変身魔法を使おう!
前回
ステータスを確認しました。
「さて、基本的な事は大体分かったじゃろう?」
ひと通りの話が終わり、ヘルゼはユーキに尋ねる。
「はい」
「妾はこれから向かう所がある。個人的に、お主とはまだ話したいことがあるが、もう行かねばならん。」
ヘルゼさん、これから行く所があるのかぁ。
引き留めてしまって本当に申し訳ない。
今度会った時、ケーキを欲しいだけ奢らねば!
ヘルゼはユーキとまだ話したかったと落ち込んでいるらしく、肩を落としている。
20歳くらいのお姉さんの見た目であるヘルゼが、小さい子のようで可愛く感じる。
「ヘルゼさん、可愛いですね。」
あ、いつもの癖で、思ったことをつい口に出しちゃった。
失敗したなと思って反省する。
これは直した方がいいと周りの人達によく言われたものだ。
特に今は男なのだ。
これじゃ、初めて会ったお姉さんを口説くチャラ男じゃん。
ヘルゼの顔見ると、みるみるうちに赤く染まっていく。
「なっ...!妾が、可愛いなど...」
最後ら辺は、もごもごと喋って聞き取り辛かったが、どうやら照れているようだ。
やっぱり可愛いなー。
この可愛さは反則だよね!
これは男女関係ないわ。
ヘルゼはごほんと咳払いをして平静を取り戻す。
「兎に角だな、妾は行かねばならんのでな。もうそろそろここを出発しようと思うのじゃが、他に聞きたいことはあるか?」
いやもう、ヘルゼさんまじ私の神様、仏様だ。
「いえ、特にありません。ヘルゼさん、本当にいろいろお世話になりました。」
「何、構わぬ。妾は生まれて間もない同族を、放ったらかしにする程、腐ってはおらぬ。あ、そうじゃ。」
ヘルゼは何か思い出したかの様に言う。
「人族には、吸血鬼を良く思っておらぬ輩もおるようじゃから、吸血鬼特有のその銀髪や赤の目や牙を隠した方がいいぞ。」
ああ、前髪がやけに白髪だと思った。
これ銀髪なんだ。
目は赤色か。
前世には無い色だな。
やっぱり、牙ってあるんだ。
自分の舌で歯をなぞってみると、確かに尖った形の歯がある。
そういえばスキルにあった変身魔法って使えるんじゃ…。
さっき聞きたいことは無いと言ったが、新たに疑問に思ったことを聞いてみる。
「ヘルゼさん、変身魔法で髪色とかって、誤魔化せたり出来ますか?」
「変身魔法持ちか。出来るぞ。ただ、半日程しか保たんから、そこは気を付けた方が良い。ちなみに変身魔法は、なりたいものを頭の中でイメージして、何かてきとうに唱えとけば、イメージしたものになれるぞ。」
てきとうって、何でもいいのかな?
「なるほど。」
早速使ってみよう。
髪色と目の色と牙が問題なんだよね。
取り敢えず、黒い髪に黒い目に、前世のような歯をイメージしてみる。
そして
「へんっしんっ!」
と、子供の頃によく観ていた仮○ライダーが、変身する時によく使っていた言葉を唱える。
少し幼稚過ぎたか?
「うむ、見た目は人間の様じゃな。」
ヘルゼは詠唱については、特に気にしていないようだ。
変身魔法については成功したようだ。
「では、妾は行くぞ。また会おう。ユーキよ。」
ふっとヘルゼは微笑む。
「はい、ヘルゼさん。」
「飛行」
ヘルゼはユーキの返事を聞くと、飛行魔法らしきものを唱え、みるみるうちに上空に飛んでいった。
ヘルゼの姿を見送った後、ユーキはヘルゼが教えてくれた方角を目指し歩きだすことにした。
ん?
吸血鬼って日光大丈夫なのだろうか?
前世と吸血鬼の特徴について、特に違いは無かったのだから、日光に弱くても可笑しくは無い筈なのだが。
まあそこは、前世と今世の違いなのだろう。
分からないものは考えても分からないのだから、そう捉えておこうと思うユーキだった。
村まで10kmなら、あと3時間もかからずに着くだろう。
それならと、ユーキは歩きながら、今の内に、自分の持つ他のスキルがどんなスキルなのか、実際に使ってみて、把握しておくことにした。