ようこそ、サーカス団へ
お題【闇/笑って/空っぽ】より【闇】
主人公が誘拐されてます。
拘束されている描写があります。
ですが、暴力的な表現はないですし、ただお話してるだけです。
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お題【闇/笑って/空っぽ】より【闇】
目が覚めると、目の前は真っ暗闇だった。さっきまできらびやかな場所にいたはずなのに。
岸島玲は今、どこかの場所に閉じ込められていた。椅子に座らされ、両手は背中に回され、なにかで固定されている。
「ここ、どこ?」
と、呟くが近くには誰もいない。やっと、暗闇に目が慣れて来たと思ったら、近くの檻の中には虎が寝ている。
そうだ。サーカスを見に来たんだ。ーー玲はここに来る前のことを思い出した。
友達に誘われ、移動型サーカスに来たことだ。サーカスの公演が終わり、友達と会場を出たのだが、友達はトイレに行ってしまい一人待つことになった玲。そこからの記憶がないのだ。
ここは、サーカスの会場の中なのかな?ーー近くにはいる虎を見ながら、考えていると遠くから足音が聞こえてきた。
カツン、カツンというヒール靴の足音だ。こちらにどんどん近づいて来ている。
玲は身構えた。近づいてくる足音と同時に小さな光も近づいてくるのが見えた。
「誰……」
恐怖心で来ないでほしいと一瞬思ったが、ここがどこだか知るためには、来てもらった方が有難いと思い、息を飲んだ。
目の前に、人が現れた。
「あら? お目覚め?」
「……あれ」
「ふふふ、ここがどこだかわかる?」
「いえ……」
目の前に現れたのは、化粧の濃い人物。左目近くにペイントを入れ、赤い口紅をしている。一瞬、女性かと思ったが、身長は高くガタイがいい。更には声が意外と低い。
確か、あの虎の調教師。ーー玲は調教師を見ていると、調教師が笑い出す。
「ここはね、あの会場の裏手」
「……なんで、私は連れてこられたんですか?」
「ん〜団長の趣味?」
「趣味?」
「そう。まぁ僕は別の女の子が良かったんだけど、その子すぐに帰っちゃったからね」
「あの」
「アンタ、団長に気に入られたの」
そんな事を言われても、玲はなにも納得していなかった。この拘束されている状況も説明してもらいたいと、思い問いかけた。
「アンタが、逃げるかもしれないから」
「逃げるって……。もちろんですよ、こんな事されて」
「まぁ、これから僕たちと一緒に来てもらうよ?」
「嫌です」
「アンタには、拒否権はないわ」
人差し指で顎をクイっと、上げられると不敵な笑みを浮かべられる。
「それにしてもアンタ、ブッサイクね〜」
「は……」
調教師は蔑んだ目で、玲を見てきた。玲は調教師の目に、吸い込まれるかのように見ていた。
「今日から、サーカス団のペット。まぁ雑用係でもしてちょーだい」
「それだけ?」
「うん。人手が足らないのよ」
調教師はそう言うと、手を拘束していた縄を切ってくれた。
「ようこそ、サーカス団へ」
ただ調教師の男の人に指で顎クイしてもらって「ブッサイクね〜」って、言ってもらって、さげすんだ目で見てもらいたかった。
それだけなんです……。
自分の妄想なんです……。
ミュージカル行った時に、お目当ての役者様がこんな感じだったんです。
オネエみたいだったんです。
かっこよくて、美人で……。
妄想が止まらなかったんです……。




