1-5 カレの記憶
そんな龍我を気にもせず、希白は彼のカップの中身も消えたことを確認すると、2つのカップを持ち席を立った。
「…さて、学園の風景はそんな感じかしらね。…あと聞きたいことがあるのなら、これ、淹れてくるまでに考えておいて頂戴ね」
龍我に見せるように、カップを目元近くまで上げる。カップ同士がぶつかり、カランと乾いた音を立てて、中の水滴が少し飛び散る。
それも気にせず、希白は給油室へと消えていった。
龍我が気になることと言えば、あとは学園内の校則と、何故ここに自分がいるのか…ぐらいだ。
(どうしたんだっけか。普通に下校してて、それで…)
そこで、ピリッと電流のような痛みが頭を襲う。
そこまで痛くはなかったが、もう考えたくなくなるような、そんな痛みだ。
(―――った…。)
反射的に頭を抑えるが、考えることをやめたところで痛みは消えている。
…なんだったのだろうか。と少し思っただけで、同じような痛みが走る。
(————っ、やめだ、やめ。これを考えるのはよそう。環境が落ち着いてからだな)
考えるのをやめると、またその痛みはなくなっていたが、変な違和感が頭に残っていたので、首をぶんぶんと振る。
振り終わってからふぅっと息を吐くと、保健室で初めて会った時に、希白が口にしていた言葉を思い出した。
―――家系同士の繋がり…家帳をご存じ?———
聞いた、ということは、すなわち自分が関係していることなのだろう。
だが、まったく聞き覚えのない単語だし、両親からも聞いたことが無い。
そもそも、両親は基本海外を飛び回っていると祖父母から聞いていたので、顔を合わせることがなかったのだ。知って居るはずがない。
そんな感じでぶつぶつと考えていると、カップを手に、希白がゆっくりとした足取りで戻ってきた。机の上にカップを置き直すと、改めて龍我の真ん前に座る。
「…で?聞きたいこと、まとまったかしら?」
小さく微笑みながら、持ってきたばかりの紅茶をすする。淹れたばかりなのか、紅茶の茶葉のいい香りが、ふわっと香ってきて花を擽る。
大きく息を吸い、また吐き出すと、龍我は頷いた。
「あぁ。聞きたいことは3つだ。」
指を3本立ててそう言う彼の顔も少し緩んでいる。新しい場所を探索する、幼い子供のような顔だ。
それに、「へぇ」と驚きの顔を一瞬見せた希白だが、すぐにいつもの表情へと戻る。
「そんなにあるのね。…まわいいわ。答えられる範囲でならば答えてあげる。…で、なんなの?」
グラスの中の氷がカランと音を立てて動いた。
…は、話が進まない…。
…とてつもなく長いシリーズになりそうです。…私が完結できるかな(汗
でも頑張りたいと思います。
さて、今回は龍我が四魂学園に来る前のことを必死に思いだそうとしてました。
多分覚えていたら、こんなことにはなっていなかった…と、思いますw
いつも、書きながら話を創造しているので、コロコロ話が変わっていくのですw
風呂敷を広げ過ぎないようにしないと…。
まぁ、でも、広げた伏線はすべて回収しますけどねw
いつ更新されるか分からない次回、お楽しみにしていてください!