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短編集〜ワンライ〜  作者: 山芋娘
28/39

風に乗って、会いに行く

お題【ドラゴン/超能力/ドールハウス】より【ドラゴン】


ハイ・ファンタジーです。


短編集にあります「風の愛娘」の続編になります。

http://ncode.syosetu.com/n1612dl/2/



pixiv URL:http://touch.pixiv.net/novel/show.php?id=7080600

 お題【超能力/ドラゴン/ドールハウス】より【ドラゴン】




 幼い頃に聞いたおとぎ話がある。

 ある一国の姫は自然に愛され生まれた誕生日を迎える度に風に包まれていた。しかしその風は国に災いをもたらすと言われ、姫は塔の一番上に幽閉されていた。

 姫はそれでも生きていた。処刑されそうになった時、風が姫を守ったと。そして病に倒れ死にかけた時は、風は悲しみにくれ国を崩壊させかけたと。

 王は決断した。姫を永遠に生かすことを。魔法使いに命じ、姫の命は繋がり風も喜び始めた。

 それから、姫の誕生日になると国には柔らかな風が吹き、花で溢れ始めたと。姫は永遠に生き続け、民に愛されている。




 ドゥーダは十七歳になる日に、そのおとぎ話を思い出した。一緒に住んでいるラディアンという羽根が生えたドラゴンが、花を摘んできてくれたからだ。

「ラディアン、ありがとう」

「ドゥルル〜」

「あぁ、気に入ったよ。家に飾らなきゃな」

 ドラゴンと共存する国、サラーシャ。ここでは、人は生涯支え合うドラゴンと共に暮らし、生きていく。

 この国の子供たちは、七歳になる誕生日に生涯支え合うドラゴンの卵を父親から貰う。

 ドゥーダは、生まれてきた白く羽根の生えたドラゴンにラディアンと名付け、共に暮らしていた。

「よし、父さんに頼まれた花の種を買いに行くか!」

「ドゥール!」

「今日は、いい風が吹いてるな〜」

 ドゥーダは、ラディアンの背中に乗る。ラディアンはゆっくりと羽を動かし、宙へと浮かんでいく。

「目指すは、花の国! フラーウィン!」

「ドゥルールン!」

 風に乗るように、ラディアンは羽ばたき、優雅に飛ぶ。

 風の眷属であるドラゴン。風には愛されている。そして、そのドラゴンを愛し、共に暮らすサラーシャ国の人も風に愛されていた。


 フラーウィン国が見えてきた。その名の通り、色とりどりな花に溢れ、人々には笑顔が溢れていた。

 街の近くに降りると、ラディアンが小さく変化した。4mもの大きさを誇るラディアンは、さすがに街に入れない。そのため、ドラゴンたちは小さくなることを覚えた。

 小さくなったラディアンは、両掌ほどの大きさになり、ドゥーダの肩に乗る。

「さて、種を売ってる店はどこかな?」

「ドゥルル?」

「んーあっち行ってみるか」

「ドゥルー!」

 それから、何店出ている店を回っていると、街中に柔らかな風が吹き始めた。そして、空から花が降ってきた。

「おや! 今日は姫様の誕生日だったね」

「姫様?」

「坊やは聞いたことあるかい? 風に愛されたお姫様のお話」

「おとぎ話の?」

「そうさ。あれはこの国の姫様って言われてるんだよ」

 と、花の種売の女がドゥーダに姫の話をし始めてきた。

 そんな中、風に乗って歌声が聞こえてきた。これは風の音が歌のように聞こえるらしい。

 しかし、ラディアンは歌に反応し、街の奥に広がる森へと向かっていった。

「ドゥルル?」

 と、首を傾げながら、小さな羽を羽ばたかせる。

 すると、森を抜けると目の前に高い高い塔がそびえ立っていた。

「ドゥールル?」

 塔の近くを飛び回ると、塔の上から歌声が聞こえてきた。ゆっくりと上へ向かうと小さな格子窓が見えた。

 格子窓から中を覗くと、黒く肩まで伸びる髪が印象的の女性が歌っていた。

「ドゥー!!」

「え?」

「ドゥール!」

「まぁ、ドラゴン? こんな所へどうしたの?」

「ドゥルル〜」

「ん? ごめんなさい。分からないわ」

「ドゥルル……」

 と、悲しげな声で鳴くとラディアンは耳を垂れさせる。

 女性は少し微笑み「可愛い子ね」と、ラディアンを見つめる。

「ラディアン! どこだ!?」

 遠くからドゥーダの声が響く。それを聞いた女性が「まぁ、ラディアンと言うの?」と、聞く。

「ドゥール!」

「そう、素敵よ」

「ラディアン! そんな所で何してるんだ?」

 塔の下にドゥーダが走ってくる。塔を見上げると、ラディアンが飛んだいるのが見えた。

「でっかい塔だな……」

「ドゥーーール!!」

 と、大きな鳴き声を出しながら、ラディアンがドゥーダの顔面に飛び込んできた。

「何してるんだよ、帰るぞ」

「ドゥ!」

「上?」

「ドゥ!」

 と、大きく頷くと、ラディアンが変化した。巨大な姿に変わる。無理やり、背中に乗せると、塔の上へと向かっていく。

「なんだよ」

「ドゥルル〜」

「お姫様?」

「ドゥル!」

 塔の上の格子窓を見つけ、中を覗く。すると、女性がこちらを不思議そうに見ていた。

「まぁ、ラディアンのお友達?」

「ドゥー!」

「えっと、」

「初めまして。ウィリーと申します」

「ウィリー?」

 ドゥーダは女性の姿を見て驚いた。おとぎ話の絵本に出てくるお姫様とそっくりなのだから。さらに名前がウィリー。これもおとぎ話に出てくる名前と同じなのだ。

「おとぎ話の……」

「人と話すのは、何百年ぶりかしら」

「……ずっと、ここで一人なの?」

「そうね。でも、私には風がいるわ……。あれ、そう言えば、あなた達はどうしてここまで来られたの?」

「え?」

「いつもは、人を通さないように、風が吹いているのに」

「たぶん、ドラゴンは風の眷属だからだ」

「そう……。ラディアンのお友達だから、あなたも大丈夫だったのかもね」

 ウィリーの笑顔は、まるで幼い子どものようだった。ドゥーダは少し頬を赤らめると、母にあげるために買っておいた花を、ウィリーに差し出す。

「これは?」

「街の人が育てた花。ウィリーとの出会いに感謝して、君に贈るよ」

「まぁ! 素敵……」

「俺は、ドゥーダ。よろしく」

「ドゥーダ……。えぇ、よろしく」

「また、来てもいい?」

「えぇ。私もお話したいわ」

「本当!? 今日は、そろそろ日が暮れるから、帰らないとだから……。また来るよ!」

「ありがとう、ドゥーダ。それにラディアンも」

「ドゥルル〜」

 日が落ち始めた。ラディアンの背中に乗ったまま、ドゥーダは国へ戻った。

 夕日のせいなのか、顔を真っ赤にさせながら。



 END


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