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ドラゴンキャッスル~城ゲーやってたら異世界に転移したっぽい~  作者: なすちー


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26 何狩る?

はじめて作品を書きます。

よろしくお願いします。

毎日朝8時投稿予定です。

「あ、やっぱり! ここにいたんだ」


 人混みを軽やかに縫うようにして、シエルが手を振りながら駆け寄ってきた。


「もう、勝手に行っちゃうんだから。美味しいお店に連れて行くって約束したじゃない」


 ぶう、と頬を膨らませて見せるシエルだったが、その瞳にはケッパーを見つけ出した安堵の色が浮かんでいた。


「……ごめん。忘れてない」


「いいけどね。カイトたちは先に宿へ荷物を置きに行ったわ。重いし、汗もかいたからって。私は身軽だし、ケッパーちゃんを迎えに来たってわけ」


 シエルがいつもの調子で笑いかけた、その時。ケッパーがぴたりと足を止め、シエルの瞳を真っ直ぐに射抜くような、強い視線を向けた。


「シエル。……話、ある」


「えっ……? どうしたの、ケッパーちゃん。そんな顔して」


 普段の無機質な様子とは違う、どこか張り詰めたケッパーの空気に、シエルは思わず言葉を詰まらせた。



帝国食堂『七香路しちこうろ

 テスカポルでも指折りの名店とされるその店で、カイトたちは豪華な個室を貸し切っていた。


 円卓の上には、香ばしい匂いを漂わせる鶏の丸焼き、滋味溢れる琥珀色のスープ、彩り豊かな卵と野菜の炒め物など、帝国の豊かな食文化を象徴する料理が所狭しと並んでいる。


 豪勢な料理を前にしても、ケッパーの表情はいつになく真剣だった。彼女は食べるのを止め、正面に座るシエルを見つめた。


「それで? 話って何かな」

 シエルがスープを口に運びながら促すと、ケッパーは講習会でバルダスと交わした()()()()の約束について、かいつまんで説明した。


「この近くで、強い魔物。常駐依頼があって、倒すとランクが上がるやつ。教えてほしい」


「なるほどねぇ……。あのバルダスを黙らせるほどの獲物か」

 シエルはうーんと唸りながら考え込んだ。そこへ、デザートの果物を摘んでいたルルが口を開く。


「ケッパーちゃん、弓は得意だったよね?」

「……? うん。得意。外さない」

「なら、南西の崖にいる『ハーピー』はどうかな?」


 ルルの提案に、シエルが「あ、いいかも!」と指を鳴らした。

 話によれば、南西の断崖を通る道は、本来は商人たちが使う重要な交易路だったという。しかし、いつの間にかハーピーの群れが巣を作り、今では誰もが遠回りを強いられている。


「あ、でもなぁ…」

 とシエルは迷いながらも答える


「ハーピー自体は、銀等級なら十分に対処できる相手なんだけどね……。問題は場所なのよ」

 シエルが困ったように肩をすくめる。

「あそこは切り立った崖で、下は深い谷底か海。撃ち落とした瞬間に、死体が真っ逆さまなの。討伐証明の『羽根』が回収できないから、手間ばかりかかって誰も寄り付かなくなったのよ」


「谷底まで拾いに行くのは、時間の無駄。……だから、みんな行かない」

ケッパーの言葉に、シエルは苦笑して頷いた。だが、ケッパーは平然と、とんでもない解決策を口にする。


「……問題ない。撃ち落としたあと。ハーピーが落ちるまでに、羽根をもぐ。そうすれば、大丈夫」


「…………え?」 シエルが固まった。

「……待って。落ちるまでに、もぐ? どうやって?」


「矢を射る。落ちる。その間に、私が飛ぶ。羽根を取る。地面に着く前に」


「「…………」」 個室に静寂が流れた。

 重力という概念を置き去りにしたその提案に、シエルは顔を引きつらせる。

「ケッパーちゃん……冗談、だよね? 物理的に無理じゃない?」


「いや。ケッパーができるって言うなら、できるんだろう。俺は信じるよ」

 カイトが鶏肉を頬張りながら、あっけらかんと言い放った。エンキも深く頷いている。


「よし! なら、明日は私たちの依頼もないし、私も着いていくわ。ケッパーちゃんのサポートなら任せて」

「私も行く。その『落ちる前にもぐ』っていうの、特等席で見せてもらうわ」

 シエルとルルがノリノリで賛成した。一方で、レメディだけは申し訳なさそうに手を合わせた。


「ごめんなさい。私は明日、近くの修道院へ顔を出さなきゃいけなくて……」


「いいさ、レメディ。俺は街で装備の補充や、次の依頼の下調べをしておくよ。……二人とも、ケッパーを頼んだぞ」

 カイトがまとめると、話は決まった。


 食事が一段落した頃、シエルがケッパーの肩を優しく抱き寄せた。

「ところで、ケッパーちゃん。今日は泊まるところ、決まってる? もしよかったら、私たちの宿に来ない?」


 ケッパーは少しだけ考え、言葉に甘えることにした。

「……はい。お願いします」


「よーし、決まり! 今夜は女子会よ! 寝かせないんだから!」


「女子会。……お喋り。……了解。頑張る」


 ケッパーの「頑張る」の方向が少しズレている気がしたが、シエルたちの笑い声は帝国食堂に明るく響き渡っていた。




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