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第31話 浴室





 水色の綺麗な髪……

 きめ細やかなツヤツヤの肌……

 スラッと伸びた手足……

 膨らんだ2つの~~


 いかん!


 俺は、タオルを腰に巻き、そして、脱衣場にあるバスタオルを持ってきて静葉の身体に巻いた。


「静葉、どうしてここに? 」


「流が一緒に入った方がいいと言っていたから」


 清崎さん! マジ勘弁してください……


 バスタオルを巻いた静葉が浴室に備えてある椅子にちょんと座った。


「旦那様、背中を流してあげる」


「大丈夫だ。もう、洗い終わったから」


「そう、じゃあ、旦那様、髪洗って? 」


「あ、うん。俺でいいのか? 」


「旦那様がいい」


 俺は、壬の肩までの伸びてる綺麗な髪をシャワーで濡らしてシャンプーをつけて髪を洗い出す。

 頭皮をマッサージしつつ髪も手で梳きながら丁寧に洗う。


「旦那様、上手」


「ああ、小さい頃から妹達の髪を洗っていたからな」


「そう、とても気持ちいい」


『霞の者』は、忍びだ。

 小さい頃から、女性の身体に慣れるように訓練されている。

 妹達とも里にいる頃は、一緒に入っていた。


 だが、反応しないわけではない。

 思春期、真っ只中なのだから……


 そんな、静葉が俺の股間に目がいく。

『ジトーー』と見つめる視線が、可愛らしくてマズい……


「旦那様、ここ何で膨らんでるの? 」


 聞くな!

 スルーしろっ!


「気にするな。山の天気は変わりやすい。それと同じだ」


「そうなの? ここ山じゃないよ。あっ、膨らんでるのが山みたいって事? 」


「ほら、流すぞ。目を瞑っていろ」


「うん」


 俺は、泡を洗い流す。そして、今度はリンスで仕上げる。


「気持ちいい。(ながれ)より、気持ちいいかも」


 流とは清崎さんのことだ。もしかしたら、壬は1人でお風呂に入った事がないのかもしれない。


「自分でも洗えるようになると楽だぞ」


「ダメ。目が痛くなる」


 思った通り、小さい頃から自分で洗った事が無いようだ。

 それだけ、大事にされてきたのだろうが、このままではいけないような気がする。


 髪をシャワーで流して、リンスを落としていく。


「まだ、目を開けるなよ」


「うん」


 静葉の髪を洗いながら、この子はまだ、幼い子供と一緒なのだと痛感する。

 俺は、複雑な気持ちが心に芽生えた。


 バスタブにお湯も張ってあったので、どういうわけか2人で入っている。


「旦那様、護符いっぱい書いた」


「そうか、ありがとな。因みに一枚書くのにどれくらい時間がかかるんだ? 」


「1時間ぐらい。10枚書いた」


 すると、護符作成で10時間もかかったのか……


 もしかしたら、壬は寝てないのか?


「それじゃあ、シュークリームだけじゃ足りないな。何か欲しいものはないか? 」


「赤ちゃん」


「はい!? 」


「赤ちゃん、欲しい」


 そう言わされてるのだろうが、それは困る。


「そうか、それはまだ先だな。静葉が自分の気持ちでそう思った時考えるよ」


「……よくわからない」


 そうだろうな……


「服とかアクセサリーとか指輪とか、何か欲しくないか? 」


「指輪がいい。綺麗なやつ」


「わかった。あとで指のサイズを教えてくれ」


 十分温まった俺と静葉は浴室を出たのだった。


 た、耐えたぞーーっ!!





 壬の家に長居すると厄介な事になりそうなので、指輪のサイズを聞いて家に帰る。

 傘は清崎さんが貸してくれたものを使っている。


 駅に行く途中から地下通路を通れる。

 雨が降っている今日のような天気にはありがたい。


 俺は、傘についた水滴を落としながら通路を歩いていると、前に見知ったクラスの男子と女子が仲よさそうに歩いていた。


 あれは、クラスのイケメン、バスケット部の高瀬 悠人のグループとなんちゃってギャルの須崎 美梨のグループだ。


 見つかるとマズい……ので俺は気配を消した。


「ねぇ、悠人、どこ行く? 」

「そうだな、ゲーセンとか? 」


「俺、カラオケ行きてーー」

「私もオケりたい気分かも」


 みんなでどこか行こうとしてるようだ。


「それより、見た? 昨日の霞の顔」

「あ~~超、ウケたよね~~」


「これで、少しはおとなしくなるだろう」

「でも、面白かったから、また、ゴミでも詰め込んでやろうぜ」

「わははは、それいい! ゴミはゴミらしく生きてろってか。わははは」


 内容から察するに、こいつらがゴミを下駄箱と机に入れた犯人達のようだ。


 無駄に元気だな……他にやる事は無いのか?


 そのグループはカラオケ店に行く事になったようだ。

 さて、こいつらはゴミが好きなんだっけ……


 俺は、地下通路の両サイドにある飲食店の生ゴミを見つけて、そいつらめがけて投げつけた。


『わっ、何!? 』

『く、くせーー! 』

『キャッーー髪の毛が、服にも黄色い汁が~』


 地下通路は大騒ぎとなった。

 異臭を放つイケメングループの者達は、周りの者から写真やムービーを取られている。


「心の腐った奴は臭い匂いがお似合いだ」


 俺は、臭い地下通路から地上に上がって新鮮な空気を吸い込んだ。





 少し、やり方がえげつなかったので反省してると瑠奈からメッセージが届く。


「兄様、面白かったです」


 見てたのか……


「ちょっとな。机と下駄箱にゴミを入れられたお返しにと思ってな」


「兄様にそんな事が、わかりました。私にお任せ下さい」


「瑠奈、待つんだ。もう、終わった事だから」


「わかりました。でも、それだけでは私の気が治りません。自重しますので……」


 マズい、瑠奈が手を出したらとんでも無い事になる。

 俺は、瑠奈に何度も連絡を入れる。

 だが、繋がらない。

 そうして10分が過ぎた頃、やっと瑠奈と繋がった。


「瑠奈、まさか……」


「そんなに酷いことはしていません。ただ、画像と過去の面白い動画を名前と顔写真付きで流しただけですから……」


「そ、そうか……」


「人間は誰しも裏の顔を持ってますから、面白い画像と動画が見つかりましたよ。うふふふふ」


 まぁ、自業自得だけど、俺達に関わったのが運のつきだったという事だな。


 俺は、畳んだ傘を広げて雨の中を駅に向かって歩いて行った。





 池フクロウの西口の公園では、ちょこんと座ってる陽奈の周りに鳩がたくさん群がっていた。


「あれ、雨が降ってきちゃった~~」


 鳩に餌をあげていた陽奈は、傘を持ってきてない事に気付く。


「雨降ってきたから帰るね。この間は助かったよ~~」


 そう鳩にお礼を言って、その場から立ちさそうとした時、不意に陽奈の頭上に傘がかけられた。


「えっ!? 」


「こんにちは。確か、霞君の妹さんだよね。私、お兄さんのクラスメイトの水沢 清香って言います。こんなところで何してたの? 」


 陽奈は背後を取られた事に呆然としていた。

 もし、敵なら命は無い。


「鳩に餌をあげてました。あっ、そうだ。いつもお兄がお世話になってます」


「うふふふ。本当に可愛いわね。今日はもう1人の妹さんと一緒じゃないの? 」


「瑠奈は、家でパソコン見てます」


「そうなんだ。良かったらお茶でもしない? 」


「いいの? 」


「私も、喉乾いたから」


「やったーー! 」


 陽奈は、水沢と一緒に近くのファーストフード店に入って行った。


「陽奈ちゃん、よく食べるね~~」


「そういう水沢さんはポテトだけなんですか? 」


「えへへへ、ちょっと最近太り気味なんだぁ」


「お兄が言ってましたよ。女性は少しポッチャリの方がいいって」


「へ~~霞君がね」


 陽奈は二つ目のハンバーガーを口に運んだ。


「ねぇ、この前、ここで霞君と陽奈ちゃんが公園のベンチに座ってたけど何してたの?」


「この前ですか……あっ、あの時かも」


「あの時って庚さんが連れ去られた時? 」


「そう、私とお兄は、庚さんの監視……あっ、これ、秘密だった。えへへへ」


「監視? 秘密なんだ。でも、私、誰にも言わないよ。先生にも釘を刺されたけど家の人にも言って無いんだから」


「見られちゃったんですか。でも、これ以上はダメです。内緒なんです」


「わかったわ。でも、私の勘違いじゃなくって安心したかも。霞君に聞いたんだけど、その場にはいないって言われてモヤモヤしてたんだ。あ~~なんかスッキリしたよ」


 水沢は、庚が連れ去られた事件について、他言無用と担任の先生から言われていたようだ。


 庚にも聞けない。

 霞 景樹には、行ってないと言われてモヤモヤしていたらしい。


「そうだ。陽奈ちゃん。連絡先交換しよう。私、陽奈ちゃん達みたいな妹が欲しかったんだぁ」


 2人は連絡先を交換して、仲良く世間話しに花を咲かしていた。






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