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ドラゴンキャッスル~城ゲーやってたら異世界に転移したっぽい~  作者: なすちー


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20/37

20 王国2

はじめて作品を書きます。

よろしくお願いします。

毎日朝8時投稿予定です。


 アレクサンドリア王国、王都アレクサンドリア。 その中心に鎮座する冒険者組合の最上階には、組合長室がある。


 室内は、壁一面を埋め尽くす書架に圧倒される空間だった。そこには膨大な数の冒険者たちの活動記録を記した羊皮紙や、魔物の生態を記した古書、そして周辺諸国の地図が整然と並んでいる。 足元には深い赤の豪華な絨毯が敷かれ、部屋の主が座る重厚な机の上には、数本の羽根ペンと山積みの書類が置かれていた。


「ようやく帰ってきたか。――『白夜(びゃくや)』よ」


 デスクの奥に座る、四十代後半の貫禄ある男性。王都組合長ソーモンが、低い声を響かせた。


「……その呼び方、やめてって言ってるでしょ」


 ソファに身を投げ出し、不満げに口を尖らせたのは、銀髪の二十代の女性だった。動きやすそうなローブを纏ったその姿は、一見するとどこにでもいる若い魔導士に見える。


「そうは言ってもな。最高級冒険者ともなれば、二つ名がつくのはこの世界の決まりだ。諦めろ、セレーナ」


「自分で名乗るならまだしも、他人に勝手につけられた称号なんて、愛着の持てるはずがないわ」

 セレーナは溜息をつき、投げ出した足をぶらつかせた。


「まあ、そう言うな。改めて――王国の白金冒険者・セレーナ。お前に大貴族様からの指名依頼が入っている」


「……すごく断りたい。でも、一応内容は?」

セレーナの表情が露骨に曇る。ソーモンは苦笑交じりに首を振った。


「内容は『直接会って話をする』とのことだ。事前の情報開示は一切なし。貴族特有の隠し事というやつだな」


「なおさら行きたくないわね……。面倒な予感しかしないもの」


「場所と日時は、三日後の昼。ジークハルト侯爵邸だ。向こうから迎えの馬車が来るそうだ。一応、これが依頼書だ。渡しておくぞ」


 ソーモンが差し出した重厚な封筒を、セレーナはしぶしぶと受け取った。


「あ、迎えは私が借りてる宿屋――『満腹黒猫亭』でいいのよね?」


「ああ。お前さんのことだ、どうせそこだろうと思って指定しておいたぞ。あそこの飯はお前のお気に入りだろう?」


「わかったわ。ありがとう、ソーモンさん。……それじゃあ」



 宿屋『満腹黒猫亭』


 王都の喧騒から少し離れた路地裏に、その宿はある。 『満腹黒猫亭』。白金冒険者の定宿にしては、驚くほど質素な二階建ての木造建築だ。しかし、使い込まれた看板や風情のあるその建物は、数多くの冒険者に利用される宿屋であることを物語っていた。


 カランコラン、と乾いた鈴の音が店内に響く。

「ただいまー、おばさん」


 セレーナは扉を開けるなり、長旅の疲れを吐き出すように大きく息をついた。 カウンターの奥から顔を出したふくよかな店主が、顔をほころばせる。


「おや、おかえりセレーナちゃん」


「おばさん、いつもの食事お願いできる? あとこれ、お土産。余ったら適当に店で使ってよ」


 セレーナが何もない空間にひょいと手を伸ばすと、そこから波紋のような魔力が広がり、氷漬けにされた巨大な肉の塊が現れた。ドスン、とカウンターに置かれたそれは、氷越しでも分かるほど見事な赤身の肉質を保っている。


「おやおや……こりゃまた凄いね。もしかして、ドラゴンの肉かい?」


「うん、そう。帰り道で見かけたから捕ってきたの。あ、ドラゴンって言っても『地竜ランドドラゴン』だから。空を飛ばない、ちょっと大きいトカゲみたいなやつよ」


「……飛べないやつって言っても、ドラゴンはドラゴンなんだけどねぇ」

 おばさんは呆れ半分、感心半分に苦笑いした。王国の最高戦力にとって、地竜は「道すがらのトカゲ」程度の認識らしい。


「いつものステーキでいいかい?」 「うん、香辛料たっぷりでお願い」


 ジューッ、という食欲をそそる音と、鼻をくすぐるスパイシーな香りが店内に広がる。 運ばれてきた厚切りのステーキを、セレーナは至福の表情で堪能した。食後、淹れたての温かいお茶をおばさんに差し出され、ようやくセレーナの肩から力が抜ける。


「しばらく、ゆっくりできるのかい?」

 おばさんはカウンター越しに、娘を見守るような優しい眼差しで尋ねた。


「うーん、多分無理かな。とりあえず三日ほどは王都にいるつもりだけど、その後はまた面倒な用事が入ってて……」


「そうかい、相変わらず忙しいねぇ。いつもの二階の角部屋、いつでも使えるように空けとくから。疲れたらいつでも戻ってきな」


「ありがとう、おばさん。助かるわ」


「なーに、いいってことさ。いつもこんな最高級のお土産をもらってるんだ、これくらい当然だよ」


 おばさんが肉の塊を抱えて厨房へ戻っていくのを見送りながら、セレーナは最後の一口のお茶を飲み干した。


「それじゃあ、おばさん。二階に上がるわね」


 セレーナは軽く背伸びをして立ち上がった。


「あいよ。ゆっくりお休み、セレーナちゃん。明日の朝、あんたが起きてくるまで朝食は取っといてあげるからね」


「ありがとう、おばさん。……おやすみ」


 二階の角部屋に足を踏み入れ、静かに扉を閉める。 セレーナは深く息を吐き出すと、身に纏っていた黒い光沢を放つ重厚なローブの留め金を外し、そのあたりの床に脱ぎ捨てる。

フリルの付いた可愛らしいコットンの寝間着に着替え、そのままベッドに倒れ込む。


「三日後かぁ……。あー、面倒だなー……」

 枕に顔を埋め、くぐもった声で文句をこぼす。


「…でも、今日はもう寝る」

 そのまま、セレーナは深い休息の海へと沈んでいった。



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