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FIVE  作者: AkIrA
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7:属性

やってくるであろう痛みに備え北森は息を詰めた。

しかし何時まで経っても想像するような痛みはやってこない。

代わりに聞こえてきたのは…



「ぐ…っ…」


男の苦し気な呻き声。

そして…



「透兄、良かった…間に合って…」

「ひ…すい…?」



男の腹にククリ刀を容赦なく突き刺した翡翠の手には、お札のようなものが握られていた。

男が前に倒れると同時に北森の肩からチャクラムが抜けて地面に転がった。



「この札で透兄たちを此処におびき寄せたんだね…」

「双子…っ」

「透兄に手を出した罪だよ…」

「っは…!」



一度深く突き刺してから翡翠は刀を引き抜いた。

刀によって塞がれていた傷口が一気に開き腹から血が噴き出す。

それを止めようと男は手で傷口を押さえ付けた。



「…凛子ちゃんもそういや邪魔されたって…言ってたなぁ…」

「あの悪趣味女か…」

「凛子ちゃんを馬鹿に…すんな!」



男の目が見開かれた。

狂ったように笑い出す。

地についていた男の手から赤い煙のようなものが立ち上り、それはみるみる周りを覆っていった。



「あはははははっ!」

「!!」



地面に落ちたチャクラムが赤い光を帯びていく。

先ほどよりも鋭い動きでチャクラムは宙を舞う。

翡翠はククリ刀を構え赤い光を必死で目で追った。

しかし高速で飛び回るそれは中々捉えることが出来ない。



「くっ…」



チャクラムが翡翠の体の近くを飛ぶたびに服と皮膚の表面が一緒に切れていく。

叩き落そうとするも不規則な動きがそれを阻む。



「逃げれないよ」

「!?」



赤い霧が視界を奪う。

ほんの一瞬、翡翠の意識が逸れた。

その瞬間を男が見逃すはずは無かった。



「死ね!!」

「あ、く…っ!」



猛スピードで突っ込んできたチャクラムが翡翠の腹を正面から裂いた。

翡翠の身体は反動で後に倒れそうになる。

しかし今度はその背後から、戻ってきたチャクラムが突き刺さった。



「っ、おい!大丈夫か!?」



狩谷は倒れている北森と翡翠の傍に駆け寄る。

北森は辛うじて起き上がり、翡翠を抱き起こした。

息も切れ切れに翡翠は言葉を紡ぎ出す。



「っくしょ…奇襲掛けた、から‥いけると…思ったんだけど…」

「翡翠…」

「ごめ…透兄…やっぱ…俺じゃ駄目だ…守護者、には…勝てな…」



翡翠の口からは腹部の傷より上がってきた血が口から吐き出される。

途切れかけの言葉を、逃さないために2人は耳へ意識を集中させた。



「透兄達は…守護者、なんだ…2人なら…勝てる…」

「守護者…?」

「それぞれ…属性は…違うけど、この地球に存在する要素…」

「翡翠」

「イメージを念じて…そうすれば…」



そこで翡翠の動きは止まった。

失血により意識が無くなってしまったのだ。

このままだと命が危ないのは明確だ。




「北森…」

「何‥?」

「そいつの言う意味…分かったか…?」

「…やるしかない」



100%意味を理解することなんて出来るわけが無い。

しかし理解しなくてはいけないのだ。

この状況で生き延びるためには。



「この地球に有る要素…?」




考えてみるがやはり理解出来ない。

地球に存在する要素なんて数え切れないほどあるのに。



「っ…」


考え込んでいるうちに北森を眩暈が襲った。

失血によるふらつきと肩の傷の痛みに北森は地面に手をつく。

その時何か暖かいものが体に流れ込んでくるのを感じた。



「地面…地…?」

「何ブツブツ言ってんの?」



男のチャクラムがまた宙に浮く。

考えている暇は無さそうだ。

北森は自分の属性が地であると信じて念じてみた。



「まずはそっちの死に損ないからだ…!」

「北森!!」



チャクラムが赤い霧を纏い北森に襲いかかる。



「!」



その時北森の地面がボコッと盛り上がった。

それは楯の様に競りあがり北森たちを覆う。

男から放たれたチャクラムはその楯に捕らえられた。



「これが‥地の属性…」



取り敢えず男より武器を奪う事が出来たがそれでは勝った事にならない。

北森が意識を散らせば楯はざらりと崩れた。

此処からどうするべきかを考えなければいけない。



「成る程、地の守護者…ね。まさかあれだけのヒントで自分で見つけるとは。」

「…」

「恐れ入ったよ…でも残念ながら君の属性では俺には勝てない‥」



赤い霧がまたチャクラムの形を成していく。

今度は一つではなく何個もだ。

四方八方が赤い円盤によって包囲されていく。




(あ…!そういう事か…)


ふと、狩谷はある事に気付いた。

男の周りを覆っている赤い煙。

あれが発生した辺りから感じていた違和感。


それは…

最初に襲ってきたときに使われていたチャクラムと、今作り出されているチャクラムは性質が違うという事。



「北森、アイツも守護者だって…翡翠って奴が言ってたよな…?」

「あぁ」

「俺の推測が正しけりゃ、あの赤い煙…あれは霧だ。」

「血の霧?」

「そういうコト…アイツは恐らく霧の属性の守護者だろうな」

「霧なら地なんてすり抜ける…」

「多分、な。だから勝てないなんて断言できるんだ。要するにお前の属性とは相性が悪いって事だろ。」

「じゃあ相性が良いのは…」



あの赤いチャクラムが霧で作られたものだとすれば。

地球に存在する要素で霧を洗い流せるもの…



「水か火だ…」

「成る程…」



水なら霧を飲み込み洗い流せる。

火なら霧の粒子を蒸発させる事ができる。


それは一か八かの賭け。

失敗すればここで3人とも殺されて終わり。

勝つには狩谷の属性が水か火でないといけないのだ。



「北森…援護は頼むぜ…」

「わかった」




僅かな願いを両手に籠める。

狩谷は目を閉じて奇跡を念じた。


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