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短編集〜ワンライ〜  作者: 山芋娘
23/39

きっと、この世界は美しい

お題【海/オルゴール/君の声】より

【海/オルゴール】


ハイ・ファンタジーです。



pixiv URL:http://touch.pixiv.net/novel/show.php?id=7032028

 


 お題【海/オルゴール/君の声】より

【海/オルゴール】




 この世界には、様々な国が存在する。空に浮かぶ国は、地上と争う。地上にある無数の国は、空と争う。それは何百年も昔から続く戦い。

 けれど、海にある国は戦いを嫌い、平和に暮らしていた。無数にある国の中でも、ライト王国は特に戦いを嫌い、地上へは近づかないように喚起していた。


「空は美しいのかしら……」


 海の中に人が暮らせる街が存在する。その街の中央には、宮殿がある。宮殿の一つの部屋から、上を見上げる一人の女。


「よし、行ってみよ!」


 彼女は、この王国の姫、マリン。上には四人の王子や姫がいる。一番下のためか甘やかされて育ち、そして今もワガママを実行しようとしたいた。


『空』


 海の中からは空は見えない。幼い頃からの憧れ。マリンは国を出てゆっくりと泳いでいく。

 どんどん、どんどん、水面が近づいてくる。

 ワクワクと不安が同時に押し寄せてくる。けれど、誰にも言わないで、国を出たマリンには一つの大きな冒険だ。ワクワクが勝つに決まっていた。


「ぷはっ」


 水面から顔を出すと、強い日差しがマリンの顔を照らす。


『太陽』


 大きくて明るい。とても美しく、綺麗なもの。ーーマリンは空を仰ぎ、太陽に見とれていた。そして、同時に青くどこまでも広がる空にも目を奪われていた。


「なんと、美しい世界……」


 自然と涙の溢れていた。けれど、マリンの体はゆっくりと蝕まれていた。その事に気付かずマリンは、空を仰ぐ。


「何故、こんなにも美しい世界で、争いをしているの……」


 空には雲が浮かぶ。その雲の隙間から、国が見えた。そこからは地上に向け砲撃がされている。どこかの国と戦争をしているのが分かった。

 それを見て、マリンは涙を流す。

 すると、マリンの目の前に一つのオルゴールが流れてきた。蓋を開けると音が鳴る。そして、小さな紙が入っていた。


『この世界は、何故争うの? 誰か僕を助けて。この世界を助けて。全ての人を幸せにして』


 幼い子供の字のように思えた。オルゴールは優しく音を奏でる。

 世界を愛そう。そうすればきっと幸せは訪れる。ーーマリンの心にオルゴールの音が溶け込んでいく。

 そこへ海から一人の男性が物凄い勢いで泳いできた。マリンを見つけ手を伸ばすと、一気にマリンの体を海へと戻す。


「マリン様!」

「ゾーラ……」


 海の中でも、会話をすることが出来る一族のため、二人は言葉を発する。


「何をしているのですか!?」

「空が見たかったの」

「空? あんな危険なところ……」

「争いがあり、危険なことは分かっているわ。でも、とても美しいの」

「……美しい?」

「えぇ、美しいの。きっと、空だけではなく、世界はもっと美しいもので溢れてる」

「……けれど、海から出ることは出来ません」

「……何故?」

「ご自分の体を見てください」


 ゾーラの言うように、海面から出ていた腕などを見る。そこには、火傷のような痕が広がっていた。

 痛みはないと言うが、このまま海を出れば体は痛みに耐えられなくなり、そして死をもたらす。


「死」

「そうです」

「……それでも、私は美しい世界が見たい」

「今は我慢してください」

「ゾーラ!」

「あと数年したら、貴女の体はもっと丈夫になります。その時に」

「数年?」

「勉強嫌いなマリン様は、何も知らないのですから。全く呆れたものです」

「海から出られるの!?」

「えぇ。ですが、世界を見たいのであれば、まずは勉強です」

「……世界が見られるのであれば、私やる!」

「では、帰りましょう」


 ゾーラの手に引かれ、国へと戻っていく。





 やがてマリンは世界の美しさを知り、そして残酷さを知る。


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