1話 勝手にオレを女にしやがって
・見切り発車です。ストックなどありませんので、ご了承くださいませ。
・あらすじの通り性転換要素を含みます。受け付けない方はプラウザバック推奨です。
ーー以上。
作者からの前置きでした!
性転換――。
人間を含めて生き物の性別を変えることをそう言うが、本当に性別を入れ替えることは出来るのだろうか。
ここでは人間の場合を話すことにするが、もし出来たとしてもそれはかなり不完全なもので、完全なものとは言えないし、そのために必要な物だって山ほどいる。
まず最初に思い浮かべるのはお金の問題だ。
性転換をしたいと言ったとする。だが、それは決して簡単なものではない。
普通、性転換というと性転換手術が必要とされ、莫大な費用が掛かる。そして何より、性転換後の自分を受け入れてくれる環境も必要になる。
これは本人の意思を無視し、性転換してしまった不幸な少年のお話……。
◇
「……で、何が言いたいわけ?」
「あははは。ゆ、許してくれると嬉しいなって」
時刻は午前二時。
町一番の商店街から少し離れた場所にあるマンションの一室にて、男女が言い争っていた。
少女はベッドの上に座りながら、睨み付けるように目の前で土下座をする男を見ている。まぁ、言ってしまえばその少女こそがオレってことになるんだけどね。今の状況から言えば……。
「ふ、ふざけるなーーっ!!」
抱えていた枕を全力で男に向かって投げつける。
オレの手から放たれた枕は綺麗な放物線を描き、土下座している男にヒットする。
「ちょ、ちょっと落ち着けって」
「これが落ち着けるかー! 勝手にオレを女にしやがって!!」
そう、オレこと篠崎 優斗は元々、男だったのだ。……にも関わらず、この自称神様とやらがオレを女にしたのだ。
そして理由を説明してくれたのは嬉しいのだが、その理由が理由なだけにイライラしてしまうオレは悪くないだろう。どう考えてもオレは被害者なのだから。
「何が依頼主の命だからだよ。だったら、依頼主の名前ぐらい言えーー!」
「そ、それは……。依頼主が『時期が来たら教えてあげる』って」
「時期が来たらって、今教えても一緒だろうが」
何を勿体ぶっているのか知らないけどな。オレを巻き添えにしたことを後悔させてやらないとな。
ちなみにここのマンションは高額でセキュリティもきっちりしているし、尚且つ防音設備なので大声を出しても隣近所から苦情が来ないという利点もある。
さっきからオレが大声を出しても「うるせーぞ」の一言も聞こえないのはそのせいだ。
「……はぁ。で、オレが性転換したこととかで、周りに影響はあるのか?」
「いいえ、特にありませんよ。しかし、あなたは最初から女だったという設定にはなっていますが」
「それ、思いっきり影響あるよね?」
「そうとも言います」
そうとしか言わないよ。とツッコミたい気分ではあったが、言った所で何も変わらないんだろうなと考え直すことにより口に出さずに終わった。
オレが元から女だった世界ねぇ。男であった世界が現実……正史であるとするならば、ここはさしずめ分史世界。とでも言うべきかな。
「まぁ、いい。この世界で依頼主とやらを見つけてボコボコにすることにするよ」
「個人的なものなら自分は手を出せないので構いませんよ。あなた達の私情に口出すつもりはありませんし」
「そう、これで思いっきりぶん殴れるわ」
満面の笑みを浮かべながら言うと、何故か神様に距離を取られた。
中学生のころ、不良やってたオレを舐めないで欲しいな。依頼主ぐらいさくっとボコってやるから。
「あ、そうでした。ここでの名前を言っておくのを忘れてましたね」
「ここでの名前?」
「ええ、優斗じゃあ男っぽいでしょ? だから、変えたのですよ」
男っぽいって……。オレは元々、男だっての!
「篠崎優ですね。ぶっちゃけ、考えるのが面倒でしたので、優斗の斗を抜いただけなんですけどね」
「ぶっちゃけないでよ……」
そんな理由でこんな名前に変えられたのか。と少しショック受けるからさ。
嘘でもいいからじっくり考えたと言って欲しかった。
「自分はあまり力に成れないかもですが、精一杯尽くさせていただきますね。優さん」
「あ、ああ、よろしく」
依頼主とやらよりもこっちを優先してくれるのなら、更に嬉しいのだけど。そこまで高望みはしたらいけないよね。




