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短編集〜ワンライ〜  作者: 山芋娘
37/39

スタート

#創作版深夜の真剣文字書き60分一本勝負

お題【リレー/グラウンド/声援】


お久しぶりの投稿です。

今回は青春を意識しました。

リレーはやっぱり、スタートの時が一番緊張するですよね!走る方も見る方も!


そんな?お話です^^


pixiv:http://touch.pixiv.net/novel/show.php?id=7193053&p=1




お題【リレー/グラウンド/声援】



 走ることしか出来ない。だから、高校に上がっても陸上を続けた。

 私の専門は100m、200m、400mリレー。いわゆる短距離走だ。どうも長距離は苦手で1000mですら、走り切るのがやっと。だから、短距離を続けていた。

 中学3年間、陸上一筋。1年、2年と関東大会まで出場出来るくらいの実力は身に付いていた。

 3年生最後の大会。この大会で全国大会に行くことを目標にしていた。けれど、県大会予選。普段から緊張強い私はその日は一段と緊張していた。

「ふぅ……。よし、全国……。行く」

 そう仲間内にも話していたのに、私は2度もフライングし、失格になった。

「石川」

「はい……」

「お前の強みはあのスタートダッシュだ。だがな、もう少し音を聞け」

「……はい」

「まぁ、もうこの大会で終わりだ。高校でもやる気あるなら、それを忘れるな」

「はい」

 顧問から言われた言葉は、何度も言われた。3年間で数え切れないほど。なのに、大会に出る度、必ず1度はフライングをしていた。

 中学で陸上は卒業しようか。そんな事を考えながら、大会が終わってからずっと勉強していた。

 けれど、未練があった。中学最後がフライングで、走れずに終わったことが。





 あれから、1年が経とうとしていた。石川花江は、県立の高校に入学し、そして陸上部に入部していた。

「石川ちゃーん! スタブロ持ってきてー」

「はい!」

「雷管は?」

「先生持ってるはずだよ」

「グラウンド貸し切ったので、400mリレーの練習を始めまーす!!」

 人数はそこそこいるこの部活は、マネージャーも有していたが、部員全員でグラウンド整備から何から何まで、行っていた。

 来週には全国大会に繋がる予選がある。部員全員、気合を入れていた。

 けれど、石川は不安が強くなっていった。またフライングをするんじゃないかと思い。

「石川ちゃーん」

「あ、はい!」

「思いっきり、スタートしな」

「え?」

「石川ちゃちゃんのスタートは本当に凄いよ。あんな俊敏にスタート出来るのこの部でも、石川ちゃんだけだよ」

「……でも、先輩」

「ん?」

「フライングばかりしちゃうんですよ」

「いいじゃん」

「え?」

「フライングするくらい、気持ちが前にある。それに、短距離は0.001秒すら惜しい時だってあるんだからさ。スタートでどこまで引き離すかも重要だからね」

 先輩はそう言うと、第2走のスタートラインまで小走りで向かった。

 ここは大会じゃない。練習で出来ないことは、大会でも出来ない。ーー石川は大きく深呼吸をすると、スタートラインに立つ。

 スターターを務める顧問が声を掛けると、1度深々と頭を下げ「お願いします」と声を掛け、スターティングブロックに足をかける。

「音を聞け。空気を感じろ……」

 普段のグラウンドは、サッカー部や野球部なども一緒に練習しているため、ゴチャゴチャしているが、陸上部のために時間を作ってくれる。

 そしてその時間、他部活の部員たちは周りで声援を送ってくれる。これも走る力になる。

 けれど、その声援もだんだんと消えていく。息を呑む音すら、響くくらい静かになる。

「この瞬間が、好きだな……」と、誰かが呟くのすら聞こえてくる。

 そして雷管の音が、空に響いた。



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