほういはっしょうじん)の御力を得て、辺りを霞となせ! オン・マリシエイ・ソワカ】


 両手を絡ませ隠形印と呼ばれる印を結び唱える。

 学校を中心として霞がかかりはじめた。


 校庭にいた生徒達は『霧だ』『幻想的ねぇ』と無邪気に話していた。


 隠形法と呼ばれる術を発動する。

 摩利支天(まりしてん)の力の一端を身に宿し陽炎の如く、姿を消す神霊術だ。

 そして、東西南北に霞の結界を張り巡らせ邪鬼がそこから溢れ出ないようにした。

 甲家の結界と違うのは、霞は風が吹けば消えてなくなるように長い時間維持ができない。


 俺の姿は、隠形法がかかっている為、誰にも見えていないはずだ。

 俺は、まず、湧き出す邪鬼を斬りつけていく。

 湧き出ているのは、ゴブリンに似た低級邪鬼だ。

 数が多いので斬っても斬ってもキリがない。

 すると、そこに俺の気配を察知して陽奈がやってきた。


「お兄、そこにいるんでしょう? 」


「ああ、陽奈は中等部周辺を頼む」


「わかったわ。でも、大物いるんでしょう? 私も戦いたい」


「じゃあ、早めに始末するんだな。でないと、俺が終わらせてる」


「速攻で始末してくるよーー! 」


 陽奈は、最大速度で中等部の周辺に戻って行った。


「なんだ! 何故こんな事が……」


 庚の声が聞こえる。

 庚には、この異常事態が見えていた。


 そこに麗華さんが加わり、ストーカー・アイドル周辺に集まっていた男子達に声をかけ校舎に行くように誘導していた。


 忍び寄る邪鬼を蹴散らしながら優雅に誘導するなんて、流石、麗華さんだな……


 そこに、俺の背後にいた邪鬼を撃ち抜く音が聞こえた。

 俺が見えてないのだろう。

 弾は、邪鬼をすり抜け俺のすぐ脇を通り抜けた。


 これは……


 辛 誠治。

 2丁の拳銃を操るニューヨーク帰りの辛家当主の息子だ。


「おい、いるんだろう? ここは麗華と俺に任せておけ! 」


 文化祭に来てたのか……


 どこかで俺と麗華さんが一緒のところを見たらしい。

 俺の名前を呼ばなかったのは、嬉しい限りだ。


 なら、ここはあいつに任せよう。


 俺は、大元を叩きに行くか。


 俺は愛刀『夜烏(よがらす)』を握りしめて、校門付近で並んで立っている男達の元に向かった。





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