あなたと同じになりたい
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お題【ワイン】
ファンタジー要素を含みます。
お酒は二十歳になってから!
お題【ワイン】
(性別は指定していません。)
ーー初めてのワインは、両親とともに自分の二十歳の誕生日。そして生まれた時間に飲むと決めていた。
島ナナオは、高校の帰り道。学生服姿で地平線に沈む太陽を眺めながら、歩いていた。
今日は、ナナオの十八歳の誕生日。両手に神袋を手にしている。中身は学校中なら貰ったナナオへと誕生日プレゼント。
三年生のナナオは、同学年だけでなく下の学年からも人気を得ていて、朝からプレゼントを渡す生徒たちで溢れていた。
「八時三分までまだ時間あるな……」
そう呟きながらも、今住んでいる家へと歩みを進める。
数年前まで、ナナオは当然のことながら両親と住んでいた。しかし両親は死んでしまったために、今はある人に引き取られている。その人の住む家へと帰るのが、今のナナオの日常である。
「ただいま〜」
「あぁ、おかえり」
この町では目立つほど、大きな洋館的な屋敷に帰ると、エプロン姿の長身の見た目、男性が出迎えた。
落ち着いた雰囲気を醸し出す、名前はルーリオ。長身の身にヒラヒラのエプロンを着ているのがとてもシュールだが、この屋敷では日常である。
そのため、ナナオは驚く様子も見せない。
「シュンリーさんは?」
「気合入れて、ケーキ作ってる」
「ケーキか……。とりあえず、着替えてくる」
「分かった」
ルーリオは、キッチンへと消えていく。
ナナオは、キッチンとは別の方へ歩いていき、自分の部屋に入っていく。
数年前に迎えてもらってから、与えてもらっている部屋。一人にしては十分の部屋には赤い薔薇の花が飾られている。
「シュンリーさん、また勝手に飾ってる。まぁいいか」
ナナオは、荷物を置き、部屋着に着替えを済ませると、キッチンへと向かう。
キッチンを覗き込むと、ルーリオと、見た目女性のようにも見える者、シュンリーがいた。白く美しい短く整った髪が、光るようにキラキラしている。
「あぁ。ナナ、おかえり」
「ただいま」
ナナオに気づいたシュンリーが、ナナオを抱きしめる。
「もうちょっと待ってね! ご馳走とケーキ作ってるから」
「うん。ありがとう」
「先に席に着いてて」
「分かった」
「あ、待って」
「ん?」
「これ」
シュンリーは、ポケットから一つの鍵を取り出すと、ナナオに渡す。
「これ……」
「好きなの選んでおいで」
「うん」
それは、ワインセラーの鍵。今日、ナナオの誕生日まで決して入ることを許されなかった場所。
今日、やっと入ることが許された。そう、儀式のために。
八時ちょうど。
食事を終え、ルーリオが片付けをしている。
「ナナ、おいで」
「……うん」
ソファに優雅に座るシュンリー。そこへゆっくりと歩み寄るナナオ。
まだワインのコルクは開いていない。
「怖い?」
「ううん。ずっと、待ってた」
「そう、ルーリオ」
「はい」
「さすが、ありがとう」
「出てる」
「分かった」
ルーリオがシュンリーに手渡したのは、栓抜き。ワインのコルクを開ける。
ナナオは、シュンリーの横に座り、シュンリーのことを見る。
ワイングラスに、赤い液体が入っていく。そして、一口飲む。
「うん、いいワイン。見る目がある」
「やった」
「じゃあ、いい?」
「うん」
シュンリーはワインの入ったグラスをナナオに渡すと、自分の手首にナイスを当て少し切る。そこから血が流れてくる。
その血をワインの中へ一滴、二滴と入れていく。
「これでいいの?」
「うん! 血だけ飲むと、苦いからね」
「ワインも十分、苦い気がする」
「飲んだことないくせに」
シュンリーは、ナナオを押し倒すと、口にワインを含む。そして、ゆっくりと口付けナナオの中にワインを流し込む。
一筋、口からワインが零れるのも気にせず、口付けを続ける。
二十歳になったら、両親と飲む約束だった。
けれど、十八歳になった今日。ナナオはシュンリーとの約束を守るために、ワインを飲み、同じ者になった。
おわり
(お酒は二十歳になってから!)




