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FIVE  作者: AkIrA
4/42

4:異世界

「大丈夫?」

「説明してる暇は無いから、」



振り返った青年はまるでクローンのように同じ顔をしていた。


少しパーマがかった髪型。

長めの前髪から覗く瞳の色はそれぞれ違うらしく、緑と青だ。


緑色の瞳の方がもう一人の方に自分の刀を預け、肩口を押さえて蹲る端樹の前にしゃがみこむ。

青色の方は2本に増えたククリ刀を構えて女を見据えている。



「誰かと思えば、出来損ないの双子じゃない」

「相変わらず趣味悪いアンタには言われたくないね」



手元に戻った毬を跳ねさせながら女は不気味に微笑む。



その瞬間緑色の方が何かを地面に投げつけた。

ぼん!と爆発音が響き、それに続いてもくもくと煙が上がる。



「ッ…!」

「行くよ!」



真っ白になる視界の中、端樹の体が宙に浮く。

緑色の方が端樹の体を担ぎ上げ、走り出したのだ。

振動で傷口がまた痛んだが歯を食いしばって端樹は耐えた。



「ちょっとだけだから我慢して!すぐに着くから!」

「翡翠、とりあえず追ってくる気配は無いみたいだよ!」

「油断すんなよ、蒼!」

「分かってる!」



緑色の方が翡翠ひすい

青色の方があおいらしい。


双子は周りを警戒しながらも走り続けた。




やがて大きな鳥居が3人の目の前に現れた。

その中に誰かが立っている。

その姿を認識すると、双子はほっとしたように息を吐き出した。



「師匠!」

「翡翠、蒼…無事で良かった!早く此方へ!」



倒れ込むように3人は鳥居の中に入った。

踏み込んだ瞬間、暖かい膜のようなものが体を通り抜けるのを端樹は感じた。



「ようこそ、端樹蓮さん。無事で何よりです…」

「何…で、私の…名前…ここは…?」

「話は後です。先に手当てさせて戴いてよろしいですか?」



見上げた男は袴姿だった。

顔の半分は真っ白な包帯に覆われている。

その隙間から覗く片方の目には細長い猫のような瞳孔。

それは明らかに人間のものではない。

ただ耳に響く声はとても優しく、恐怖は全く感じなかった。




「翡翠、蓮さんを寝室へ。」

「はい」



再び翡翠に抱えられた。

今度は先ほどとは違いゆっくりとした歩調で端樹を運ぶ。



「ここは大丈夫だから…」

「うん…」

「ゆっくり寝なよ、どのみちしばらくは動けないからさ」

「ありがとう…翡翠さん…」



安心感に重くなる瞼。

端樹は翡翠の腕の中で意識を手放した。













(狩谷視点)


「くそ…どうなってる…」

「……」



教室に居たはずが急に意識がなくなり、目が覚めたと思えば誰も居ない体育館だ。

いや、正確に言えば誰も居ないわけじゃない…



「北森」

「何?」

「何?じゃなくて…この状況どうも思わねぇのかよ」



一番会話出来なさそうな奴と二人きりだ。

気まずいどころの話じゃない…


「焦っても…仕方ないし」

「そうだけどよ…」



元々俺だって喋る方ではない。

北森は俺以上に無口の様だが…

状況が状況だ。

一人よりは二人の知恵を絞り出した方が良いに決まってる。良いに決まってるんだが…

ちらりと横を見ると相変わらず何を考えてるのだか分からない北森の無表情。

と、思えばそいつはいきなり口を開いた。



「あ」

「どうした?」

「家に帰る」



一気に脱力した。

何て言えば良いのか…

ドが付くマイペースだな…



「北森…状況みて物を言えよ?」

「見てる」



俺の存在なんてまるでないかの様に北森はさっさと立ち上がって体育館の出口に向かって行ってしまった。

そのまま出ていくのか…と思いきや北森の動きはピタリと止まる。



「狩谷、遅い」



どうやら待ってくれてるらしい。

読めない奴だ…



「俺の家に行けば、ちょっとは状況わかるかも」

「お前の家って?」

「神社。書庫もあるはず」



なるほど。

北森の言うことも一理ある。

何も考えて無いようで結構色々考えてるんだな…



「今、失礼な事考えた」

「!」



じとり、と睨まれる。

心の内を読まれた事に少々驚いたが、コイツならそんな事すら簡単に出来そうだ。

とりあえず両手を上げて降参のポーズをとってみる。



「悪い」

「別に良い」



また無表情に戻ると北森は今度こそ振り返る事なく体育館を出ていった。


ふと端樹の事を考える。


大丈夫だろうか…

気を失う前にみた光は明らかに端樹から発せられているように見えた。

アイツも同じ空間に飛ばされているのだろうか…



考えれば考えるだけ益々この不可解な現象に頭が痛くなってくる。


俺の頼りは話したことなんて無い無口な陸上部員だけ。

今はそれにすがるしか無いのだ。


頭を軽く振って嫌な考えを追い出す。

随分遠くなってしまった北森の背中を追い掛けるべく一歩を踏み出した。





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