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第16話 瑠奈の活躍




「あっ、やはり池フクロウに行くのね」


 瑠奈は、自宅のパソコンの前で庚 絵里香の動向を見ていた。

 地図に表示されるGPS情報は、山手線沿線を池フクロウ方面に移動している。


「陽奈良いなぁ~~兄様と一緒なんて、羨ましいな」


 景樹と陽奈は、池フクロウの駅に着いたようだ。

 2人で固まって表示されている。


「ここなら監視カメラが駅構内にあるよねーー」


 駅の監視システムをハッキングする為、物凄い勢いでキーボードを乱打する。


「良しっと、繋がった……兄様は、兄様はっと……いた! 」


 景樹の側で美味しそうに陽奈が甘栗を食べている。


「何でよ~私、甘栗大好物なのに~~陽奈はポップコーン派でしょう!! 」


 監視カメラが、陽奈にズームする。


 すると、食べ終えた陽奈がカメラの方を向いた。


「あれ、気が付いたのね。感だけは良いんだから~~」


 景樹が売店で甘栗とポップコーンを買ってきて陽奈に渡している。


「まだ食べるつもり? 帰って来たらお仕置きしなくっちゃ……あれ、バッグにしまってる。もしかして、私へのお土産だったの? 」


 陽奈は、甘栗を仕舞うとまた、監視カメラの方を見てニコリと笑った。


「まぁ、それならお仕置きは勘弁してもいいけどね~〜」


 瑠奈は嬉しそうに、庚の動向をチェックする。


「もう、池フクロウに着くわ。兄様に連絡入れなくちゃ」


 キーボードを打って簡潔なメールを送る。


 そして、何時まで庚の動向を探らなければならないのかと少しイラついてきた。


「兄様に迷惑をかけるなんて、即、滅よね。あのお尻は……」


 庚の事をお尻と呼ぶのは、庚のお尻の肉付きが良かったからだ。

 張りのあるお尻が、羨ましく思えたから、嫌いになってそう呼ぶ事にしたようだ。


 単なる嫉妬だ。


 でも、中学2年という微妙な年齢の瑠奈は、素直に認める事が出来なかった。


「あっ、お尻が池フクロウで降りたようね。向かう先の改札は……っと西口方面ね」


 景樹にメールを入れてその事を伝える。


「あのお尻は、兄様に気があるわけじゃないから様子見で大丈夫そうだけど、問題は、転校してきた壬 静葉よね。少し、調べてみましょう」


 瑠奈は、また、キーボードを連打し始める。

 壬家の情報を調べようとして住まいである近畿地方の神社にアクセスするが……


「まさか……今の時代にアナログなの? 」


 神社という古式豊かな住まいである為、ネットでは侵入できない事に気付く。


 まさか、家にネットがないの?


「じゃあ、携帯は……」


 各携帯会社に不正にアクセスしていく。

 瑠奈の目は金色に光っていた。


「無い、無い、無い……まさか、壬名義で契約してないの……」


 そうすると現地に行って直接調べる他はない。


「ダメよ。そんな時間なんてないんだから……」


 静葉が通ってたであろう幼稚園から小学校、そして中学校や高校にアクセスして行く。


「ダメだ……学校のセキュリティーは突破できても個人データは保存されてないわ。持ち運びの出来るUSBを使ってるのかしら……。でも、一度、消した廃棄データは残ってるはず」


 夢中になって壬家の事を調べていると、庚のGPSの反応が速くなっていた。


「庚さん、車にでも乗った? でも、兄様達は動いてない。まさか……」


 瑠奈は西口公園付近の監視カメラにアクセスする。


 そこには異常な人集りが出来ている。


「どうしたの? 兄様に連絡しなくっちゃ」


 インカムをつけて画面から景樹のスマホに連絡を入れる。


「兄様、どういう状況なのですか? 」


 すると、景樹から


『陽、鳩、車、追尾』


「えっ!? 」


『ビル、2、狙撃』


 狙撃という単語で全て理解した。

 庚が連れ去られて陽奈の能力で鳩を使って追尾している。


(兄様達が動けないのは狙撃手がビルの上に2人いるって事ね)


「了解しました」


 瑠奈は、直ぐに庚さんが拉致された車の通りの監視カメラにアクセスする。


「あ~~スペックが足りないわ~~。パソコンだけでも買っておけば良かった。そうだ。連絡を入れないと。庚家当主よね。依頼主だし……」


 パソコンのインカムは、景樹と繋がっている。

 瑠奈はスマホを取り出して、調べておいた庚当主に連絡を入れる。


「誰かね……」


 落ち着いた紳士の声がした。


「私は『霞の者』霞 瑠奈です。絵里香お嬢様が、池フクロウ駅の西口公園前で拉致されました。今現在、GPSで追尾中です」


「何! 絵里香が? 」


「兄と妹が監視しておりましたが、西口ビルの屋上にて狙撃手が配備されてた模様。拉致の瞬間に動けなかったようです」


「わかった。こちらから警察に連絡を入れておく」


「この電話は、私の電話です。用があればご連絡下さい」


「わかった感謝する」


「庚さんのスマホは壊されたようね。兄様に連絡入れなくちゃ。インカムよりメッセージの方がいいわね。状況がわからないし……」


 瑠奈は『お尻、G可、ス不可』と簡潔にメッセージを送る。


 移動しながら、机の引き出しに入れてあったモバイル式のパソコンに電源を入れる。

 このパソコンは、少し古いので立ち上がるにも時間がかかる。


 その間に、茜叔母さんに連絡を入れる。

 直ぐに繋がった。


「どうしたの? 」

「庚 絵里香が拉致されました。庚家当主には連絡済みです」

「えっ、わかったわ。こちらも連絡を入れてみる」

「宜しくお願いします」


 すると直ぐに、庚当主から連絡があった。


「確認した。今、警察を向かわせている」


「では、ビルの地図を送ります。狙撃手は兄様達が今、対処してます。直ぐに拘束されるはずです」


「わかった。助かる」


「私は兄様達の痕跡を消そうと考えています。庚家としては、絵里香さんはどうされますか? 」


「あれこれ噂が広まるのは困る。消せるなら消してくれ」


「そうすると、捕まえた犯人は立件できなくなる可能性がありますけど、よろしいのでしょうか? 」


「構わない。犯人達は、私が個人的に拘束する」


「わかりました。この事は警察関係にご報告願います」


「うむ。わかった」


 立ち上がったモバイルパソコンで、ネットの状況を確認する。


「やはり『つぶやこう』で写真や動画がアップされてるわ。人のプライバシーを何だと思ってるのかしら。悪いけど消させてもらうわ」


 また瑠奈の目が金色に光りだす。

 瑠奈の目は、電気信号を読み取ることができる。

 ネットに繋がれば、パスもIDも思いのまま調べる事が出来た。


『つぶやこう』にアクセスして、動画を削除、そこから持ち主のスマホにまでもアクセスする。


「写真を削除、動画を削除っと……」


 この作業を右手のみでモバイルパソコンを操作して行っている。

 デスクトップの方は、GPSと監視カメラが映っている。こちらは左手のみで操作している。


 すると陽奈から連絡がある。


「1匹確保したよ」


「連絡入れてある。もうじき警察が到着する」


 動画の削除が面倒くさい。アップされているのは『つぶやこう』だけではない。他のサイトや掲示板など検索して削除してると、陽奈に対する返事がおざなりになってしまった。


 すると、陽奈が


「瑠奈は今、何やってるの? 」


「庚さんを追跡しつつ、ネットに上げられた兄様と陽奈の痕跡を消しています」


 本当は庚さんもだけど、陽奈には関係ない。


 陽奈から、2台に別れたと連絡がある。

 鳩から聞いたようだ。


 もちろん、目の隅でその様子は見ていた。

 荷物を乗せて走り去る車が荻クボ方面に向かっている。


 GPSの反応はこの車だけど、気づかれたみたい。


 陽奈からどっちが本命か尋ねられた。

 瑠奈は、動画を消しつつ、川グチ方面が本命と伝えていた。


 それから少し経って、景樹から連絡が入る。

 警察の手配は完了したと伝えた。

 そして、この状況と景樹の口調から黒い影の正体は、何となく予測できた。

 紅の者の女郎蜘蛛だろうと……


 景樹は、焦っていた様子だが、その後で嬉しいことを言ってくれた。

 あのお尻の監視をこれで最後にしたいと……


 瑠奈は嬉しくなり全力で応えると返した。


 すると景樹は、お腹が空いたから私の手料理が食べたいと言ってくれた。

 瑠奈は、嬉しそうに景樹のいう通りにすることにした。


 動画や写真は、殆ど削除し終わっている。

 スペックが足りないので、トロイの木馬でバッグドアを仕込んだ何十台ものパソコンをちょっとだけ拝借している。


「早くお尻の件を終わらせなくっちゃ……」


 GPSは使えない。地図上では、荻クボを通り越している。


 北上する環状線の沿道にある監視カメラの様子を伺うと、黒いワンボックスカーを発見する。


 県境の川沿いにある監視カメラが対象の車を捉えた。


「道を逸れたわね……」


(目的地はもうすぐってとこか……)


 川辺周辺では工場や倉庫らしき建物が混在している。


(時間があれば持ち主まで把握できるのに……)


 勿論、瑠奈の神霊術を使えば、造作もないことなのだが、景樹に止められているから、予測で判断していた。


「この倉庫ね」


 瑠奈は、その倉庫の位置を関係各所に送りつけた。

 予測でも瑠奈の判断に1度も間違いはなかった。


 さて、動画の削除も終わったし、料理を作らなきゃ……


 瑠奈は、モバイルパソコンとスマホだけを持って、キッチンに向かった。


「何作ろうかなぁ。兄様、喜んでくれるかなぁ……でも、私は甘栗が食べたいかも……」


 瑠奈の顔は、とても嬉しそうに笑みが溢れていた。





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