3:奇襲
(瑞樹視点)
頭が割れるように痛む。
少しずつ浮上していく意識。
ゆっくりと手を着いて身を起こす。
「みんな…?」
妙な違和感が拭えない。
先程意識がなくなる前は教室に居たはずだ…
ヒロくんと一緒に教室へ向かって
直くんと何時もの様に喋って
北森くんと初めて言葉を交わして
水無瀬くんに敵だと宣言されて
キヨくんが辞書を借りに来て…
それから…
それから?
「何でこんなとこに…」
ここは確か何時も通学する時に通る陸橋の上。
立ち上がって橋の下を覗き込んでみた。
そして感じていた違和感は益々強くなる。
「どういうこと…?」
覗き込んだ大通りの道路は何時もと同じ風景なのに。
大きく違うのは人が誰も居ない、という事だ。
いや、人だけじゃない。
平日ですら渋滞する道路に車の姿は一台も無かった。
「何で…」
「それはね、」
答なんて返ってくるはず無いと思っていた。
なのにその声は自分のすぐ背後から聞こえている。
身の危険を感じ、無意識に背後の気配から距離をとる。
「なかなかの反射神経ね。」
妖しげで、どこか蠱惑的な香り。
視界の端で黒い絹糸の様な髪が揺れたのが見えた。
「誰?」
「そうねぇ…アナタ達の影…とでも言っておこうかしら。」
日本人形のような着物姿にとても整った顔。
白い手の中には毬を抱いている。
ぽーん、と一度女はその毬をついて見せた。
「アナタが白星ね…まさかいきなりアタマに出会えるとはね。」
「何…どういうこと…」
「ふふ…全然状況が理解出来てないみたいね」
地面についた毬が跳ね上がる瞬間何かがきらりと光った。
何かは分からないけれど危険だと、本能が悟る。
「教えてあげるほど私はお人よしじゃないわよ?」
じり、と一歩後ずさる。
狭い陸橋の上、逃げ場なんて直ぐになくなる。
案の定、すぐ背中に感じる手すりの感触。
「取り敢えず死になさい」
すっと女の手が体の前でクロスされ、先程の毬が凄い勢いで飛んでくる。
飛んできているのがただの毬なら叩き落せば良い。
でもそんなのは甘い考えだったみたいだ。
毬の側面から出ているのは先ほどきらりと光っていたもの…
どう見ても刃物だ。
それを認識した途端、反射的に身体を横に捻っていた。
「ッ!!」
肩に鋭い痛みを感じた。
掠っただけなのに…
傷口が焼けたように熱くなってくる。
「ちなみに、この毬の中には色んな毒が仕込んであるから。」
「あ…っぐ…」
「今アナタが喰らったのは痺毒。体が言うこときかないんじゃない?」
確かに体が他人のものの様に動かせない。
足から力が抜けて座り込んでしまう。
嫌な汗が背中から出てきて冷たくなっていく。
生まれて初めて感じた命の危険。
再び女の手が振り上げられた。
自分目掛けて真っ直ぐ飛んでくるボールに思わず私は目を閉じた。
「!!」
「危ない!!」
キン‥!
金属同士がぶつかり合ったような高音。
急に影が射したかのように暗くなる視界。
重い瞼を持ち上げるとそこにはククリ刀で毬を受け止める2人の青年が居た。




