16 会談
はじめて作品を書きます。
よろしくお願いします。
次話、18時投稿になります。
運命の会談当日。
「白銀の剣」の一行は、昨日と同じ宿の一室でその時を待っていた。
窓の外では太陽が天高く昇り、時刻はちょうど昼を過ぎた頃合いだ。
コンコンコン、と軽快なノックの音が静まり返った室内を叩く。
「失礼しまーす! 皆さーん、準備はいいですかー?」
扉の向こうから聞こえてくるのは、相変わらず屈託のないアニスの明るい声だ。
「ああ、いつでもいける。入ってくれ」
リーダーのカイトが短く応じると、アニスがひょっこりと顔を出した。
「おはようございまーす! ……ってお昼ですね。そろそろお城へ案内しようと思うんですけど、身支度の方は大丈夫そうですか?」
アニスは普段通りの気軽な調子で問いかける。
しかし、カイトは無意識に剣の柄を握り直し、革鎧のベルトを締め直していた。レメディやルルも、正装とまではいかないまでも、冒険者として最大限身だしなみを整え、表情は硬い。
「ああ、お願いする。……失礼のないようにしたいからな」
カイトの声がわずかに強張っているのに気づき、アニスはくすりと笑った。
「あはは! そんなに身構えなくても、多分大丈夫ですよー。主は意外と、堅苦しいのは好きじゃないですから」
アニスはそう言って一行をリラックスさせようとウィンクをして見せると、くるりと背を向けた。
「では、案内しますね! 主城へレッツゴーです!」
アニスの背中を追い、カイトたちは大きく深呼吸をしてから、宿の部屋を一歩踏み出した。
宿の大通りを北へ抜けると、目の前には白と紫を基調とした、息を呑むほど美しい城がそびえ立っていた。
城内へと足を踏み入れた一行は、アニスの案内で、玉座の間ではなく広々とした応接室へと通される。
「ここで少し待っていてくださいねー」
アニスは手際よく、湯気の立つ紅茶と彩り豊かな茶菓子をテーブルに並べた。高級感溢れる調度品に囲まれ、カイトたちは座り心地の良すぎるソファで所在なげに背筋を伸ばす。
しばらくして、部屋の反対側にある重厚な扉が静かに開いた。
「失礼するよ、カイト殿」
老執事ソレルと、昨日のメイド・ケッパーを伴って現れたのは、一人の人物だった。
「ナ、ナナシ……様……っ!?」
カイトは驚愕のあまり、危うく手にしたカップを落としそうになった。 てっきり、厳しい衛兵に囲まれた玉座の間で、高い壇上から見下ろされるような謁見を想像していたからだ。まさか主自ら、このような寛いだ場に、わずかな供回りだけで現れるとは思ってもみなかった。
「いやー、すまないね。私はどうも堅苦しい場所は苦手でね。ここなら落ち着いて話ができるだろう?」
ナナシはそう言って、気さくな笑みを浮かべながら対面のソファに腰を下ろした。
そのあまりに自然な振る舞いに、カイトは一瞬呆気に取られたが、すぐさま居住まいを正して深く頭を下げた。
「……失礼いたしました。この度は、本当にありがとうございました。瀕死の重傷を負っていた仲間を救っていただいただけでなく、至れり尽くせりの宿や食事、質の高い装備まで……。これらすべての対価は、ナナシ様の言い値でお支払いいたします。もし今、持ち合わせが足りぬようであれば、後日必ずや工面してお持ちいたします」
レメディやルル、他のメンバーも、カイトに倣って心からの感謝を述べる。冒険者にとって命を救われた恩は、何物にも代えがたい重みがあった。
「ふむ、代金のことか……」
ナナシは運ばれてきた紅茶に軽く口をつけ、静かに言葉を続けた。
「それについては、心配いらない。追加の費用を受け取るつもりはないよ。その代わり――私からの『簡単なお願い』をいくつか、聞いてもらえないだろうか」
「お願い……、ですか?」
カイトが聞き返すと、ナナシの瞳が好奇心と、わずかな計算を含んだ光で細められた。




