夏とともに君を待つ。
お題【間も無く】
現代もの、恋愛です。
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お題【間も無く】
駅のホームには、崎竜太が立っている。1人で、閑散としたホームに。
地元に密接した小さな駅。田舎と言われるような駅で、都内にあるような電子でタッチ出来るような改札なんてものはない。
地元の人間である竜太は、学校に行くわけでもないのに、駅に来ていた。
夏がもうすぐ来ると、ニュースで言っていたな。そんな事を考えながら、竜太は腕時計を見る。
電車はまだ来ない。もちろん、電車の来る時間はまだまだ先なのだから、当然である。
「早く来すぎたな……」
夏はまだ。なのに、蒸し暑く竜太は額から汗を流していた。
手荷物は一切ない。ただ、ホームで待つだけ。ホーム内を行ったり来たり、ベンチに腰を掛けてみたり。ソワソワしているのが、誰にでも分かるようだった。
「まだ10分しか経ってない」
腕時計をチラチラ見ているが、長い針は進まない。
竜太の姿を遠くから見る駅員は、何故か面白そうに笑っている。
時間は、先程より30分経った。しかし、竜太にとっては、1時間以上も経っているように感じている。
「竜ちゃん」
「おっちゃーん」
「あと少しだから、これでも飲んでな」
「あんがと」
駅員が竜太の前に現れると、スポーツドリンクが入ったペットボトルを竜太に渡す。
竜太は、だいぶ汗をかいていたのか、ドリンクをガブガブと飲んでいく。
「うま」
「よりゃ良かった」
「あぁーまだかよ」
「間も無く参りまーす」
「間も無くって、あとどんくらいだよー」
「早く来た竜ちゃんが悪いよ」
「だよね」
夏がもうすぐ来る。そして電車に乗った、あの子と共に。




