きっと、この世界は美しい
お題【海/オルゴール/君の声】より
【海/オルゴール】
ハイ・ファンタジーです。
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お題【海/オルゴール/君の声】より
【海/オルゴール】
この世界には、様々な国が存在する。空に浮かぶ国は、地上と争う。地上にある無数の国は、空と争う。それは何百年も昔から続く戦い。
けれど、海にある国は戦いを嫌い、平和に暮らしていた。無数にある国の中でも、ライト王国は特に戦いを嫌い、地上へは近づかないように喚起していた。
「空は美しいのかしら……」
海の中に人が暮らせる街が存在する。その街の中央には、宮殿がある。宮殿の一つの部屋から、上を見上げる一人の女。
「よし、行ってみよ!」
彼女は、この王国の姫、マリン。上には四人の王子や姫がいる。一番下のためか甘やかされて育ち、そして今もワガママを実行しようとしたいた。
『空』
海の中からは空は見えない。幼い頃からの憧れ。マリンは国を出てゆっくりと泳いでいく。
どんどん、どんどん、水面が近づいてくる。
ワクワクと不安が同時に押し寄せてくる。けれど、誰にも言わないで、国を出たマリンには一つの大きな冒険だ。ワクワクが勝つに決まっていた。
「ぷはっ」
水面から顔を出すと、強い日差しがマリンの顔を照らす。
『太陽』
大きくて明るい。とても美しく、綺麗なもの。ーーマリンは空を仰ぎ、太陽に見とれていた。そして、同時に青くどこまでも広がる空にも目を奪われていた。
「なんと、美しい世界……」
自然と涙の溢れていた。けれど、マリンの体はゆっくりと蝕まれていた。その事に気付かずマリンは、空を仰ぐ。
「何故、こんなにも美しい世界で、争いをしているの……」
空には雲が浮かぶ。その雲の隙間から、国が見えた。そこからは地上に向け砲撃がされている。どこかの国と戦争をしているのが分かった。
それを見て、マリンは涙を流す。
すると、マリンの目の前に一つのオルゴールが流れてきた。蓋を開けると音が鳴る。そして、小さな紙が入っていた。
『この世界は、何故争うの? 誰か僕を助けて。この世界を助けて。全ての人を幸せにして』
幼い子供の字のように思えた。オルゴールは優しく音を奏でる。
世界を愛そう。そうすればきっと幸せは訪れる。ーーマリンの心にオルゴールの音が溶け込んでいく。
そこへ海から一人の男性が物凄い勢いで泳いできた。マリンを見つけ手を伸ばすと、一気にマリンの体を海へと戻す。
「マリン様!」
「ゾーラ……」
海の中でも、会話をすることが出来る一族のため、二人は言葉を発する。
「何をしているのですか!?」
「空が見たかったの」
「空? あんな危険なところ……」
「争いがあり、危険なことは分かっているわ。でも、とても美しいの」
「……美しい?」
「えぇ、美しいの。きっと、空だけではなく、世界はもっと美しいもので溢れてる」
「……けれど、海から出ることは出来ません」
「……何故?」
「ご自分の体を見てください」
ゾーラの言うように、海面から出ていた腕などを見る。そこには、火傷のような痕が広がっていた。
痛みはないと言うが、このまま海を出れば体は痛みに耐えられなくなり、そして死をもたらす。
「死」
「そうです」
「……それでも、私は美しい世界が見たい」
「今は我慢してください」
「ゾーラ!」
「あと数年したら、貴女の体はもっと丈夫になります。その時に」
「数年?」
「勉強嫌いなマリン様は、何も知らないのですから。全く呆れたものです」
「海から出られるの!?」
「えぇ。ですが、世界を見たいのであれば、まずは勉強です」
「……世界が見られるのであれば、私やる!」
「では、帰りましょう」
ゾーラの手に引かれ、国へと戻っていく。
やがてマリンは世界の美しさを知り、そして残酷さを知る。




