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短編集〜ワンライ〜  作者: 山芋娘
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いつもと同じでいい、同じがいい。

pixiv URL:http://touch.pixiv.net/novel/show.php?id=6838299


お題【いつもと違う】

 

 お題【いつもと違う】




 6時30分。

 お気に入りの音楽で、アラームが鳴る。

 布団の中から、手を伸ばしアラームを止めると「ん〜」と、声を出しながら布団から出てくる。

 彼女の名前は清水晴美、高校2年生。

 いつもと同じ日常を、望んで毎日を過ごしている。


「晴美〜、お母さん先に出ちゃうわよー」

「ん〜……いってらっしゃーい!」

「ちゃんと、起きなさいよ。いってきまーす」


 晴美の部屋に入ってきた母が、未だに布団から出てこない晴美に声を掛け、仕事へ出る。

 晴美は、しばらく布団の中で寝転んでいると、再びアラームが鳴る。

 それをきっかけに、晴美は動き始める。

 着替えを済ませ、リビングに行くと母が作っておいてくれた朝食がある。


「ベーコンに目玉焼き、ご飯はチンして、お味噌汁も温めてっと」


 手際よく用意すると、1人で朝食を食べ始める。

 テレビでは、最近起こったコンビニ強盗事件の報道がされている。


「コンビニ強盗事件しても、すぐ捕まるのに」


 ズルズルと味噌汁と飲み干すと、少しテレビを見続け、時計が7時10分を指したのを見て、慌てて洗顔や歯磨きをし始める。



 7時27分。

 家を出ると晴天の空が広がる。自転車に乗り、駅へ向かう。5分ほどで着くが、いつも全力で走って向かう。



 7時32分。


(よし、いつもと同じ!)


 電車が到着するまで5分ほど。晴美は駅のコンビニで飲み物とお菓子を買うとホームへ向かう。



 7時37分。

 電車が駅に到着し、38分に発車する。

 3両目の前から2つ目の扉から入り、すぐの椅子の端に座る。


(いつもと同じ)


 少し離れた所に同級生の神崎彰が、いるのが見えた。


(うん、いつもと同じ)


 晴美の地元の駅から3つ目の駅に到着する。そこから乗ってくるのは、別の高校の男子生徒。晴美の向かい側に座る。

 彼は黄色い音楽プレーヤーを使い、黄色いイヤホンを着けている。

 晴美は、彼のことをチラッスマホ越しに見る。


(いつもと、同じ……)


 何かを確認するかのように、晴美は彼のことを見続けている。

 晴美が降りる駅まで残り2駅。それまで晴美は彼に気付かれないように、見ている。


(もう着いちゃった)


 晴美は、立ち上がると高校のある駅で降りる。







 6時30分。

 お気に入りの音楽で、アラームが鳴る。

 布団の中から、手を伸ばしアラームを止めると「ん〜」と、声を出しながら布団から出てくる。

 彼女の名前は清水晴美、高校2年生。

 いつもと同じ日常を、望んで毎日を過ごしている。


「晴美〜、お母さん先に出ちゃうわよー」

「ん〜……いってらっしゃーい!」

「ちゃんと、起きなさいよ。いってきまーす」


 晴美の部屋に入ってきた母が、未だに布団から出てこない晴美に声を掛け、仕事へ出る。

 晴美は、しばらく布団の中で寝転んでいると、再びアラームが鳴る。

 それをきっかけに、晴美は動き始める。

 着替えを済ませ、リビングに行くと母が作っておいてくれた朝食がある。


「ベーコンに目玉焼き、ご飯はチンして、お味噌汁も温めてっと」


 手際よく用意すると、1人で朝食を食べ始める。

 テレビでは、最近起こったコンビニ強盗事件の報道がされている。


「コンビニ強盗事件しても、すぐ捕まるのに」


 ズルズルと味噌汁と飲み干すと、少しテレビを見続け、時計が7時10分を指したのを見て、慌てて洗顔や歯磨きをし始める。



 7時27分。

 家を出ると晴天の空が広がる。自転車に乗り、駅へ向かう。5分ほどで着くが、いつも全力で走って向かう。



 7時32分。


(よし、いつもと同じ!)


 電車が到着するまで5分ほど。晴美は駅のコンビニで飲み物とお菓子を買うとホームへ向かう。



 7時37分。

 電車が駅に到着し、38分に発車する。

 3両目の前から2つ目の扉から入り、すぐの椅子の端に座る。


(いつもと同じ)


 少し離れた所に同級生の神崎彰が、いるのが見えた。


(うん、いつもと同じ)


 晴美の地元の駅から3つ目の駅に到着する。そこから乗ってくるのは、別の高校の男子生徒。晴美の向かい側に座る。

 彼は黄色い音楽プレーヤーを使い、黄色いイヤホンを着けている。

 晴美は、彼のことをチラッスマホ越しに見る。


(いつもと、同じ……)


 何かを確認するかのように、晴美は彼のことを見続けている。

 晴美が降りる駅まで残り2駅。それまで晴美は彼に気付かれないように、見ている。


(あれ、待って……いつもと、違う)


 晴美は周りの客を見回す。なにかの違和感を抱き、その違和感を探す。


「やめて……」


 晴美は、同級生の神崎がこちらに歩いてくるのを見つけ、後ずさりしていく。

 神崎は、真っ直ぐ晴美を見つめて歩いてくる。

 晴美が「止まって!」と、叫ぶと晴美と神崎以外の者、電車、そして時間が止まった。


「清水!」

「来ないで!」


 晴美が逃げようとした瞬間、神崎が晴美の腕を掴む。どうにか逃げようとするが、神崎の手はとても強く、ひ弱な晴美には解けない。


「清水、清水! こっち向け!」

「いや、いやだ!」

「清水!」

「やめてよ!」

「やめない! こんな……前に進もう」

「いやだ……。あの人が死ぬくらいなら、ずっとこのままがいい……」


 晴美は抵抗することを止め、泣きながら目の前に座っている彼のことを見つめる。

 神崎も晴美と同じように彼を見る。


「清水、いつも同じじゃあ、ダメだよ」

「いいの。いつもと同じでいいの」

「……あいつはもう死んだ。前に進もう」

「……私の、私のせいで」


 その日は、いつもと同じように過ごし始めていた。

 けれど、違うことを晴美がした。それは晴美が彼に話しかけたのだ。そこから何かが狂ったかのように、彼は交通事故に遭い死んでしまった。

 晴美はあの時、話しかけなければ、彼の時間を奪わなければ、もしかしたら事故に遭わずに、済んだのかもしれないと思っていた。

 そして何かに掛かったかのように、晴美の生活はループし始めた。彼のいる日常、いつもと同じ生活を始めた。


「清水、このまま同じことしても、あいつは帰ってこない。所詮、ここは空想だ」

「……私の、」

「俺は、お前に帰ってきて欲しい。一緒にあいつの墓行ってやろう。帰ろう」

「……私、恨まれてる」

「そんなことするような奴だったら、お前は見る目が無かっただけだ。前に進め。俺も一緒にいてやるから」

「……うん」


 電車が動き始めた。

 そして電車は駅に着き、晴美は駅に降りた。










 6時32分。

 お気に入りの音楽で、アラームが鳴る。

 布団の中から、手を伸ばしアラームを止めると「ん〜」と、声を出しながら布団から出てくる。



「晴美〜、お母さん先に出ちゃうわよー」

「ん〜……いってらっしゃーい!」

「ちゃんと、起きなさいよ。いってきまーす」


 晴美の部屋に入ってきた母が、未だに布団から出てこない晴美に声を掛け、仕事へ出る。


「あ、晴美。今日雨降るらしいから、傘忘れちゃだめよ」

「はーい」


 母が戻ってきたと思っていたら、傘を手に出ていった。

 晴美は、しばらく布団の中で寝転んでいると、再びアラームが鳴る。

 それをきっかけに、晴美は動き始める。

 着替えを済ませ、リビングに行くと母が作っておいてくれた朝食がある。


「ベーコンに目玉焼き、ご飯はチンして、コーンスープはお湯を沸かすっと」


 手際よく用意すると、1人で朝食を食べ始める。

 テレビでは、最近起こった芸能人の熱愛が報道がされている。


「へぇー。この2人付き合ってるんだー」


 ズルズルとコーンスープと飲み干すと、少しテレビを見続け、時計が7時5分を指したのを見て、洗顔や歯磨きをし始める。



 7時25分。

 折りたたみの傘を持ち、家を出ると自転車に乗り、駅へ向かう。5分ほどで着くが、いつも全力で走って向かう。



 7時30分。


(よし、ちょっと余裕ある)


 電車が到着するまで5分ほど。晴美は駅のコンビニで飲み物とアイスを買うとホームへ向かう。



 7時37分。

 電車が駅に到着し、38分に発車する。

 3両目の前から2つ目の扉から入り、すぐの椅子の端に座る。


(いつもと同じ……)


 少し離れた所に同級生の神崎彰が、いるのが見えた。

 神崎は晴美に気付かず、大きな欠伸をしている。


(口、大きいな)


 クスリと笑うと、電車が3つ目の駅に到着する。そこから乗ってくるのは、サラリーマン。

 まだ仕事前だというのに、疲れた様子だ。


(今日頑張れば、明日は土曜日。頑張れ、サラリーマン!)


 窓の外から景色を眺めていると、いつの間にか、降りる駅についてしまった。


(あ、着いちゃった)


 晴美は立ち上がると、高校へ向かうために電車を降りる。


「あ、おはよう」

「おはよう、神崎! さっきは大欠伸してたね」

「うわ、見られてた」

「あはは〜」

「あぁー今日、抜き打ちテストとか、なきゃいいなー」

「そうだね」


 駅を出ると雨が振り始めた。


「うわ、マジかよ!」

「天気予報では、言ってましたよ」

「俺、見てねー」

「天気予報くらいみなさいよ」


 晴美は折りたたみの傘を鞄から出し、開くと神崎を入れる。


「ほら、行くよ」

「サンキュ」


 いつもと違う毎日。だからこそ、生きている。





 おわり


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