ブリキと植木鉢と鉛色
※キチガイです。
鉛色の空が迫ってくる山の上、そこには一つの植木鉢がありました。
植木鉢には一輪の花……赤いゼラニウムが咲いていた。
雲が迫ってくる為、風が強く今にも花びらが飛び立ちそうな感じがあった。
そこに、一体のブリキの玩具が歩いてきた。
ブリキの玩具は太鼓を叩き、口にはラッパ、背中にはパイプオルガンを背負ってゼンマイをどうにかしながら植木鉢の方向に進んでいた。
余り大きくなく、大きさ的にはバッタ位であった為に風に飛ばされ何度も何度も転がっていた。
「僕は、あの子と共にあるのだ」
ブリキの玩具は太鼓をトントコと叩きながら進んだ。
あの子――植木鉢と共にいる為に。
「僕は風なんかに負けないぞっ」
ブリキの玩具のやる気は完璧だった。
どこまでも追い続けていたあの子がもう手の届く範疇にあるということだけあって、もう、待つ事はできなかった。
「あの子の為に……僕はどうなっても良いのだ……さあ行くぞ」
意気揚々と山を登ってくるブリキの玩具に対して、植木鉢は何も言わずにただ、そこにあり続けた。
「植木鉢は私のものだ」
そう言い残すと山の上の上から鉛色の空が風をひょうふっとぞ放ってきた。
その風によってブリキの玩具は山を転げ落ちていった。
「わぁぁぁぁぁぁ、畜生ぅ」
強風に対して成すすべは無くどんどんブリキの玩具は山の下へと落ちていった。
ガンッという音と共にブリキの玩具は山に埋もれて頭だけを出していた岩に当たり止った。
「イテテテ、僕はあの子の所に辿り着くのは不可能なのだろうか?」
ブリキの玩具は半泣きだった。
太鼓とバチの間は泥が挟まって音を出す事が出来なくなり、ラッパは無くなり、パイプオルガンに至っては、破裂して原形をとどめる事が出来なくなっていた。
「もうダメなのか」
そう呟いた時鉛色の空が更に追い討ちをかけてきた。
「これで終わりだぁぁぁ」
鉛色の空は台風程度の風で岩と風でブリキの玩具のサンドウィッチを作ろうとしていた。
その時、余りにも強い風が吹いたために、その力で植木鉢が坂を滑り落ちた。
植木鉢はゼラニウムを上手に使って、ブリキの玩具を回収して自分の上に載せた。
「えっ?」
ブリキの玩具がそんな顔をしていると、植木鉢が話し出した。
「私、勇敢な貴方が好きなの」
ブリキの玩具も応答した。
「僕も、君の事が好きなんだ」
お互いに思いを伝え合った植木鉢とブリキの玩具は幸せな将来に向かって進んでいくのであった。
「良いとこ取りしやがってぇ」
鉛色の雲は自分の行いに悔いながら晴れていくのであった。
この小説はとある方に三つのお題を出して貰いそれを元にして書いています。
恋愛小説になっているのは私が短編で最速に書けるからです。
頑張ります。