悪夢の中と外の夢
私は夢の中にいる。
とても、とても怖い夢だ。夢が始まる前から、そんな確信があった。そしてその通り、その夢はとても恐ろしい悪夢だった。
私の頭がひび割れる。どす黒い渦のような何かが、ぎゅうぎゅうと、押し合いながら流れ込んで来る。黒いそれは私の周りをぐるぐると囲い、嫌な感触で締め付けてきた。
呼吸が出来ない。夢の中にも関わらず、私はそんな苦痛を感じた。苦しい、苦しい。そう何度も喘ごうとしたが、黒いそれが喉を潰そうとして叶わない。
助けて。私はあの人に向けて願った。夢の中でも、きっとあの人なら、私を助けてくれる。まさに無我夢中で私はそう信じた。すると、黒い渦の中から、ぐっと力強い手が私にむけて伸びてきたではないか。
あの人の手だ。私は必死にその手を掴もうとしたが、どうしてか身動きが取れない。それでも手は黒い渦を巻き込みながら、しっかりと私を掴んでくれた。その暖かみは、紛れもなく間違えようもなく、あの人のものだ。
ああ、助かったんだ。こうして私は、この悪夢から目醒めた。
私は、悪夢から目醒めた。ようやく、あの悪夢から目醒めることが出来たのだ。でも、あの人はまだ私を掴んでくれている。もう、目は醒めたのだ。だからもう手を離して。早く、早くはやく早くその手、を、離し、て、、。