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雨音

雨が降り始めた。はじめは、ポツポツと。すぐにザーッ、ザーと。カーテンから漏れる光が、薄く霞んだ。

さっと窓の外を通り過ぎる影が、カーテン越しに見えた。きっと、みんなは鳥か何かだろうと、気にもしなかっただろう。そもそも誰も、気付いていないかも知れない。

それは気にしていても、仕方の無いことだから。僕は鉄筋コンクリートの校舎を叩く雨音の、騒がしい静寂に包まれる。雨は嫌いだ。ぐっしょりと濡れた服の感触が好きになれない。でも、雨音は好きだ。強ければ強いほど、好ましい。その中で瞳を閉じれば、この煩わしい世界から、雑音を消し去ってくれるから。周りの話し声も、教師の注意する声も、僕の心臓の音も。全部、ぜんぶ、消してしまうから。

だけど、ふと目を開けた時。世界は何も変わったりなんかしていない。幸せそうな顔をしながら、心の中で辛い死にたいと嘆いてるような、そんな人間が溢れている。そして僕も、「そんな人間」の一人でしかなかった。


現実は何も変わってはくれない。だから僕は、もう一度瞳を閉じた。窓の外を通り過ぎた影を、みんなは鳥だと思っただろうか。それとも誰かがゴミを投げたと思っただろうか。僕は知っている。今はまだ僕だけしか知らないんだ。あれが、「そんな人間」だということを。

次に瞳を開けた時、世界は変わっているだろうか。

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