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短編集〜ワンライ〜  作者: 山芋娘
20/39

あなたの色に恋をして

お題【音色】

pixiv URL:http://touch.pixiv.net/novel/show.php?id=7011905

 



 お題【音色】




 赤、黄色、白……。この世界に溢れる音は、色として、彼女の目に映る。

 植西梨里杏は、教室でヘッドホンをして寝ている。ヘッドホンから流れてくるのは、海の音。

 目を開けていると、色が溢れてくるため疲れてしまう。授業と授業の間、休憩時間はなるべく目を閉じ伏せるようにしている。

 ヘッドホンもなるべく音を遮断するためにだ。


「ん〜、今日は機嫌悪い人が多いな」


 机に伏せた状態で、腕の隙間からクラスにいる生徒たちのことを見てみる。

 色が濁っていたり、攻撃的な色で、梨里杏は疲れていた。

 人の言葉の色が、梨里杏にとって全てのように思えた。そのためか、恋もまだしたことない。

 何度が告白されてきたが、自分の好みの色でないため、全て断ってきた。


「梨里杏」

「ん〜」

「ねぇねぇ」

「……なに?」


 梨里杏を起こしたのは、隣のクラスの狭間尚子。1年の時に仲良くなってから、クラスが離れても、仲良くしている。

 その理由は単純。梨里杏が嫌いな色でないということ。そして尚子も梨里杏のことを気味悪がらないため、仲良くしていた。


「今日さ、声楽部行ってみない?」

「なんで、また急に」

「ちょっと凄い先輩見つけてさ」

「へぇ」

「見てみたいの! 聞いてみたいの! お願い」


 両手を合わせ、梨里杏を拝むように、尚子が目を瞑る。

 梨里杏は一度大きくため息を吐くと、「はいはい」と答える。






 その日の放課後。

 梨里杏は、相変わらずヘッドホンを付けたまま。尚子は梨里杏の腕を掴み、引っ張るように歩いていく。

 『声楽部』と、書かれた札が下げられた部室の前に着いた。


「声、聞こえないね」

「防音なんじゃないの」

「なるほど」

「早く。私、早く帰りたい」

「もう、そういうこと言わないでよ」


「開けるよ」と、梨里杏に声を掛け、部室の扉に手をかけゆっくりと開ける。

 小さく開け、隙間から覗いてみる。隙間からは綺麗な歌声が響いてくる。


「見学しますって行って入ればいいのに」


 梨里杏の言葉を聞いていない尚子。

 梨里杏は尚子の後ろで、声楽部に全く興味を示さなかったが、中から聞こえてくる声になにか反応した。


「綺麗な、色……」


 ヘッドホンを外し、梨里杏も尚子と同じように隙間から覗く。

 部室の中では、ピアノを弾きながら歌っている生徒がいる。


「音色が、歌声が、綺麗……。こんな人、初めて」


 今まで様々な音を聞き、色を見てきた梨里杏。テレビを通してだが、世界一の歌声や世界で活躍するピアニストなど、様々なものを聞き、見てきた。

 けれど、こんなにも美しい音色を出し、美しい歌声で歌う。

 梨里杏の目に美しい色をもたらした人は、今目の前で歌う生徒が初めてだった。


「うん。満足! 帰ろっか、梨里杏」


 尚子は満足したというが、梨里杏は聞き入ってしまい、尚子の言葉など聞いていなかった。





 その次の日から、梨里杏は声楽部の先輩の歌声を聞きに、通い始めた。

 それが梨里杏の初恋。



実は、自分的には百合として書いてました。

女子高って裏設定

でも、NLでも全然平気なんで、読者様なりに考えてくれて構いません^^

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