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第41話 お誘い




 遠征から帰って来た日は、学校を休んだ。

 家に着いたのが、午後2時頃になってしまったからだ。


 おまけに、毒が完全に身体から抜けていないし本調子ではなかった。


 家に着くと、当たり前だが、誰もいない。

 茜さんは仕事だろうし、陽奈と瑠奈は学校だ。


 壬からメッセージが届いていたので、返事をしておく。

 陽奈や瑠奈にはある程度事情をメッセージで送っておいた。


 俺は、疲れた身体をベッドで横になって休ませる。

 いつのまにか寝てしまったようだ。


 どれ程の時間が経ったのだろうか……


 部屋の中に良い匂いが立ち込めてくる。

 そう、カレーの匂いだ。


 目を覚ますと、ここが自分の部屋だとわかる。


 何故だか、俺のベッドに寄りかかって壬 静葉が寝ていた。


 何で?


 俺は、もう一度部屋の様子を確認する。

 やはり、俺の部屋だ。


 壬もカレーの匂いが気になったのか『う~~ん』っと言って背伸びをした。

 そんな姿の壬と目が合う。


 見つめ合う二人……

 恋の始まる予感……


 ない、ない、そんなものは!


「旦那様、起きたの? 」

「ああ、何で静葉がここにいるんだ? 」

「蛇の毒、厄介。浄化した、私が」


 静葉が浄化した?

 俺の身体をか……


 身体を動かしてみる。

 痺れていた左手は、今は、問題なく動く。


 だが、壬には、俺が相柳と戦闘になったとは言ってなかったはずだが……


 すると、勢いよく部屋のドアが開いた。


「お兄、おきたの? カレーだよ」


 相変わらず、陽奈は遠慮を知らない。


「もう、そんな時間か」


「学校から帰って来たらお兄が寝てたので、カレー作ったんだぁ」


 俺が寝てるとカレーを作るのか?


「今度は、瑠奈が部屋に入って来た。


「兄様、お食事の用意ができました」


「ありがとう。でも、この状況が良く分からないのだが……」


「学校を休んだ兄様からのメッセージで、蛇の毒で少しやられたと書いてありましたので『大丈夫ですか』とメッセージを送ろうとしたら、不覚にもそこに壬さんがおりまして、そのメッセージを盗み見られたのです。もう、最悪です、天中殺です。ですが、毒の浄化が出来るというので薬代わりに連れてきました」


 うん、よ~~くわかったよ……


「そうか、静葉には世話になったな。これで、世話になったのは2度目だ。ありがとう」


「問題ない。毒が身体に回ったら精子にも影響が出るかもしれない。それは、困る」


「はい!? 今、聞き捨てならない言葉を聞いた気がするんだが……」


「精子の事? 飲んでも入れても毒があると私が困る」


 何でそんな事言うのかな?


 瑠奈が物凄い怖い顔になってるのだが……


「皆様、食事が冷めてしまいますよ。あっ、霞様、お邪魔しております」


 静葉の侍女役の清崎さんも来てたのか……


「カレー!カレー! カレー! 」


 陽奈、連呼しなくてもいいぞ。ちゃんと聞こえてるから……


「じゃあ、カレー食べるか」


 夕食時には茜さんも帰ってきて賑やかな晩餐となった。





 翌日の朝、通学途中の電車の中で、陽奈が話しかけてきた。


「私さぁ、思うんだけど、そろそろ何か危機的状況が起きてもいいと思うんだよね」


「何、それ? アニメの話、それともラノベ? 」


「だってさぁ、物語的につまんないと思うんだよ。お弁当食べたり、夕食食べたりしてさぁ、そんなんじゃ読者は『またかよ! 』って飽きちゃうと思うんだよね~~」


 読者って誰? 陽奈の事?


「陽奈、言ってる意味がわかんないんだけど」


「つまり、ここら辺で派手に戦闘とか、誰かが死ぬとかしないと物語的に面白くないんだよ。そしてね。私が登場して悪者をギッタンバッコンってやっつけるんだぁ」


つまり、人生を物語に喩えて、自分が主役になりたいと言う話かな?

そうだよね? 決して、この小説の事を言ってるんじゃないよね?


「そうだね。そうなったら応援するよ」


 まあ、俺はどんな状況でもモブとして陽奈の活躍を見てればいいわけだしね。


 しかし、朝の満員電車は慣れないなぁ……


「えっ! 」


「どうしたの? お兄。素っ頓狂な声出して」


「今、誰かが俺の尻を触った感触がしたから……」


「嘘、マジですかーー! 痴女、痴女なの? 」


「わかんないよ。でも、あっ……ほら、また、誰か触ってる」


「えーーお兄のお尻触って何が楽しいの? 」


「知らないよ。そんな事……しかし、誰だよ。俺の尻を触ってる奴は! 」


 俺は勇気を出して、尻をナデナデしていた手を掴んだ。


「キャッ! 」


 女性の小さな叫びが聞こえた。


 捕まえたぞーー!


「お兄、捕まえたの? 」


「ああ、犯人は俺が掴んでる」


「じゃあ、ゆっくりその手を挙げてみてよ。私が制裁を加えてあげるから」


 俺は、ゆっくり手を上げ、引き寄せる。


 すると、


「兄様、痛いです。もう少し優しくお願いします」


『えっーー!! 』


「瑠奈!? もしかして、今、俺の……触ってた? 」


「何の事でしょう? 私は兄様と触れ合ってただけですけど? 」


 マジですか……


 犯人は瑠奈だった。


 どうしよう。将来が心配だよ。お兄ちゃんは……


「そっかーーそう言うのも面白いかもね」


 陽奈はするなよ!


「普通は、女子がされるものだろう? 陽奈も瑠奈も可愛いから気をつけないとな」


「それ、セクハラ発言だよ。炎上するよー!でも、大丈夫だよ。スカートの中に下半身用の鎖カタビラつけてるから」


「はい!? 」


「私も同じです。ですが、陽奈とは違って私は毒も仕込んであります。触った瞬間に痺れて動けなくなるかと……」


 マジかよ……幾ら何でもやり過ぎだと思うけど……


 まぁ、触る奴が悪いわけだし……


「程々にね」


 俺は聞かなかった事にした。





 学校に着くと、何時もの日常が始まる。

 今日は金曜日なので、クラスの雰囲気も明るい。


 俺は、モブ化の構想を練り直す事にした。

 このままだと、周りが女子ばかりになって目立つ事この上ない。


 そうだ。カムフラージュに男友達を作ればいいんだ……


 クラスの男子を見渡して、モブらしい生徒を探す。


 モブにはモブの友達が相応しい。


 が……


 いない。


 転校して約一ヶ月。


 男子生徒は、俺の陰口を言うばかりで、今更、探しても友人になれそうな人物はこのクラスには一人もいなかった。


 クソーーっ! こうなると分かっていれば、少しは男子と友好な関係を築こうと努力したのだが、甘かった……


「仕方ない。俺はボッチ・モブを目指そう」


「旦那様、何を目指すの? 」


 壬 静葉が登校してきた。

 声に出てたらしい……


「おはよう。昨夜はありがとな」


「ううん。旦那様のアレ、激しかった……」


「えっ、何をおっしゃってるんですか? 」


「アレが、激しかったって言った」


 クラス中の生徒の視線が一斉のこちらに向けられた。

 そして、ヒソヒソ話が始まった。


「静葉さん、アレじゃなくってカレーだよね。それに激しいじゃなくって辛いの間違いじゃないかな? 」


 俺は、頑張って少し大きな声で話す。


「そうとも言う」


 わざとなの?

 この天然小悪魔精神年齢幼児の静葉さん……


 明るいクラスの雰囲気は、一転して俺に対する敵視と軽蔑の目に覆われた。


 ダメだ、耐えられない。

 こんな空気の中、過ごせる精神は持ち合わせていない。


『霞 景樹は来てますか! 』


 あちゃーー金髪お嬢様まで来た……


「いましたわね。何で昨日は、学校を休んだのかしら? 教えてくださらない? 」


 学校休むのに、金髪お嬢様の許可がいるらしい。


「リズ先輩、大きな声はマズイです」


「え! 何かおっしゃいました? だから、私に断りもなく何で学校を休んだのか聞いておりますの」


 クラス中には響き渡る声で、言わなくても……


「あの~~俺に何か用なのですか? 」


「そうです。本当は昨日誘うつもりだったのですが、仕方なく予定を繰り上げて今日にしましたわ。これが、パーティー券です」


「パーティー券!? 」


 もしかして買わされるの?

 俺を脅してる?


「えっと、意味がよくわからないのですけど……」


「他の人にはもう渡しました。今日の夜、私の帰国パーティーがありますの。勿論、出席しますわよね。貴方の為に、予定を繰り上げ、ダメになった料理は廃棄しましたしね。損害だけでもかなりの額となりましてよ」


 断りづらーーっ!


「わかりました……」


「私も貰ってる」


 壬は怪しいパーティー券を俺に見せた。


 買わされたの?

 高かったんじゃない?


「勿論、ただで美味しい料理が食べられる」


 静葉、俺の心を読んだのか……流石だ。


「着替えは、私の家にありますの。そのままの格好で来てくださればOKですわ」


 有無を言わさず、断る事も出来ず、俺は、その怪しげなパーティーに出席する羽目になってしまった。







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