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短編集〜ワンライ〜  作者: 山芋娘
36/39

涙が金平糖

#創作版深夜の真剣文字書き60分一本勝負

お題【奇病/窓/歩く】より【奇病】



着地地点を決めずに作ってしまったため、あまり良くない作品になってしまいました。

しかし、書いたからには、載せようと思いましたので、投稿します。



pixiv:http://touch.pixiv.net/novel/show.php?id=7153460




お題【奇病/窓/歩く】より【奇病】



 ポロン、ポロンと色とりどりの金平糖が落ちていく。瑠衣が歩いた道を示すように、金平糖はひとつ、またひとつと落ちていく。目からこぼれ落ちる金平糖。これが彼女の病。

 ある日から突然、涙が金平糖に変わってしまったのだ。色とりどりの金平糖が目から流れる涙は瞬く間に金平糖に変わりこぼれ落ちる。

「甘い……」

 初めてそうなった時に、金平糖を舐めてみた。塩っぱい感じはまるでない。本当に金平糖になっているのだ。

 驚きを隠せなかった瑠衣だが、それから人前で泣くことを止めた。涙が金平糖になるなんて変だから。

 そのせいで、瑠衣の性格はがらっと変わってしまった。喜怒哀楽が上手く表現出来ず、ただただ無表情でいることしか出来なくなったのだ。

 笑って泣いても金平糖。怒って泣いても金平糖。いつどこで金平糖がこぼれ落ちるか分からなくなり、ただただただ無表情を貫き通すしか無かった。下手をすると、あくびをして涙が流れると金平糖が落ちてしまうのだから。





 歩き疲れ、泣き疲れ、瑠衣は河原に倒れて空を見上げる。

 ポロンと、またひとつこぼれ落ちた。

「また金平糖……」

 ひとつ金平糖がこぼれるたび、友達を無くしている気がしていた。

 涙が金平糖になる。そんな秘密は誰も知らない。苦しくて辛くて、でも言ったら気味悪がられる。そんな事を考えてしまい、言えなかった。

 けれどそれがいけなかった。苦しくて辛いことを誰も分かってくれない。そんなイライラをぶつけてしまい、友達がどんどん離れていった。

「バカだな、私」

 そう呟くと、更に金平糖がこぼれ落ちた。もうこのままずっと、涙は金平糖なのだろうか。

「瑠衣?」と、声を女の子に声をかけられた。声をかけてきたのは、友達の千恵。

「千恵……」

「どうしたの? こんな所で?」

「いや、何でもない」

「全く……。何でもないじゃないよ! ちょっと前から変になったと思ってたけどさ、なんか悩んでるなら、言いな」

「……言ったら、気味悪がられる」

「このまま、一人ぼっちでいる方がいいの?」

「……私は」

「ほら、聞いてあげるから」と、千恵は瑠衣の隣に座る。

 顔を伏せたまま、瑠衣は涙を堪える。けれど、もう無理だった。ポロン、ポロンと金平糖がこぼれ落ちていく。

「私……。涙が金平糖になるの……」

「ん?」

「だから! 涙が金平糖になっちゃうの……」

 真っ直ぐと千恵のことを見つめながら、涙を流す。ひとつ、またひとつと涙は金平糖に変わっていく。

 瑠衣のことを見ながら、千恵は小さく笑い「なーんだ、そんなこと?」と、瑠衣の頭を撫でる。

「へ?」

「それ、奇病って言われてるけど、一種の感染病だって。ニュースでやってたよ」

「感染病?」

「そう。体内に入り込んだバイ菌を追い出すために涙が金平糖になる感染病」

「……いつやってた?」

「結構前」

「悩まなくていいの?」

「病院行けば治るよ」

「そっか……」と安心したのか、更に涙が溢れ、金平糖がどんどんこぼれ落ちていく。

 その日、瑠衣は千恵とともに病院へ行った。その病院には瑠衣と同じ病の人が多くいた。

 一人で悩み、苦しんだいたことが馬鹿らしく思えた。友達がいてくれたことに感謝し、そして笑顔を取り戻した。




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