こんなの白雪姫じゃない
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お題【白雪姫】
大学の授業の際に考えたお話です。
お題【白雪姫】
昔、色々な絵本を読んでもらったことがある。
ピーターパンにシンデレラ、親指姫にかぐや姫。
やっぱり、お姫様の出てくる作品は、面白かった。何度も何度も読んでもらい、字が読めるようになってからは、自分1人で読んでいた。
それくらい童話は、好きだった。
高校生になってからは、ハリウッドで実写映画するようになっているくらいのものだった。
夜、雪子は何気なしに本棚を漁っていた。
夜ふかしはあまりしないタイプだが、今日に限って眠気が全然来ないのである。
「本でも読んで、時間を潰そう」と、呟きながら、本を探す。
そして見つけたのが、白雪姫だった。
「白雪姫かー。継母からは嫌われて、殺されちゃう。それ以外の人からは愛されてるからいいよなー」
雪子はそんなことを呟きながら、パラパラとめくっていく。
継母に、狩人。小人に王子様。
「継母は嫌いだったなー。でも、やっぱり王子様は現れてほしいな」
雪子は絵本を読みながら、ベッドに横たわる。そして、いつの間にか、眠りについてしまった。
雪子が目を覚ました時、そこは見知らぬ天井。辺りを見渡しても、やはり見知らぬ所。
「ここ、どこ?」
雪子はベッドから出ると、部屋の中を散策し始める。そこは絵本などでよく見かける、いかにもお城の部屋なのである。
部屋から出ると、メイドらしき人物たちが忙しそうに仕事をしている。
そのメイドたちは、雪子の姿を見つけると「おはようございます」と、深々と頭を下げていく。
「え、なにここ? どこなの?」
雪子は混乱しながらも、お城の中を歩き回り始めた。
すると、ある部屋から声が聞こえてくる。
「鏡よ、鏡。この世で一番美しいのは、誰?」
少し開いた扉から覗きみると、白雪姫の絵本に登場するようないかにも悪そうな女性が鏡に向かって、話しかけているのである。
「それは、雪子姫様でございます」
「……なによ、それ」
「雪子姫様こそ、この世で一番の美しきお方」
部屋の中で、鏡に向かって話しかけていた継母は、怒り狂い鏡向かって、怒鳴りつけ始めていた。
「これって、白雪姫のお話? もしかして読みながら寝ちゃったから、白雪姫の夢を見ているの!?」
雪子は、「ならば」と思い、自分からお城を出ていくことに。
一方、鏡に話しかけていた継母は、「どうやったら美しくなれるの!? いい美容法を教えなさいよ!」と、鏡に怒鳴っていた。
お城を出た雪子。
「森の中に行けば、小人の家があるはず! そして、継母に殺されかけて王子様のキスで……キャーッ」
雪子は1人、森の中を歩きながら妄想に浸っていた。
しかし、歩いても歩いても、小人の住む家は見つからない。それどころか、人っ子1人のいないのである。
「ん〜、小人の家ないなー。あ、どっかで死んだフリしたら王子様来るかな?」
何を思ったか雪子は、森の開けた所へ出ると、ちょうど倒れられるような所で、仰向けに寝転がり、王子様を待ち始めた。
「……来ない」
待てど暮らせど、王子様どころか小人すら現れない。
そんなことをしていると、遠くから他人が歩いてくる音がしてきた。
「王子様!? やっと来てくれた〜」
そんなことを小さな声で呟きながら、目を瞑る。
人の気配が、すぐ近くでする。雪子は目を開けないように、じっと待つ。
「おい」
男の声だ。しかし、王子様にしては乱暴な声のかけ方だ。そんなことを考えながら、目覚めのキスを待つ雪子。
「雪子。おい、雪子! 遅刻するぞ」
「遅刻?」
パッと目を開けると、王子様のような服装をした兄、冬吾がいる。
「え!?」
大きな声を出した、その瞬間、雪子は目を覚ます。
目の前には、制服姿の兄の姿。
夢を見ていた。それは分かっているが、あまりにも酷いラストだったと思い、不機嫌になる。
「雪子、遅刻するぞ」
「……なんで、お兄ちゃんかな」
「なにがだ?」
「なんでもない! ていうか、勝手に部屋入らないでよ!」
「仕方ないだろ、母さんに起こして来いって言われたんだから」
「もう!」
兄妹ゲンカをしているのはいいがら雪子は、ベッド近くに置いてある時計を見て、慌てて飛び起きた。
おわり