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プロローグ





「やばっ、遅くなっちゃた」


 塾帰りの水沢(みずさわ) 清香(きよか)は、スマホを見ながら母親からのL*NE通知を見ていた。

 夜10時を回った家路は、昼間と違って怖い。


「早く帰らないと……トイレ行きたいし」


 清香は、何時もなら避ける公園の近道を通る事にした。

 ここを通れば家までの距離を大幅に短縮出来る。

 それに、季節外れの桜が咲き、夜桜見物する人達の為に雪洞が点灯していたのも安心材料となった。


「明るいし、人もいるから大丈夫だよね」


 そう自分を納得させながら公園に入って行く。


 桜の木の本数は有名な桜の名所と違ってそんなに多くないが、それでも地元では結構有名な場所だ。


 清香も小さい時には家族と一緒に花見によく来ていた馴染みの場所でもある。


 桜の木の下では、ブルーシートを敷いて花見に興じる人達もいる。


「夜は結構冷えるのに、寒くないのかな? 」


 清香は、お酒を飲み騒いでる人達を余所目にして急ぎ足でその場を離れて行く。

 マフラーで顔の半分を隠すようにしていたのは、酔っ払いに絡まれたりするのが面倒だったからだ。


 その公園の中央付近の少し小高い場所に一本の大きな桜がある。

 人気のある場所を通り過ぎると、その桜の木が見えてきた。

 しかし、その場所では誰も花見をしていない。


 それは、桜の木の下に小さな古びた祠があるからだ。

 清香も詳しい理由は知らないが、小さい時からその祠に近づいてはいけないと教わってきた。


 小さい頃、両親にその理由を尋ねると、何でもその桜の木にイタズラすると神様が怒って罰を与えると説明された。


 実際、数年前には、その桜の木の下で死体が発見され地元では大きなニュースとなった。


「あんなに綺麗なのに……」


 だから、地元の人は誰もその桜の木のところに近づきたがらない。


 清香も、その場所は更にスピードを上げて急ぎ足で通り過ぎようとした。


 すると突然目の前に桜の花びらが舞い上がった。


 それも一輪や二輪ではなく大量にだ。


 清香は、その花びらの軌跡を辿った。

 それはあの大きな桜の木からもたらされているものだった。


 その時、目の端に祠の前に佇む黒いフード付きコート着た人物が目に入った。


「誰だろう? 地元の人じゃないのは確かね」


 その黒い人物は、清香の気配を察知したのか振り返った。


 清香も気づいたのか、その人物をまじまじと見つめてしまった。


「えっ! 」


 清香が小さな驚きの声をあげたのは無理らしからぬ事だった。

 悲鳴をあげなかったのは、現状が理解できなかったからだ。


 祠に佇む人物はフードの奥から覗くその目が金色に光っていた。


 そして、その人物の足元には(おびただ)しい数の死体が転がっていた。





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