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夏休みハルと春  作者: 栖樺
5/5

5日 情けない


ふたりの時間が長いほど、他の時間は短くなる。

当たり前のようで気付かない、そんなことを誰かが言ったようです。


次の日、私は河原へ向かおうと、朝から支度をしていた。

本をカバンに詰め込んで、下へ降りて、顔を洗って、おばあちゃんとごはんを食べて、

おじいちゃんにごはんを届けにいって、歯を磨いて、髪を整えた。

「それで?あんたまたその格好なのかい?」

いざ、外へ出よう!と思ったら、おばあちゃんから話題がとばされた。

この会話が何回目なのか、数えたくも無いくらいだ。

おばあちゃんの言うその格好というのは、制服のことだった。

「学校指定のスカートに、上は白のワイシャツか、ポロシャツって・・・・。」

「いいでしょ、別に誰かに会うわけでもないし。」

「なんかワケとか、あるんだろう?」

「ないよっ!!」

玄関先でわざわざする話じゃあないと思う、

おばあちゃん元気だなぁ、夏バテとか無いんのかな。

「いってくるからね~。」

「あぁ、そういやあんた、落し物したんだって?」

「え・・・・・・・・・・・・・・。」

「夜、話きかせてもらおうか。」

なんで、その話を・・・。

あ、いや町中で出回ってたんだっけかな・・・。

「おばあちゃん、それ、誰に・・。」

「誰に聞いても同じこと言うさ、ほれ、いきなよ。あんたがいかないと、私も行けないんだからさ。」

今日は・・・帰りたくないなぁ・・・。

とりあえずお母さんに怒られないことをこころから祈る。

赤いスニーカーを履いて外に出る。今日も静かなあの場所へ。



「へぇ、おばあちゃんにバレてもうたんかいな。」

「・・・・・。」

河原のいつものベンチ、いつもの装備、いつもの天気、いつもの風景

「あかんなぁ、田舎モンはお喋りやさかいなぁ。」

「・・・・・・。」

いつも通りのこの時間に何故か・・・、つい昨日見知った顔。

そう、『ハル』が私を待ち伏せていたのだ。

かなり早い時間なのに、何故かもういた。

「なんで、ここにいるの!?」

「え、オレ暇やから。やることないなぁ思てたらハヤのこと思い出してん。」

「はぁ、さいですか・・・。」

ベンチは三人用ぐらいだから余裕はあるものの、

このテンションで話しかけられては、とてもじゃないが集中して読書はできない。

そこまでの集中力を持ち合わせていない。

「他の子と遊べばいいじゃん。なんで私のとこ来たの?」

「あー、他の奴らのとこいたくないねん。わかるやろ?」

「え、なんで?嫌われてるの?ハル。」

「おおぉ、えげつないこと聞くな。」

いや、まぁなんとなくわかるけれど、なんか釈然としない。

田舎ッ子のくせに、単独行動とは珍しい。

でもハルが田舎ッ子とはっきり断定できるものがないのも事実。

ちょっと失礼だったかもしれないと反省だけはしておこう。

「ま、ええわ。ほんで?どないしたん。」

「え、別に?夜に話しがあるってさ。」

「うわぁ、それ怒られるやん。大変やなぁ・・・。」

ハルは私の肩を二回叩く。

ぽんぽん。

なんか、いちいち中学生っぽくないことするなぁ、この子。

「まぁ、しゃーないわな。でも、夏実さんゆーたっけ?おばあちゃん。怖いんやろ?」

「え、うん。なんで知ってんの?」

「ん?聞いてん町のみんなから。それにオレ小林家の主さんと仲いいからなぁ。」

小林家の主・・・・。

と聞くと、どうしてもおばあちゃんのイメージが強いが、うちにはしっかりおじいちゃんがいるのだ。

畑仕事にあけくれている、おじいちゃんが。

「おじいちゃんって、畑からあんまり出ないよね?」

「あぁ、そやな。夏はそうや。でもオレが畑に行くねん。」

「ハルが?ホントに暇人なんだね。」

おじいちゃんのことは嫌いではないし、好きだけど、畑にはあまり行かない。

小さい頃こけて、転がって、傷だらけになってからは、行きたくないのだ。

あれは、ホントに痛かった。そのあとのおばあちゃんの消毒が一番痛かった。

「そや。オレ年中暇やねん。」

ハルは明るく笑った。

私はなんだか少し笑えなかった。

ハルはいちいち気になる物言いをする。

年中ここにいるというのだから、帰省組ではなく聞こえるし、

でも、いまいち田舎ッ子っぽくない行動をとる。

「ま、ええわ。ほれ、本読んでええで。オレかまわんから。」

「え、でもそしたらハルが暇じゃん。」

「寝る。」

「あ、そう・・・おやすみなさい。」

「おお~。昼前に起こして~。」

・・・・・・家で寝ればいいのに。

クーラーとかないからか。

木陰の方が気持ちいのか。

どちらにせよ、若干迷惑だ。

それに、朝来て寝るくらいなら・・・。

「待って、寝る前に聞かせて。」

「ん、ああ何?」

膝を抱えてうずくまろうとしたハルがこっちに顔を向ける。

寝むそうな顔だ。

「なんでここにきて寝るくらいなら、朝早くここにいたの?」

「んー、」

ハルは頬を指で少し掻いてから、笑う。

その動作はなんだか無性に可愛く思えた。

男子のくせになんて女子力高い動作するんだこの野郎・・・。


「ハヤが、一人かと思ってん。」


・・・・・・・・。

「じゃ、オレ寝るさかい。いびきとかうるさかったら言うてな?」

「あ、うん。」

拍子抜けしていた私にハルはまた笑って目を閉じた。

さっきの台詞の意味がよくわからなかった。

私が一人だからなんなんだろうか。

わざわざ確認しに来た?なんのために?なんの理由で?

そんなこと確認してどうするのかわからない。

それとも、

私が一人で寂しがってると思って、とか?

ハルは、優しい人だとは思うけれど、ほぼ初対面の他人にそこまでするだろうか?

どんだけ暇なんだろうか。

ハルを見つめる。

普通の少年だと、思う。

「・・・・ハヤは寝んなよ?」

「えっ!?」

目を開けないままハルがいった。

私が見つめてたのばれただろうか。

相手は中学生なわけだし、大して思うこともないけど・・。

(やっぱ、あの子では、どう考えてもないな。)

私はどうしてもそこにいきついてしまうのだ。

しばらくするとハルの寝息らしき音がした。

寝づらいようで何回か体勢を変えた。

最終的には肘掛をまくらにして、足をしたにおろしたまま横になった。

そのせいで、距離は近くなった。

「はぁ・・・・なんか子守してるみたい。」

情けない。

花の女子高校生が何してるんだろうか。

中学生相手にどたばたと・・・・。恥ずかしい。

明日は、なんかかけるものとかもってきたげようかな。


さて、中盤ですよ。

私もあなたも皆様も嫌いな中盤ですよ。

うわぁ、とっとと書いちゃいたい。

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