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FIVE  作者: AkIrA
5/42

5:焦燥

(直視点)


ぴちゃん…


(何か冷たい…)


ぴちゃん。

額に何かが当たって流れ落ちた。


「…ぃ、」

「ん…」

「おい!」

「!」



べちっ!

ちょっと湿った音が痛みと共にやってきた。

結構痛い…



「何すんのさ!」

「何時までも寝てんじゃねーよ、チビ!」

「なっ!」



結構気にしてるのに!

失礼な奴を睨み付ける。



「まぁまぁ、喧嘩すんなよ二人とも」

「岡野くん、」

「チッ…」



周りを見回す。

どうやら学校の水の入ってないプールらしい。

額に当たってたのは丁度頭上にあった給水口から垂れていた水らしい。



「どう…なってるの?」

「わかんねー…気がついたら此処に居たんだ。」



申し訳なさそうに岡野君が頭を掻きながら答えてくれる。

その顔に此方まで申し訳なくなってしまう。

別に誰も悪くなんてないのに。



「そっか…岡野君と…水無瀬くんだっけ…?」

「水無瀬晋。てめーらは?」

「僕は仙崎直、」

「俺は岡野潔。よろしくな」



水無瀬君は岡野君が差し出した手をちらりと見るも握り返すことはしなかった。

やっぱり失礼な奴だ…

岡野君は苦笑いをしながら差し出した手を引っ込めた。



「にしても…どういうことだ」



立ち上がって見上げてみる。

見慣れた校舎が視界に映った。

他の2人も同じように周りを見回している。



「わかんないけど…風景だけは見慣れてるよね…」

「あぁ…雰囲気は明らかに違うけどな…」



プールサイドに手を掛けて岡野君が上ろうとしている。

その時黒い影がプール外のフェンスの向こうで動いたのが見えた。

慌てて僕は岡野君の制服を引っ張る。

ついでに水無瀬くんのも。



「隠れて!」

「え…」



2人を引っ張ってプールの中に屈みこむ。

何となくだけど見つかってはいけないと感じたのだ。








「今、声せーへんかった?」

「いや?」

「凛子、白星と接触したらしーで。」

「そうなんだ!で、仕留めたの?」

「双子の邪魔が入ったらしいわぁ、ったく忌々しいったらないやんねぇ」


白星?仕留めた?双子?

何の話だ…

少しだけ顔を出して会話をしている奴らを確認してみる。


一人はチャイナ服を着ている。

頭の上にはおだんごが2つ。

どうやら大阪弁を話しているのは彼女のようだ。


もう一人は男のようだ。

身長は高く、長く伸びた髪は後で束ねている。



「という事は、白星とその守護者5人がこっちの世界に入ってきたのはガセじゃないみたいだね。」

「そうみたいやね。凛子はそんな嘘吐く性格ちゃうしねー何か弱っちいオンナノコやったみたいよ。」

「ま、何にせよ守護者含め見つけ次第消してあげないとね。」

「直ぐ見つかるって。焦る必要はないんちゃう?」

「そーだね。残りの5人もきっとたいした事無いだろうし」



男のほうの首がこっちへ向きかけたので慌てて首を引っ込める。

勘ではあるが会話の内容からするに狙われているのはどうやら自分達みたいだ。

覚えの無いこの世界に来ているのは紛れも無く自分達なのだから…


他の2人も気付いたんだろう。

さっきより表情が硬くなっている。


そりゃそうだ。

訳の分からない世界に連れて来られたと思えばいきなり命を狙われてるなんて。

震えだした情けない体を押さえるために自分の腕をきつく握り締めた。


声がどんどん小さくなっていく。

どうやら2人は此方に気付かず行ってくれたようだ。



「どうしよ…」

「直…」

「どうしよう、岡野君!!このままじゃ僕達あいつらに…!」

「落ち着け、チビ!」


水無瀬君がプールの壁を殴りつけた。

その手で僕の胸倉を掴み上げる。

怒鳴りつけられるのかと思いきや、聞こえてきた声は想像以上に静かだった。


「焦ってどうなる、喚いてどうなる…?」

「水無瀬く…」

「この状況が変わんのか?」


そうだ…

悔しいけど水無瀬君の言うとおりだ。

こんな状況なんだから一人で焦って騒いでも仕方ない。


「ごめ…」

「わかりゃー良いんだよ、チビ」

「チビ言うな!」


少し心が軽くなった。

取り敢えず此処にいるのはこの3人なんだから協力して何とかしなきゃ。

頭が冷えたらある考えが浮かんだ。


「ねぇ!僕に考えがあるんだ!」

「考え?」

「透の家に大きな書庫があるんだ、そこに行けば何か分かるかも!」


当ても無く街を歩き回るよりもその方が良いような気がしたのだ。

2人にも異存は無いらしく、頷いてくれた。


5人というコトは僕ら以外にもあと2人、白星と呼ばれる女の子が1人いるはずなのだ。

その3人もいずれ探さないといけない。

もしかしたら、その女の子って…


「蓮ちゃん…」


嫌な予感に背筋が寒くなる。

こういう時の自分の勘は嫌になるほど当たるのだ。


どうか無事でいて…

祈るような気持ちで僕は空を見上げた。

何時もと変わらないはずの空なのにやっぱり違和感は拭えなくて。

僕はまた嫌な焦燥感に悩まされる。

今はまだこうして祈ることしか出来ないから。

だからどうか…無事にもう一度君に会えることを僕は祈り続ける。


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