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FIVE  作者: AkIrA
6/42

6:絶体絶命

少し残酷な描写ありです

閉じていた目がゆっくり開く。

まだ痺れの残る手を端樹は動かしてみた。

まだ巧く動かないが、それでも大分マシだ。


何とか身を起こす。

受けた傷は丁寧に処置されていた。

白く巻かれた包帯に端樹はそっと指で触れてみる。

刃物で傷つけられた傷口がじりじりと痛んだ。



「目、覚めた?」


振り返ると青色の瞳が端樹を見据えていた。

青色、という事は…


「えっと…蒼さん?」


端樹の問いに蒼はこくりと頷くと、持っていた鍋を端樹の枕元に置いた。


「口に合うか分かんないけど、」

「ぇ…」

「卵粥。食べる?」

「いいんですか…?」

「良いに決まってる。キミの為に作ったんだからさ」



小さな器に粥をよそい、蒼はそれを端樹にレンゲと共に手渡した。

暖かいそれに心が落ち着きをとり戻す。



「美味しい…」

「だろ?」



嬉しそうに蒼は笑う。

まるで子供の様な笑顔。



「俺、料理には結構自信あんだよね。」

「蒼さん…」

「ん?」

「此処は一体何処なんですか…?それにあの女の人は…」

「うーん…話さないといけないことはいっぱいあるんだよね…」



考え込むように蒼は顎に手を当てる。

その時部屋の奥にある襖を開けて双子のもう1人が入ってきた。



「蒼、僅かだけれど守護者の波動が確認できたよ。」

「わかった、行こう。」



蒼は椅子から立ち上がると翡翠の方へ歩み寄った。

しかし襖の前まで行くと蒼は瑞樹を振り返った。



「ごめんね、ミズキ。後でちゃんと話すから。」

「守護者の5人が揃ってから、纏めて話をした方が効率が良いんだ」

「じゃ、行ってくるね」

「待って!」


出て行こうとする二人を瑞樹は引き止めた。

双子はほぼ同時に瑞樹を振り返る。



「私も行っちゃ駄目…?」



瑞樹の申し出に双子は揃って目を丸くした。

無謀な願いだとは瑞樹自身が一番良く分かっている。

先程命を落としかけたばかりなのだから…

この双子が助けに現れていてくれなければきっと確実に死んでいた。



「馬鹿いうなよ、キミが来ても足手まといになるだけだ。」

「分かってる‥でも…」

「分かってるなら尚更だ。キミは連れて行けない。」

「翡翠、」



蒼が翡翠の肩を掴む。

そして、そっと翡翠を押しのけて瑞樹の前に膝を付く。



「ミズキの心配事は分かるよ。」

「蒼さん…」

「守護者はミズキの知り合いだ…」



瑞樹を見上げてくる蒼の目はぞくりとするほど青く澄んでいた。



「でも大丈夫。」

「蒼さん…」

「俺達が必ず無事に連れて帰ってくる。」



本当に大丈夫だと思わせるだけの力が蒼の目にはあった。

吸い込まれるようなその色に瑞樹は小さく息を呑む。



「だから、此処で待ってて…」

「分かった…」

「良い子。」



ぼす、と蒼は瑞樹の頭を乱暴に撫で回す。

にこっと笑うと翡翠を連れてそのまま部屋を出て行った。


1人残された瑞樹は目を閉じる。

早く守護者と呼ばれる人間が此処に無事現れるように祈った。





















「まだかよ?」

「もう少しのはずなんだけど…」


かれこれ20分ぐらい歩いている。

しかし一向に神社らしき建物なんて見えてこない。

しかも同じような場所をずっとぐるぐる回っているような気さえしてくる。

狩谷は北森に気づかれないように小さく息を吐き出した。


「変だ…」

「変?」


ぼそりと北森が呟く。

休まず進めていた足を止め、近くにあった電信柱の印を指でなぞる。


「この電柱、さっきもみた。」

「はぁ?」

「同じ所を回ってるみたいだ。」

「馬鹿いうなよ!直進しかしてねーのにそんな夢みたいな話があるか?」



狩谷の言葉を無視して北森は自分のかばんをごそごそと漁った。

その手に取り出したのは黒のマーカーだ。



「試してみる」



そう言うと北森は、ぐりぐりと電信柱に黒い丸を描いた。

そして狩谷を促し先程のように真っ直ぐ歩き始める。

5分程歩いた頃、突然北森は立ち止まった。



「やっぱり」

「マジかよ…」



二人の目の前には先程北森が印をつけた電信柱。

何度も確認するが、やっぱりそれは北森によってつけられた印だった。



「どういう事だ…」

「狩谷。」



北森が名前を呼んだきり黙りこむ。

目だけを動かして周りの様子を窺っている様だ。

狩谷もその異様な空気を確かに感じていた。

北森と同じように辺りを警戒する。


その時、不意に背中に感じた寒気に二人は顔を見合せた。

同時に弾かれたようにお互いそれぞれ反対側へ身をかわす。



カツッ…



「な…んだよ…」


2人がさっきまで居た場所には円形の刃物…チャクラムが刺さっていた。

当たっていれば致命傷になっていただろう。

突然の奇襲を仕掛けてきた相手を2人は睨みつける。



「残念。外したかぁ」



そこに居たのは長めの髪を後で纏めている長身の男。

それは先程直たちが見かけた男だったのだが、そんな事狩谷も北森も知る由がなかった。

ただ明確なのは明らかに相手は自分達に殺意を持っているのだということだけだ。



「何しやがる…」

「愚問だよ、俺達の存在のためには君達は邪魔なんだ。」



男が手を広げると、地面に刺さったチャクラムが宙に浮いた。

浮いたチャクラムは男の手の動きに合わせて自由に飛び回る。

不意に男の右手が大きく振られた。

すると浮いていたチャクラムが急にスピードを増して狩谷を標的とした。

突然の急加速に狩谷の反応が一瞬遅れる。



「!!」



ドスッ‥

鈍い音と共に赤い液体が地面に散って染みを作った。




「北森!!」

「っ…」




歯を食いしばって痛みに耐えていたのは…

狩谷を庇うようにチャクラムの軌道に飛び込んだ北森だった。


北森の右肩にはチャクラムが深々と刺さっている。

浅い呼吸を繰り返すたび、肩から溢れ出た血がぽたぽたとアスファルトの上に落ちた。



「へぇ、中々美しい友情だね」

「てめぇ!!」



男が指を下に小さく振る。

その動きに連動してチャクラムが北森の肩にまた深く沈んだ。


「…っぁ!!」

「北森!」


声にならない叫び声を北森が上げる。

それを面白そうに見下ろす男の目は完全に狂っていた。


「そのチャクラム、俺の手の動きに合わせて動くんだよね。」


今度は指を上下に動かすように振る。

傷口を抉られる痛みに北森は歯がぎりぎりと軋むほど噛み締めて耐えている。

狩谷は刺さったチャクラムを抜こうと掴むが、狩谷の全力で以ってしてもそれはぴくりとも動かない。

絶望感だけが募っていく…



「じゃあそろそろ、その腕を切り落としちゃおうか。」

「やめろ!!」

「やめない。」



男が腕を大きく振り上げる。

絶体絶命だ…

北森は諦めたように目を閉じた。



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