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短編集〜ワンライ〜  作者: 山芋娘
16/39

星とおでんとキスを

お題【星空】

pixiv URL:http://touch.pixiv.net/novel/show.php?id=6984457


男女の恋物語です。

真夏なのに、真冬のお話……夏でもおでん食べたくなることがあります笑

 



 お題【星空】




 コンビニのバイトは、18時から22時まで。それが終わると、矢田彩香はバイト先でおでんを買い、近くの展望台へ上がる。

 展望台と行っても、地域の人が勝手に付けた名前で、少し高台に開けた所があるだけ。そこは星を見るには最高のスポットである。

 そのため、彩香はバイトがある日は必ず展望台へ上がっていた。

 そして今日もあと10分で、バイトが終わろうとしていた。


「ん〜今日は忙しかった」

「そうっすね」

「なんで、ポテトあんなに売れたんだろ?」

「外、寒いからじゃないっすか?」

「確かに」


 季節は冬。まだ雪は降っていないが、寒さはどんどん深まるばかり。

 今日のバイトは二つ下の、男子高校生と一緒。仕事はしっかりとやるが、少し気だるそうなのが、考えものだ。


(あ、今日も来た)


 コンビニに入ってきたのは、ダウンジャケットを着込み、マフラーをしっかりと巻いている男性。

 入り口から入ってくると、奥へは行かず一直線にレジに来た。


「いらっしゃいませ」

「おでん……ちくわと大根と白滝をひとつずつ」

「はい」


 おでんを頼んでいる彼は、彩香がバイトをしている日には必ず現れる学生である。そして必ず、「ちくわ、大根、白滝」を頼むのである。


「汁、おまけしておきました」

「ありがとう」


 彼は、ふんわりと柔らかく笑うと、おでんを手に店を出ていく。





 時間は、22時を過ぎた。

 彩香もおでんを買う。具材は「こんにゃく、白滝、ソーセージ」の3つ。汁もたっぷりと入れる。

 店を出ていき、自転車のカゴにおでんを入れると、日課である展望台へと向かう。

 展望台のベンチには、先客がいた。


「こんばんは〜」

「さっきぶり」


 それは先程、おでんを買った男子学生、三須彰。同じ大学の同じ学部。しかし、接点は全くなかったため、話したことは無かったのだが、ある日からこの展望台で会うようになった。


「お疲れ様」

「ありがとう」

「やっぱり、寒い日にはおでんだよね」

「うんうん」


 三須の方は、食べ終えてしまってあとは汁だけ。三須の隣に座ると、彩香も熱々のおでんを頬張り始める。


「あつ、あつ」

「あはは〜」

「ん〜、この熱さがまたいいよね」

「だね」

「それにしても、星キレイ……」

「……うん」


 熱いおでんを少しだけ冷まし、口に入れていく。ついでに汁も飲む。辺りは、少ししか電気が無いため暗い。しかし、その暗さが星空の美しさを引き立てる。


「そうだ。この新曲聞いた?」

「なに?」


 三須が、イヤホンを差し出す。空いている手で、イヤホンを受け取り耳に入れる。


「あ、今日買ったばかりで、まだ使ってないやつだから、綺麗だよ」

「別に気にしてないよ。なんで、買ったの?」

「朝起きたら、猫がおもちゃにしてた」

「あらあら」

「昨日に限って、しまっておくの忘れてて……。それで7代目」

「結構やられてるね」

「うん……」


 イヤホンから流れるのは、2人が好きなアーティストの新曲で、クリスマスソング。2人の距離は、だんだんと近づいてく。


「いい歌だね」

「……うん」

「どうしたの?」


 彩香が三須の方を見ると、目の前に顔がある。そして、唇になにか当たる感覚がある。

「キス」されている。三須が彩香から離れるが、彩香は何が起こったのか分からず、三須を見つめている。

 その三須は、顔を真っ赤にして俯いている。


「え、」


 彩香はやっと分かったのか、一気に顔を赤らめる。


「ご、ご、ごめん……」

「……うん」

「その、えっと」


 しどろもどろの三須に、彩香が抱きつく。2人ともおでんの容器を持っているため、しかもまだ汁は入っているため、そこに気を配った。

 けれど、彩香は三須に抱きついている。


「好き!」

「え、あ、うん! 俺も!」

「……ふふふ」

「ふふふ」


 見つめ合うと、何故か笑い出す2人。ベンチ端にそっとおでんの容器を置くと、再びギュッと抱きしめる。

 ゆっくりと見上げる空は、星が輝いている。


「綺麗だね」

「うん」


 とてもロマンチックな雰囲気を醸し出していたが、寒さに絶えられず、おでんの汁を飲み始めた。



 おわり


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