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短編集〜ワンライ〜  作者: 山芋娘
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あなたと同じになりたい

pixiv URL:http://touch.pixiv.net/novel/show.php?id=6973751


お題【ワイン】

ファンタジー要素を含みます。

お酒は二十歳になってから!

 



 お題【ワイン】

(性別は指定していません。)





 ーー初めてのワインは、両親とともに自分の二十歳の誕生日。そして生まれた時間に飲むと決めていた。


 島ナナオは、高校の帰り道。学生服姿で地平線に沈む太陽を眺めながら、歩いていた。

 今日は、ナナオの十八歳の誕生日。両手に神袋を手にしている。中身は学校中なら貰ったナナオへと誕生日プレゼント。

 三年生のナナオは、同学年だけでなく下の学年からも人気を得ていて、朝からプレゼントを渡す生徒たちで溢れていた。


「八時三分までまだ時間あるな……」


 そう呟きながらも、今住んでいる家へと歩みを進める。

 数年前まで、ナナオは当然のことながら両親と住んでいた。しかし両親は死んでしまったために、今はある人に引き取られている。その人の住む家へと帰るのが、今のナナオの日常である。


「ただいま〜」

「あぁ、おかえり」


 この町では目立つほど、大きな洋館的な屋敷に帰ると、エプロン姿の長身の見た目、男性が出迎えた。

 落ち着いた雰囲気を醸し出す、名前はルーリオ。長身の身にヒラヒラのエプロンを着ているのがとてもシュールだが、この屋敷では日常である。

 そのため、ナナオは驚く様子も見せない。


「シュンリーさんは?」

「気合入れて、ケーキ作ってる」

「ケーキか……。とりあえず、着替えてくる」

「分かった」


 ルーリオは、キッチンへと消えていく。

 ナナオは、キッチンとは別の方へ歩いていき、自分の部屋に入っていく。

 数年前に迎えてもらってから、与えてもらっている部屋。一人にしては十分の部屋には赤い薔薇の花が飾られている。


「シュンリーさん、また勝手に飾ってる。まぁいいか」


 ナナオは、荷物を置き、部屋着に着替えを済ませると、キッチンへと向かう。

 キッチンを覗き込むと、ルーリオと、見た目女性のようにも見える者、シュンリーがいた。白く美しい短く整った髪が、光るようにキラキラしている。


「あぁ。ナナ、おかえり」

「ただいま」


 ナナオに気づいたシュンリーが、ナナオを抱きしめる。


「もうちょっと待ってね! ご馳走とケーキ作ってるから」

「うん。ありがとう」

「先に席に着いてて」

「分かった」

「あ、待って」

「ん?」

「これ」


 シュンリーは、ポケットから一つの鍵を取り出すと、ナナオに渡す。


「これ……」

「好きなの選んでおいで」

「うん」


 それは、ワインセラーの鍵。今日、ナナオの誕生日まで決して入ることを許されなかった場所。

 今日、やっと入ることが許された。そう、儀式のために。





 八時ちょうど。

 食事を終え、ルーリオが片付けをしている。


「ナナ、おいで」

「……うん」


 ソファに優雅に座るシュンリー。そこへゆっくりと歩み寄るナナオ。

 まだワインのコルクは開いていない。


「怖い?」

「ううん。ずっと、待ってた」

「そう、ルーリオ」

「はい」

「さすが、ありがとう」

「出てる」

「分かった」


 ルーリオがシュンリーに手渡したのは、栓抜き。ワインのコルクを開ける。

 ナナオは、シュンリーの横に座り、シュンリーのことを見る。

 ワイングラスに、赤い液体が入っていく。そして、一口飲む。


「うん、いいワイン。見る目がある」

「やった」

「じゃあ、いい?」

「うん」


 シュンリーはワインの入ったグラスをナナオに渡すと、自分の手首にナイスを当て少し切る。そこから血が流れてくる。

 その血をワインの中へ一滴、二滴と入れていく。


「これでいいの?」

「うん! 血だけ飲むと、苦いからね」

「ワインも十分、苦い気がする」

「飲んだことないくせに」


 シュンリーは、ナナオを押し倒すと、口にワインを含む。そして、ゆっくりと口付けナナオの中にワインを流し込む。

 一筋、口からワインが零れるのも気にせず、口付けを続ける。


 二十歳になったら、両親と飲む約束だった。

 けれど、十八歳になった今日。ナナオはシュンリーとの約束を守るために、ワインを飲み、同じ者になった。




 おわり


(お酒は二十歳になってから!)


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