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FIVE  作者: AkIrA
8/42

8:死線

手のひらに意識を集中させてまずは火をイメージする。

しかし感じたのは違和感だけで何か起こる気配はない。



(違うのか…)



敵の攻撃はもう目の前まで迫っている。

焦る気持が余計に集中力を散らせる。

その時狩谷の前に出た北森が両手を広げた。

先程のような地の楯が出現する。



(…北森を信じる…大丈夫だ)



北森の作り出した楯を赤いチャクラムはあっさりすり抜ける。

先程とは違いやはりチャクラムは霧で出来ているのだ。

実体の無いものでは地の楯は無意味。

すり抜けたチャクラムは北森の体を傷つけて、狩谷へ向かう。

しかし狩谷は微動だにせず、イメージを念じ続けた。





火が駄目なら…



「水…」

「!?」



先程とは明らかに体の反応が違った。

じわりと両掌が熱くなってくる。

それもほんの一瞬で今度は透き通るような冷たさが狩谷の両手を包み込んだ。

視線を自分の掌に落とすとそこには青く透明な水が渦を巻くように腕に絡み付いていた。


しかしそれをどう使えば良いかなんて分からない。

狩谷は咄嗟に飛んできたチャクラムへ自分の掌を向けた。

絡み付いていた水流はまるで意思を持っているかのように赤いチャクラムを飲み込み溶かしていく。

そうして飛んできたチャクラムを全て飲み込み終わると、狩谷は手を下ろした。




「っち…」


男が小さく舌打ちをした。

苛ただしげな表情はそのままに、新たな赤い円盤をまた作り出していく。


「それはもう効かないぜ…」

「君らのは防御だけだろ?何時まで俺の攻撃を防げるかな?」


男の言う事は尤もだ。

北森にせよ狩谷にせよ、属性を見極める事は出来たがそれを使いこなすことは出来てない。

属性のモノを呼び出して楯代わりに使っているだけだ。

男のようにそれを武器に変えて戦えなければ勝ち目は無い。



「武器…?」



武器、と一言に言ってもたくさん有りすぎる。

第一使いこなせなければ武器としての意味なんて無いに等しい。

自分の特徴を生かせる武器でなければ…



「狩谷、趣味は?」

「は!?」

「じゃあ特技、過去の習い事でも良い」



狩谷は思わず素っ頓狂な声を上げた。

北森の言葉は唐突過ぎて意味を理解しかねる。

何故この非常時にお見合いのような事を聞かれなければならないのか。



「北森…お前なぁ…」

「ヒント、なるかも」

「ヒント?」

「武器の」



そこまで聞いて漸く狩谷は北森の言葉の意味を理解出来た。

要するに自分の得意とするようなものを武器にしろということだろう。

そう言われて狩谷の頭の中に真っ先に浮かんだのは…

傍若無人な幼馴染。

性格は難があるがその幼馴染の強さだけは認めざるを得ない。

幼い頃は同じ道場に通ったこともあったが。





「アイツの力を借りる日が来るなんてな…」

「アイツ?」



狩谷は目を閉じ、幼馴染が見せた流れるような型を思い出した。

美しさと強さを兼ね備えたその姿。



水無瀬晋という男の姿を。




「懐かしいな…もう一度コレを手にする日が来るなんて思わなかった…」




狩谷の手の平に現れたのは身の丈ほどもある長い棒。

手馴れた動きでそれを回して見せた。



「そんな棒切れで何が出来る?」

「ただの棒じゃない…」



狩谷は手の中の棒を数回回すとそのままの勢いで相手へと突き刺した。

放たれた攻撃を身を捻って男はかわす。

速さで勢いづいた棒の先端は地面へ丸く穴を開けた。


「ッ…!」

「逃がすか…!」



棒を抜き取ると今度は横になぎ倒すよう大振りする。

相手が攻撃を仕掛ける暇も与えない猛攻だ。

しかし男とて黙って攻撃を避けているだけではない。

棒を手元に作り出したチャクラムで受け止めると、狩谷の懐へ切り込むように突っ込んだ。



ガキン…!



硬質な音が響く。

狩谷が棒で男の手にあるチャクラムを受け止めたのだ。

ぎりぎりとお互いが力を相手方向へとかけて睨みあう。



「このまま腹掻っ捌いてやる…」

「出来るもんなら…な!」

「!?」



カチリ、と狩谷が手元のボタンを押す。

すると棒がばらりと崩れ、鎖に繋がれた3つの短い棒へ分かれた。

急に押し返す力の無くなった男の身体は前へつんのめる。

狩谷は身体を半回転させるともう一度手元のボタンを押した。

それは直ぐに鎖を縮ませ元の長さの棒へと戻る。


バランスを崩し前へ倒れこもうとしている男の頚椎めがけてその棒を、渾身の力を込めて振り下ろした。













「かはっ…」




どさり、と地面に倒れた男はそれきり動くことは無かった。

小さく背中が上下しているところをみると気を失っているだけのようだ。

しかしこれで何とか敵を撃退することができた。


狩谷は全身から力が抜けていくのを感じた。



「狩谷」

「ん…?」



見上げると傷だらけの北森が真っ直ぐ手を伸ばしてきている。

相変わらず表情は読めなかったが、何となくその意味は分かった。



「お疲れ」

「おう」



顔を見合わせ、差し出された手に自分の手を重ねる。

共に死線をくぐり抜けた仲間としてきつく握手を交わした。


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