スタート
#創作版深夜の真剣文字書き60分一本勝負
お題【リレー/グラウンド/声援】
お久しぶりの投稿です。
今回は青春を意識しました。
リレーはやっぱり、スタートの時が一番緊張するですよね!走る方も見る方も!
そんな?お話です^^
pixiv:http://touch.pixiv.net/novel/show.php?id=7193053&p=1
お題【リレー/グラウンド/声援】
走ることしか出来ない。だから、高校に上がっても陸上を続けた。
私の専門は100m、200m、400mリレー。いわゆる短距離走だ。どうも長距離は苦手で1000mですら、走り切るのがやっと。だから、短距離を続けていた。
中学3年間、陸上一筋。1年、2年と関東大会まで出場出来るくらいの実力は身に付いていた。
3年生最後の大会。この大会で全国大会に行くことを目標にしていた。けれど、県大会予選。普段から緊張強い私はその日は一段と緊張していた。
「ふぅ……。よし、全国……。行く」
そう仲間内にも話していたのに、私は2度もフライングし、失格になった。
「石川」
「はい……」
「お前の強みはあのスタートダッシュだ。だがな、もう少し音を聞け」
「……はい」
「まぁ、もうこの大会で終わりだ。高校でもやる気あるなら、それを忘れるな」
「はい」
顧問から言われた言葉は、何度も言われた。3年間で数え切れないほど。なのに、大会に出る度、必ず1度はフライングをしていた。
中学で陸上は卒業しようか。そんな事を考えながら、大会が終わってからずっと勉強していた。
けれど、未練があった。中学最後がフライングで、走れずに終わったことが。
あれから、1年が経とうとしていた。石川花江は、県立の高校に入学し、そして陸上部に入部していた。
「石川ちゃーん! スタブロ持ってきてー」
「はい!」
「雷管は?」
「先生持ってるはずだよ」
「グラウンド貸し切ったので、400mリレーの練習を始めまーす!!」
人数はそこそこいるこの部活は、マネージャーも有していたが、部員全員でグラウンド整備から何から何まで、行っていた。
来週には全国大会に繋がる予選がある。部員全員、気合を入れていた。
けれど、石川は不安が強くなっていった。またフライングをするんじゃないかと思い。
「石川ちゃーん」
「あ、はい!」
「思いっきり、スタートしな」
「え?」
「石川ちゃちゃんのスタートは本当に凄いよ。あんな俊敏にスタート出来るのこの部でも、石川ちゃんだけだよ」
「……でも、先輩」
「ん?」
「フライングばかりしちゃうんですよ」
「いいじゃん」
「え?」
「フライングするくらい、気持ちが前にある。それに、短距離は0.001秒すら惜しい時だってあるんだからさ。スタートでどこまで引き離すかも重要だからね」
先輩はそう言うと、第2走のスタートラインまで小走りで向かった。
ここは大会じゃない。練習で出来ないことは、大会でも出来ない。ーー石川は大きく深呼吸をすると、スタートラインに立つ。
スターターを務める顧問が声を掛けると、1度深々と頭を下げ「お願いします」と声を掛け、スターティングブロックに足をかける。
「音を聞け。空気を感じろ……」
普段のグラウンドは、サッカー部や野球部なども一緒に練習しているため、ゴチャゴチャしているが、陸上部のために時間を作ってくれる。
そしてその時間、他部活の部員たちは周りで声援を送ってくれる。これも走る力になる。
けれど、その声援もだんだんと消えていく。息を呑む音すら、響くくらい静かになる。
「この瞬間が、好きだな……」と、誰かが呟くのすら聞こえてくる。
そして雷管の音が、空に響いた。




