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短編集〜ワンライ〜  作者: 山芋娘
29/39

ようこそ、サーカス団へ

 お題【闇/笑って/空っぽ】より【闇】


主人公が誘拐されてます。

拘束されている描写があります。

ですが、暴力的な表現はないですし、ただお話してるだけです。



pixiv URL:http://touch.pixiv.net/novel/show.php?id=7087076

 



 お題【闇/笑って/空っぽ】より【闇】





 目が覚めると、目の前は真っ暗闇だった。さっきまできらびやかな場所にいたはずなのに。

 岸島玲は今、どこかの場所に閉じ込められていた。椅子に座らされ、両手は背中に回され、なにかで固定されている。

「ここ、どこ?」

 と、呟くが近くには誰もいない。やっと、暗闇に目が慣れて来たと思ったら、近くの檻の中には虎が寝ている。

 そうだ。サーカスを見に来たんだ。ーー玲はここに来る前のことを思い出した。

 友達に誘われ、移動型サーカスに来たことだ。サーカスの公演が終わり、友達と会場を出たのだが、友達はトイレに行ってしまい一人待つことになった玲。そこからの記憶がないのだ。

 ここは、サーカスの会場の中なのかな?ーー近くにはいる虎を見ながら、考えていると遠くから足音が聞こえてきた。

 カツン、カツンというヒール靴の足音だ。こちらにどんどん近づいて来ている。

 玲は身構えた。近づいてくる足音と同時に小さな光も近づいてくるのが見えた。

「誰……」

 恐怖心で来ないでほしいと一瞬思ったが、ここがどこだか知るためには、来てもらった方が有難いと思い、息を飲んだ。

 目の前に、人が現れた。

「あら? お目覚め?」

「……あれ」

「ふふふ、ここがどこだかわかる?」

「いえ……」

 目の前に現れたのは、化粧の濃い人物。左目近くにペイントを入れ、赤い口紅をしている。一瞬、女性かと思ったが、身長は高くガタイがいい。更には声が意外と低い。

 確か、あの虎の調教師。ーー玲は調教師を見ていると、調教師が笑い出す。

「ここはね、あの会場の裏手」

「……なんで、私は連れてこられたんですか?」

「ん〜団長の趣味?」

「趣味?」

「そう。まぁ僕は別の女の子が良かったんだけど、その子すぐに帰っちゃったからね」

「あの」

「アンタ、団長に気に入られたの」

 そんな事を言われても、玲はなにも納得していなかった。この拘束されている状況も説明してもらいたいと、思い問いかけた。

「アンタが、逃げるかもしれないから」

「逃げるって……。もちろんですよ、こんな事されて」

「まぁ、これから僕たちと一緒に来てもらうよ?」

「嫌です」

「アンタには、拒否権はないわ」

 人差し指で顎をクイっと、上げられると不敵な笑みを浮かべられる。

「それにしてもアンタ、ブッサイクね〜」

「は……」

 調教師は蔑んだ目で、玲を見てきた。玲は調教師の目に、吸い込まれるかのように見ていた。

「今日から、サーカス団のペット。まぁ雑用係でもしてちょーだい」

「それだけ?」

「うん。人手が足らないのよ」

 調教師はそう言うと、手を拘束していた縄を切ってくれた。

「ようこそ、サーカス団へ」


ただ調教師の男の人に指で顎クイしてもらって「ブッサイクね〜」って、言ってもらって、さげすんだ目で見てもらいたかった。

それだけなんです……。

自分の妄想なんです……。


ミュージカル行った時に、お目当ての役者様がこんな感じだったんです。

オネエみたいだったんです。

かっこよくて、美人で……。

妄想が止まらなかったんです……。

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