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この世界の裏側で誰かが何かをしている〜最強のモブと自重出来ない美少女双子妹〜  作者: 涼月 風
第二章

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第36話 美術部




 その日、家に帰ると、俺の傷を見た双子妹達から詰問された。

 俺は、正直に話して二人を納得させる。


 そうしないと二人が何をするかわからないからだ。


「私もセバスさんと戦ってみたい」


 俺と同じく戦闘に関して妥協をしない陽奈らしい言葉だ。


「機会があったらお願いしてみれば? 」


「うん。そうする」


 喜ぶ陽奈にも出来るなら戦わせてあげたい。

 きっと、学ぶべきところが多いだろうから……


「兄様、そのシャルロッテ・リズという貴族の悪徳令嬢のような女は、何で兄様に近づいてくるのですか? 」


 瑠奈は金髪お嬢様の方に興味があるようだ。


「それは、俺にも分からん。でも、戊家の支援で機材等を購入している身としては程々の付き合いはしないとな」


「それとこれとは話は別です」


 瑠奈には瑠奈の戦いがあるようだ。


「ところで麗華さんは? 」


「あ、陽奈と訓練してて疲れて眠ってしまいました」


 陽奈が無茶をしたようだ。

 全身筋肉痛になってなければ良いが……


「陽奈、無茶はダメだぞ」


「無茶してないもん。軽いメニューをこなしただけだし~~」


 それが無茶なのだ。

 俺達には軽くても、麗華さんには地獄の訓練としか思えないだろう。


「とにかく、軽めの軽めの軽めだからな」


「わかったよ」


 陽奈には更に釘を刺しておかないと……


「それと、今日、丙家当主丙 源次郎から連絡がありまして人工衛星の使用の許可がおりました。使えるのは気象衛星という名目で打ち上げた軍事衛星『朝焼け2号機』との事です。これで、リアムタイムで上空から兄様を見てられます」


 十家の丙家当主は、防衛庁長官だ。

代々、この国の防衛業務に従事している。

 こんな早くに使用許可が下りるのは、それだけこの件が重要な案件だという事か……


「軍事衛星なんてこの日本でも打ち上げていたんだな」


「まぁ、知られてはいけない事ですので秘密厳守の書類を何枚も書かされましたけど、それだけの価値があります」


 あとはスーパーコンピュータだが、これは、半官半民の企業が管理しているので手続きが複雑なのだろう。


 戊家当主の口添えがあれば、それも可能だと思うが……


「それと、監視カメラの設置場所を地図にプロットしておいてくると有難い」


「それは、もうできています。時間のあるときにでも随時設置していただければありがたいです。勿論、私も設置しますので」


 着々と準備が整えられていく感じがする。


 このまま順調にいけば良いが……





 次の日、学校では、三分の一程の生徒が欠けた教室で、謹慎所分された生徒の噂と、昨日2年生にハーフの金髪お嬢様が転校してきたという噂で持ちきりだった。


 俺のゴミ事件はあれからは無い。

 主犯の者達が謹慎中なので当たり前の事だが……


 いつもより穏やかな時間が過ぎ、放課後になると、美術部の先輩から呼び出された。

 一緒に美術部の部活に行くと、部室では部員が全て揃っていた。


 俺を入れても5人しかいないのだけど……


「これで、みんな揃ったね」


 そう説明するのは、2年生の新庄 輝先輩だ。

 俺が美術部の部室に初めて入った時、入部届けを渡した人物だ。


 新庄先輩が、部長だったのか……


「えっと、まず、新しく入部した霞君を紹介しよう。霞君、自己紹介お願いできるかな? 」


 こういうのは苦手なのだが……


「一年一組の霞 景樹です。宜しくお願いします」


 無難な挨拶をして、空いた席に座る。


 美術部員は5名

 部長の新庄 輝 二年三組

 副部長の藤堂 友梨 二年二組

 坂下 有紗 二年四組

 六条 美佐枝 一年四組

 そして俺だ。


 一年生は俺と六条だけのようだ。

 俺が入部して喜んでいた新庄先輩の気持ちが分かる。


「実は、来月の文化祭の件でみんなに集まってもらったんだ。課題の絵はみんな順調に進んでいると思うけど、それとは別に生徒会から入場門の作成を頼まれた。これは、ずっと美術部が担当してきたものだけど、今年は人数が足りなくて同好会扱いされてきた美術部にはその仕事は回ってこないと諦めていたのだが、霞君が入部してくれたおかげで、入場門の作画を正式に依頼されました。これで、先輩から受け継いできた面目を果たせます」


『おお~~』と拍手が沸き起こる。俺も、みんなに合わせて拍手をした。


「それで、入場門の件だけど、何か案はあるかな? 」


 そう言われても見た事も聞いた事もない俺には、さっぱりわからない。


「部長、今年のテーマは何ですか? 」


 そう質問したのは、二年の坂下 友梨だった。


「今年の文化祭のテーマは『飛翔』だ。空高く飛び巡るという意味と我々学生が将来に向けて飛び立つという意味を兼ねているそうだ」


「飛翔ですか、結構、イカしてます」


 一年の六条 美佐枝は『飛翔』という言葉が気に入ったようだ。


 話し合いは結構時間を費やし、結局は持ち帰りで各々が素案を書いて提出することとなった。


 俺は、提出する課題の事をすっかり失念していた為、入場門の素案と一緒に仕上げなければならなくなってしまった。


 普通の学生も大変なんだな……


 そう思いながら、家路に着いた。





 海辺に近い倉庫の一角で数人の男達の話し声が聞こえてきた。


「どうだ。例のものは? 」


「素材が雑魚なので、使い潰しのつもりで仕上げたのですが、思ったより強力な奴が上手く憑依してくれました」


「そうか、それもこの古文書のおかげというわけか。わははは」


「解読したあいつは死を選んだ使えねぇ奴でしたが、こいつの成果だけは褒めてもバチは当たりませんぜ」


 倉庫の中には研究所のような施設があり、そこでは数人の若い男性が厳重なカプセルの容器に入れられていた。


「まあ、短期間の薬の投与で死んじまった奴もいたが、これだけでも揃えば今は、上々だろう。あとは、星が揃う来年までには。この10倍、いや、それ以上の数を仕上げておかねぇとあの方になんと言われるかわかったもんじゃねぇしな」


 男達は、倉庫の中に置かれているカプセルを覗いて、眠っている若い男性達を商品のように扱っていた。


 そして男はこう呟いた。


「オムニサイドまで、もう直だ……」





 結城 莉愛夢は、放課後になると学校を出て直ぐに市ヶヤにある病院に通っていた。

 剣道部の部活動は休みをもらっている。


「二度とあの時のようには、なりたくない……」


 それは、過去において飯塚 早苗から相談された事を意味していた。

 思いもよらぬ相談内容に結城自身どうしたら良いかわからなかったのだ。

 剣道部の部活を言い訳にして、少し距離を置いてしまった。


「あの時の自分に戻りたくない……」


 その思いが、今の結城 莉愛夢を突き動かしていた。

 お堀の脇の堤防に植えられている桜並木を見ながら、春になったら早苗と一緒に見に来ようと考えていた。


 病院に着くと、そこには高級なリムジンが駐車スペースに止まっている。

 そのリムジンには見覚えがある。


「あのリムジンは……」


 病院の入り口から黒いスーツを着た初老の男性と金髪のお嬢様が出て来た。

 その人達は、飯塚 早苗をこの病院まで連れて来てくれた人たちだ。


「お礼言ってなかったわ」


 結城 莉愛夢は、リムジンに乗り込もうとするその者達に声をかけた。


「すみません。確か戊さんでしたよね。この前は、早苗をこの病院まで乗せて頂いてありがとう御座います」


「あら、貴女はあの時の……」


 そう返事をしたのは、金髪縦ロールのお嬢様だ。


「結城 莉愛夢です」


「そうそう、あの霞 景樹と一緒にいた子ですわね」


「はい。戊さん達のおかげで早苗は、助かりました。お礼を言いたかったので……」


「ええ、お礼など言われる道理はありませんわ。当たり前の事をしただけですもの」


「結城様ですね。お嬢様の言われた通りです。私達は当たり前の事をしただけです。お気になさらずに」


 初老の紳士は、凛とした立ち姿から一礼をした。


「お友達の具合はどうですの? 」


「だいぶ良くなりました。最近では食欲も出て来たみたいです」


「それは良かったですわ」


 少し嬉しそうに金髪お嬢様は微笑んだ。


「それでは、私、お見舞いに行かなきゃいけませんので、本当にありがとうございました」


 そう言って頭を下げて結城は病院に入って行った。


 残った二人は、その後ろ姿を見ながら、


「行きますわよ。セバス」


「はい。お嬢様」


 二人を乗せた車は、静かなエンジン音とともに病院を後にした。


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