情報収集をしよう!
前回
村に向かって出発したようです。
※内容を変更しました。
砂埃が舞い、至る所で魔法の弾丸が飛び交う中、屈強な身体の、40代であろう強面の男性が大声で叫ぶ。
「シューとリューは非戦闘員を連れて、街を目指せ!!」
「「はい!!」」
シューとリューと呼ばれた、10代後半であろう2人の少年らが返事をする。
そして、すぐさま2人の少年は行動を開始する。
強面の男性はそれを確認すると、今度は戦闘員に叫ぶ。
「他は、ここから絶対に1匹たりとも通すな!!」
「「「おおっーー!!!」」」
他40人程の男女は強面の男性に応えるように叫び、目の前に映る光景に怯むことなく、立ち向かって行く。
そんな戦場といえる場所に、私ことユーキはいた。
「な、なんだよこれ…!」
「ちょーーー楽しい!!!!」
次々と襲い掛かって来るゴブリンらを出来る力の限り、潰す、投げる、身体を貫く、焼き尽くす等の動作を繰り返し殺す、殺す、殺す。
ユーキはそんな戦いの中、絶対に前世の普通の女子高生ならしない、喜びに満ちた顔をしていた。
内臓を潰す感触や、その時に自分に飛んでくる返り血、至る所から聞こえてくる断末魔、あらゆる所に倒れている死体の異臭。
前世では有り得ない経験をする中、それでも敵を殺す手は止めなかった。
その度に、
『経験値獲得』
という言葉や、たまに
『Lvが上がりました』
等の機械音の声が脳内で繰り返し再生される。
だがそれでも無我夢中で敵を殺していく。
楽し過ぎてやめられない。
ーーー時は、1時間前まで遡る。
ユーキはヘルゼから教えてもらった通り、この辺りで一番高い山の方向に3時間程歩き、ある村に辿り着いた。
そこは思ったよりも広大な村で、牛や羊に似た家畜が沢山おり、耕作も盛んのようだ。
周りは4mほどの丸太の壁で囲まれている。
この規模から考えて、150人は住んでいるだろう。
この村に来た理由として、まずは情報収集。
次に宿と食料確保だ。
下手すれば、面倒な事になりかねないから、この世界の情勢について知る必要があるし、宿がないと安心して寝ることが出来ない。
起きた時からずっと食べ物を口にしてないためか、お腹も減ってきた。
まずは村人を探さないとね。
一時辺りを歩いていると、第一村人を発見した。
「あの、すみません!」
第一村人の老人に声を掛ける。
「ん?なんじゃ、見ない顔だの。」
老人は物珍しそうに私を見た。
「え、あ、わた...じゃなくて、俺旅人でして、この辺りで一番、この世界について詳しい人を知りませんか?」
私って、旅人でいいのかな。取り敢えず一時は旅人って名乗っとこ。
「詳しい人じゃと?それなら、村長が一番じゃな。連れてってやるから、付いてきなさい。」
なんて優しいおじいちゃん。
教えてくれるだけじゃなくて、連れて行ってくれるなんて!
と感激しながら後を付いていく。
しばらく歩いて行くと、ある家の前で止まる。
「ここが村長の家じゃ。この時間は家にいると思うからな、分からない事は聞くといいぞ。村長は良い人だからの。ふぉっふぉっふぉっ」
と言いながら老人はもと来た道を帰って行く。
「ありがとうございました!!」
と私は思いっ切り頭を下げた。
老人の姿が見えなくなった後、私は村長の家の扉をノックする。
しばらくした後、扉が開いた。
中から、2m近くはあるであろう屈強な身体に、強面の男性が姿を現した。
「なんだ、見ない顔だが。」
睨み付けられながら、図太い声で言われる。
「は、はじめまして。俺は、旅人のユーキっていいます。聞きたいことがあったんですけど、おじいちゃんから、それなら村長に聞いた方が良い、と言われ訪ねた次第なんですが‧‧‧。」
相手の眼に圧倒され、自然と早口になる。
お、怒ってるのかな?
「忙しいようでしたら、すぐに帰ります!!」
失礼しますと言い、帰ろうとする。
「いや、待て。旅人か!話があるなら家の中で話そう!!」
そう言うと、村長はガハハと大声で笑った。
ーーーーーーー
私は家の中に案内された後、木で作られた腰辺りの高さの4人用のテーブルに据えられている椅子に腰を掛けていた。
「さっきは、睨み付けてすまんかった!」
ガハハと笑いながら、飲み物を持ってきて、私の前に置いてくれた。
飲み物は色と香り的に、お茶なのだろう。
そして、私と向き合うようにドカッと椅子に座る。
「最近、魔獣だけじゃなくて、盗賊も多いから警戒していてな。」
「そうなんですか?大変な時にすみません。」
「いやいや、俺達こそ旅人が来てくれて嬉しい限りよ!!」
あの老人が言っていた通り、顔は強面だが良い人のようだ。
「俺はデュオ。昔は冒険者をしていたが、引退して、今はここの村長をやっている。」
冒険者か、カッコイイなぁ。
前世ではあまり聞かない職業だ。
「改めまして、俺は旅人のユーキって言います。」
一通り、自己紹介を済ます。
「ユーキか。聞きたい事ってなんだ?」
デュオは早速本題に入る。
「あの、俺、旅人って言っても最近旅を始めたばかりで、世界情勢について全然知らないので、教えて頂きたいんです。」
よく私こんな嘘を次々吐けるな、と自分に感心する。
「ほぉ、なったばっかりか!んー、世界情勢って言っても、広範囲過ぎるな。何から知りたい?」
「えっと、この国と周辺国家の関係?です。」
「関係か。そうだな、、、」
とデュオが喋ろうと口を開いた時だ。
ガタガタガタ
ん?机が揺れてる?
否、地面全体が揺れている。
と、急に扉がバンっと音をたてて開き1人の少年が入って来た。
「村長!!大変だ、来てくれ!ゴブリンの大群が攻めてきた!」
「何っ!?」
少年の話しを聞いたデュオはすぐさま立ち上がった。
「悪い、ユーキ!話しは後だ!!」
と言うと、デュオは少年と一緒にすぐに家を飛び出した。
え、え、どうなってんの。
私どうすれば‧‧‧。
外では村人の悲鳴やドンッという爆発音がする。
と、と、とにかく、外に行かないと!
落ち着け私。落ち着け。
こういう時に冷静を失ったらダメだ。
まず一番大切なことは、状況を知ること!
私は家の外に出る。
すると、村人らが逃げ惑っていた。
親は子の手を引き走り、武器を持っているものは村の入口に向かって行っていた。
入口方面には、先程私を村長の所まで連れて行ってくれた老人の家があったはずだ。
行かないと。
自然と足が入口方面に向かう。
「おじいちゃん、無事でいて‧‧‧!」
私は全速力で走る。
続きます