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6話 確信と寒心

お待たせしました。小悪魔アンバランス第6話です。

次の話まで執筆はしているのですが、次回がとても長かったので、今回は短めです。


「……やっぱりそうだ」

 近所のスーパーへやって来たオレが目にしたものは、大勢の人によって作られた行列。

 タイムセールが行われる際に、毎回目にしている光景と何も変わらない。

「ここは、『男』の時と同じだ。日付も通常通り進んでいるだけ」

 ……だとすれば、何が違う。

 変わったのはオレの性別や名前だけ? 他には何も変わらなかった、なんて事あるのか。

 考えても考えても、脳裏に浮かび上がってくるのは見当違いな答えだけ。

「どうしたら良いのさ」

 その瞬間。ドンッという効果音が付きそうな程、勢い良く何かとぶつかってしまった。

 思考の波に捕らわれていたので、気づかなかった。

「いてぇな。どこ見て歩いてんだ」

「……ててっ。確かに考え事をして歩いてたのは悪いけど、それはお互い様じゃ」

 オレが目にしたのは、屈強な体つきをしており、強面の男達が何人もいる光景。

 知らず知らずのうちに路地裏の不良の溜まり場に足を踏み込んでしまっていたようだ。そして、考え事をしている最中にその中の一人にぶつかってしまったと。

「あ? てめぇ、俺が悪いって言いてぇのか?」

 そうは言っていない。オレが考え事をしていて、気づかないうちにぶつかってしまったのは確かに悪い。けれども、そこまでスピードを上げてはいないはずなのに、勢いがよかったっ


て事は仕組んだ可能性もあると言っているだけ。と、言いたいのに。

 ……目の前にいる男が怖い。怖い。

「……あ、い、いや。そ、そんなつもりじゃなくって」

 ダメだ。涙が溢れてきた。

 怖い……。

「何、こんなに可愛い子泣かせてんのさ」

「……てめぇには関係ねぇだろ。ぶつかられたのは俺なんだからよ」

「そーゆーこと言ってんじゃねっての。俺だったら、泣かせるより啼かせてやるっていう話だ」

 不良の会話の内容が理解出来てしまった瞬間に、涙は止まり、体の震えが激しくなる。

「あぁ、そういう事な。確かに、こいつは可愛い顔してやがるし、ムシャクシャしてっから徹底的にヤっても悪い気はしねぇな」

(……い、いや、誰か助けて)

 不良達の手が『私』に触れるかと思える程、近くになった。

 次の瞬間、手を出そうとした不良がよくわからない奇声をあげ、同時に路地裏に似つかわない凛々しい声が響き渡る。


「なぁ、お前ら、恥ずかしいと思わねぇの。こんなか弱い少女一人に寄ってたかってさ」

 漆黒の髪をたなびかせながら、颯爽と現れた少年。

 助けはない。もう諦めていた最中に現れた爽やか系な少年の姿を、目を見開いて見続ける。

「な、何がだ。これは俺らの問題だ。邪魔者はすっこんでろ」

「お前こそ調子に乗ってんじゃねぇぞ!!」

 不良の一人が少年の死角となっている場所から、鉄パイプを持ちながら突進した。

「あ、危ないっ!」

「……悪いけど。俺、こいつの彼氏だから、邪魔者じゃないんだわ」

 身を反転させ、鉄パイプ持った不良の腹に勢いをつけた蹴りを入れ、ダウンさせた。

 その勢いのまま、残りの不良を糸も簡単にやり遂げてしまった。

「大丈夫? 怪我はないかい?」

「あ……。はい、おかげさまで」

 差し出された手を握り、立ち上がろうとしたが、どうやら恐怖体験を初めてしてしまったようで腰が抜けてしまった。

「……あ、あれ」

 全然立とうとしないオレの姿を見かねて、少年は軽く力を入れ、オレを立たせて、自身の胸元で受け止める。

「へっ?」

「悪いけど、ちょっと付き合ってくれる?」

 そう言って、彼はオレの唇へと自分の唇を重ねてきた。

「んんっ!?」

 あまりの衝撃に気が動転し、色気もなんにもない奇声をあげてしまった。

 オレは今日、男だった時から大切にしていた初めてのキスを男に奪われてしまった。




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