魔物を倒そう!
個人的なことで更新ペースは遅いですが、まったり読んで頂ければ有り難いです。
こういう展開にしてほしいな、こういう人を出してほしいな等の意見がありましたら、気軽にコメントして下さい。自分の考える小説の展開に合えば、採用させて頂きたいと思っています!
ユーキは人々が逃げ惑う中、先程の老人を走って探す。
どれだけ走っても疲れはなく、ずっと全速力で走り続けていた。
もうすぐ村の入口付近になるのだが、老人は見つからない。
もしかしたら、いち早く気付いてもう逃げているのかもしれない。
それならそれで良いのだが。
そんな事を考えていると、30m先に先程の老人が見えた。
見つけた。
「おじいちゃん!!」
ユーキは叫ぶと老人にすぐさま駆け寄る。
「おお、先程の若者か。ふぉふぉふぉ」
「いや、笑ってる場合じゃないでしょ、おじいちゃん!?」
「なに、この程度。どうって事ない。ふぉふぉふぉ」
いやいやいや、この程度って…。
おじいちゃん勇者かよ…。
もしかしたら、おじいちゃんだから考える能力が衰えているのかもしれない。
有り得る。
「早く行かないと魔物がくる。俺がおんぶするから、乗って!!」
「本当に大丈夫なんじゃがな…」
老人はそう言いながら、渋々ユーキの背中へ乗る。
ユーキは老人を担ぐと、村人らが逃げる方へと走る。
一時走っていると、村人らが沢山集まっている場所へ辿り着いた。
村の広場のような所だ。
そして、村人らを護るように、何か透明の膜の様なものが張られていた。
ユーキは老人を地面へ下ろすと、その膜の様なものに触れようとする。
だが触れようとした手は膜を通り抜ける。
これはなんなのだろうか。
ユーキは不思議に思い、何度も膜を触ろうと試みるが、結果は変わらなかった。
「そこのじいさんと、さっきのお兄さんも中に入りな。結界の中なら魔物も入ってこないぜ。」
そうユーキ達に喋りかけてきたのは、先程村長に報せをしに来た少年だった。
これが結界なのか。
初めて見たけど、すごいな!
「あ、俺はいいです。それよりこの老人を中に。」
まだ魔物とは戦ったことはないが、ユーキは今は吸血鬼だ。
こんな自分でも多少は役に立つだろう。
そういう理由からユーキは入口方面へ向かう事を決めた。
現にユーキは、人間だった頃とは比較にならない程、身体能力が高い。
加えて、村へ向かう途中、自分の吸血鬼の体の力がどのくらいあるのかが気になり、近くにあった自分よりも大きい岩を見つけ、持ってみた。
流石に上がらないだろう、と思いながら持つことを試みたユーキだったが、それは予想をはるかに超え、発泡スチロールを持つような感覚で持てたのだ。
単純に、そういった特性を岩が持っていることも考慮したが、流石にそれはないなという結論に至った。
別に吸血鬼が力が強くても可笑しくはない。
「なんだ、村長から旅人って聞いたけど、お兄さん戦えんのか?」
「はい、多分。」
「た、多分って…!ゴブリンだからって舐めすぎだぞ!初心者の冒険者だって、年間何人ゴブリンに殺されてると思ってんだよっ!それにお兄さん旅人だろ、尚更やめとけって!」
うん、ごもっとも。
少年の言っていることは正論だ。
普通に『前世』の私だったら、少年と同じ考えだし、すぐ結界の中に入るだろう。
でも、なんかさっきから可笑しいんだ。
体の奥底から戦いたいって気持ちが溢れ出て来る。
ユーキは初めての感情に戸惑いながらも、わくわくしていた。
命のやり取りをしている状況でこんな感情が込み上げて来るのは正常ではない。
自分でも理解しているのだが、それでも…
ユーキは一度少年の顔を見る。
「な、なんだよ。」
見つめられ、少年は戸惑う。
「気遣いありがとう。でも、大丈夫です。」
そう言うとユーキはくるっと体を捻り、全速力で入口へと走った。
「あ、おい!!」
後ろから少年が何か言っていたような気がするが、ユーキは後ろを振り返ることはなかった。
ーーーーー
ユーキが去った後、少年ことリューは唖然として、突っ立っていた。
「な、なんなんだよ。あのお兄さん。」
命が惜しくねーのか?
変な奴。
「おい、リュー。そろそろ行くぞ。」
そう言い、リューに話しかけて来たのはリューと双子のシューだ。
リューとシューの2人は双子でDランク冒険者だ。
冒険者は1番下のFから1番上のSランクまである。
ちなみにゴブリンはEランク冒険者が相手するような魔物で、現にリューとシューは何百回もゴブリンを相手にしたことがある。
だがシューとリューは、村人たちの保護を優先していた。
村人達は魔力はあっても、戦うまでの魔力はなく、丸腰だったため、村人達だけでも結界を安定して張れるまで手伝っていたのだ。
ようやく結界も安定し始め、シューからリューへと入口方面へ向かおうと声を掛けたのだった。
「そうだな。」
リューがそう答えると、2人は一緒に走り出す。
「リュー、ゴブリンの大群って言っても60匹程度だろ?」
「ああ、ゴブリンを倒せる人は30人はいるし、すぐに片付くだろ。」
「そうだな。」
シューの言う通り、今回ゴブリンは60匹ほど。この村の人々だけで戦える数だ。
ただ、何かリューは違和感があった。
何故急にゴブリンがこの村に攻めてきたのかだ。確かにこの村は家畜も農作物も豊富だ。しかし、今までゴブリンが大群で攻めてきたことはほとんど無かった。攻めてきたとしても、寒い時期など、食料が不足する時だけだ。ましてや今は寒くない時期だ。そこら辺にも沢山食料はあるはずだが…。
リューは、消えない違和感を消せないまま入口を目指す。
戦いながらあのお兄さんも探さないとな。
心配だし。
それにしても、旅人の割にやけに走るの速かったような…。
まあ身体強化のスキルとか使っているのだろう。そう考えれば、珍しくもないな。とリューはあまり気にしなかった。
ーーーーー
そしてユーキは入口へと到着する。
そこでは村人達が、村長であるデュオの指示に従い、ある人は矢を射ったり、またある人は剣で戦ったり、怪我人を魔法で癒したりしていた。
そんな中、ユーキはある1体のゴブリンを目で捉える。
そのゴブリンは人型の1mもないくらいの体躯で皮膚は緑。腰辺りに茶色の布切れを巻いている。武器は槍のような物を持っていた。蛇のような瞳に大きな目、口は引き裂けたかのように大きく、ガタガタの鋭い歯が見えている。魔女のような鼻は何かの匂いをクンクンと嗅いでいる。
ユーキはそのゴブリンへと駆け出し、至近距離まで近付くと、その体を自分の手で貫く。
「ウギャッ!」
ゴブリンは突然の事に驚き、体を貫かれた痛みで思わず声を上げる。
ユーキはゴブリンの体から自分の手を引き抜きくと、無造作に投げ捨てる。
そして、無意識にゴブリンの血液が付着した手を、口元へ運び舌で舐める。
「あれ、なんで舐めて…。ていうか、あまり美味しくないな。」
ゴブリンの方へと意識を向けると、未だに目を薄っすら開き、ユーキの方を見て苦しそうな息遣いをしている。
「苦しいよね。大丈夫。すぐに楽にしてあげる。」
そう言うと、手に力を込め、ゴブリンの頭蓋を鷲掴みにし、地面に叩き付け潰す。
グチャッという潰れる音がするのと同時に、ゴブリンの頭の中身が飛び散り、ユーキにも付着する。
この世界に転生して初めて…否。
前世も含め、初めて知能のある生物を殺した。
しかし、何も感じない。
ユーキは、こんな事をしても冷静な自分を嫌厭するが、殺した事に対し何も罪悪感が湧かない。
それどころか、戦いたいという感情が増すばかりであった。
一体自分はどうしてしまったのたのだろうか。
まあいいや。
ユーキは顔面に付着したものを、手で拭い落とすと、次のゴブリンへと標的を移した。
そして先程のゴブリンの様に次々と殺していく。
最早、殺していく事に関して考えることはなかった。
まだ続きます。
なんか、違う方向へ主人公が向かって言っているような。