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第44話 パーティー(3)



 金髪お嬢様の帰国祝賀会は、順調に進んでいった。

 水沢が持ってきてくれた料理を食べていると、妹達もやってきて俺の周りは、また賑やかになった。


 クラスの女子の小柄な木下 沙織と彼氏持ちの相崎 佳奈恵、そして眼鏡っ娘の田辺 由香里は、会場にいた女性アイドルのサインをもらっている。


 さっきまで一緒にいた陽奈と瑠奈、そして友人のメグちゃんは、食べる事に夢中のようで、また料理を取りに行った。


 庚は結城と壬そして柚木兄妹や辛 誠治と一緒に楽しそうに話し込んでいる。

 で、俺は、水沢と一緒に仲良く並んで食事をしていた。


「ドレスで食べるのって難しいのね。汚しちゃいけないと思って上手く食べれないよ」


 そんな水沢は、背中が大きく開いた薄いピンク色のシンプルなデザインのドレスを着ていた。余計な装飾がない分、着ている女性を引き立てている。


「なぁ、水沢は、何で俺の場所が直ぐ分かるんだ? 」


 感じていた疑問を問いかけてみた。


「何でって、そこにいるからだよ」


 うん、真っ当な答えだ。

 俺が『霞の者』でなければの話だが……


 気配を消していたわけではないが、普段から影の薄い俺は、よく見ればそこにいるというのが普通の感覚だと思う。

 勿論、誰かと一緒にいれば、そのような効果は無い。

 陽奈や瑠奈には、勿論、適用されないが。


 うぅ~~わからん……


 すると、俺に近づいてくる人物がいる。

 執事のセバスさんだ。


「霞様、少しお時間を頂いてもよろしいでしょうか? 」


「構いませんよ」


 俺は、水沢に『ちょっと行ってくる』と告げて、セバスさんの後をついて行った。

 案内されたのは、豪華な椅子に座ってテーブルの上の料理を食べている今日のパーティーの主催者、戊当主のところだった。


「今日は、よく来てくれた」


 そう先に挨拶された。


「先日ぶりですね」


 俺はセバスさんが引いてくれた椅子に腰掛ける。


「シャルと話をしたようだな」


 金髪お嬢様の事か……


「はい、振り回されておりますが……」


「わははは、そうか、そうか。わははは」


 すると、会場の空気が一変した。


『あの戊当主が笑ってるぞ』

『初めて見たな。笑ってる顔』

『誰だ? あの少年』


 そう俺の耳は会場の小さな囁き声を拾っていた。


 戊当主には近寄りがたい雰囲気がある。

 実際、このテーブルにも本人以外座っていないし、誰も近寄っても来ない。


 そんな戊当主を見てたのか、金髪お嬢様まで登場した。


「お父様、もしかして私の話をなさっていたのですか? 」


 そう言いながら同じテーブルに着く金髪お嬢様は、俺の顔を眼を細めて見つめている。


「シャルよ。まぁ、何か食べなさい。挨拶ばかりでお腹も空いただろう? 」


「私の為にお越しになった来賓の方を無碍にはできませんわ」


「少しばかりの時間を私と過ごしても来た客は怒るまい。それに、霞君も大切な来賓の1人だ」


「お父様がそう言うのであれば、少しのお時間ご一緒させてもらいますわ」


 金髪お嬢様の登場で更に注目度が増している。


「霞君は楽しんでおるか? 」


「俺は、正直こういう雰囲気は苦手です」


「うむ。確かに慣れぬ場は居心地が悪いだろう。どうだ、シャルの部屋にでも行って話をしてくれば良いのではないか? 」


「私の部屋に、この霞 景樹を招き入れろと言うのですか? 」


「そうですよ。俺は大丈夫です。何もお嬢様の部屋に行かなくてもここで満足してます」


「シャルにはきちんと伝えてある。だが、最終的な判断はシャルに任せると話した」


 何の事を言ってるのでしょうか?

 さっぱりわかりません……


「お父様、その話はここではしないで下さいませ」


「そうか、わかった。霞君。シャルは口は悪いし我儘なところもある。だが心根は優しい子だ。それだけは覚えておいて欲しい」


「はあ!? 」


「お父様! 」


「わかった、わかった。もう、何も言わん」


 その時、ある気配を感じとった。


 俺は神霊術を発動させる。

 眼は金色に光りだす。

 それを見たのは戊当主と金髪お嬢様だけだ。


 周囲がスローモーションのようにゆっくりと時間が流れる。

 俺は、懐に手を入れて戊当主を睨んでいた男を気絶させ、掴んでいた拳銃を取り上げる。

 陽奈も動いたようだ。

 同じ時間の流れの中で、陽奈と眼が合う。

 陽奈も男を気絶させ拳銃を取り上げていた。

 そして、もう一人、カーテンに隠れてサイレント銃を構えていた人物を気絶させた。

 もう少し遅れていたら銃弾が発射されて被害が出ていただろう。


 事をこなして、俺はテーブルに戻り、神霊術を解く。


「霞君、今、何を……」


 戊当主は、テーブルに置かれた銃を見て驚いていた。


「非常事態でしたので神霊術を使いました。間者は気絶させました」


 確かに、倒れている3人の男がいる。


「狙われたのは当主のようです」


「急に銃が置かれていたと思ったら、そういう訳か。それが『霞の者』の神霊術なのだな? 」


「はい」


「霞 景樹 。今、何かしたのですか? 眼が金色に光りましてよ」


 金髪お嬢様は、理解ができないようだ。


「当主にお聞き下さい」


 倒れていた人物は、セバスさんが中心となって警備の者が連れて行った。

 このパーティー会場で俺と陽奈の神霊術を理解できる者はいないだろう。


 瑠奈は、スマホを持って気絶していた男達の事を調べ出した。

 恐らく、犯人達の身元を調べているのだろう。


 パーティー会場は、急に倒れた人が現れただけで、然程問題にはならないだろう。

 酔っ払って倒れる人は、どこにでもいるからね……


 司会者が気を利かせてジョークを交えた話をし始めた。

 流石、現役のアナウンサー。

 よくわかっている。


「では、俺も興味がありますのでセバスさんのところに行ってきます」


「そうか、礼を言わねばな。助けてくれて感謝する」


「いいえ。今日の豪華な食事でチャラですよ」


 そう話して席を立ち、執事のセバスさんのところに向かった。





 拘束した3人は、警備室に連行されている。

 セバスさんが、警備担当の人物を叱責していた。


「ボディーチェックは、行わなかったのですか? 」


「すみません。金属探知機を使っていたのですが、一時作動しない時がありまして機材を取り替えている間に何名か入場してしまったようです」


 セバスさんが俺の方を向いて、


「霞様、この度はありがとうございました。何とお礼を申して良いか……」


 そこに陽奈と瑠奈もやって来る。


「お兄、私の方が手際が良かったでしょう? 」


「ああ、助かったよ」


「兄様、この者達は大陸系の者達のようです。確認はしておりませんが、恐らく招待状を偽造し侵入したようです」


 この短時間でそこまで調べたのか……


「流石、瑠奈だ。相変わらず早いな。資料はセバスさんに渡してくれ」


「畏まりました」


「セバスさん、聞いての通りです。後で資料を送ります」


「重ね重ね、お礼を言わせて頂きます。ありがとうございます。霞ご兄妹様」


 大陸系の者達か……己家や『紅の者』との関係はなさそうだな……


「いえ、こちらこそ美味しい料理を頂いてます。昨日のキャンセルの分を含めて貸し借りはナシですよ」


「キャンセルですか? それはどなたからお聞きしたのでしょうか? 」


「えっ!? こちらのお嬢様からですが……」


「お嬢様の祝賀会は初めから今夜の予定です。はて、お嬢様は何故そんな話を霞様に? 」


 マジですか……

 俺が断わらないようにそう言ったのか……

 何か、あの金髪お嬢様に負けた気がする……


「いいえ、何でもないです。こっちの話ですから」


「そうですか? 」


 セバスさんは、不思議そうな顔をしていた。


 陽奈と瑠奈を見ると眼を合わさない。

 陽奈はあからさまに口笛を吹き始めた。


 さては、お前達が入れ知恵したんだな……


「そういう事か」


「何、お兄? 」

「どうかなさいました? 兄様」


 妹達はパーティーに来たかったようだ。

 美味しい食事と綺麗なドレス。

 女性ならそんな豪華なひと時を夢見てもバチは当たらない。


「いや、何でもないさ。会場に戻ろうか? 」


 パーティーは、その後夜遅くまで続いたのであった。




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