10 冒険者
はじめて作品を書きます。
よろしくお願いします。
次話21時更新予定です。
ネクロエリシュオンの南門前に辿り着いたヒューマンの一行は、全部で五名。
三頭の馬のうち、二頭の背には重傷者が横たわっている。かろうじて意識を保っている状態で、手綱を握ることすら難しく、残りの軽傷者たちがそれぞれの馬に同乗して、その身体を必死に支えている状況であった。
「不躾ですまない! 我らは帝国所属の冒険者パーティ『白銀の剣』、リーダーのカイトだ!」
大盾を背負った若い男が、声を振り絞るように叫んだ。
「可能な限りの補給と、休息の場を貸してほしい! もちろん、相応の報酬は支払う。……頼む、門を開けてはくれないか!」
帝国?
冒険者?
『ドラゴンキャッスル』にはそんなシステムも、勢力名も存在しなかった。
やはりここは、ゲームの設定すら通用しない「異世界」なのだろうか。
「若様、いかがなさいますか」
ソレルが静かに判断を仰いでくる。
「一応聞いておきたい。アニス、ケッパー、ソレル。仮にあの一団と戦闘になった場合、勝機はあるか?」
「んー、楽勝じゃないですかねー? だいぶ消耗してるみたいですし。全快だったとしても、そこまで脅威には感じないです」
アニスが軽薄なほど明るく即答した。
「ケッパーも、弓を使わなくても勝てる。……そんな気がする」
「若様、私も彼女らと同意見ですな」
三者ともに、相手を脅威とすら見なしていない。
ならば――引き入れる価値はある。情報も、この世界の通貨とやらも手に入れたい。
「……分かった。友好的に迎え入れるとしよう」
地響きを立てて、巨大な南門が左右に開かれた。
「これは……入ってもいい、ということかな?」
一行の一人、不安げな表情を浮かべた軽装の女性が呟く。
「どのみち、俺たちが助かるにはこの街に頼るしかない。進もう」
リーダーのカイトが決断し、一行はゆっくりと門をくぐった。
だが、街に足を踏み入れた瞬間に彼らを待っていたのは、安らぎではなかった。
「ひっ、あ、アンデッド!? スケルトン!!?」
通りを平然と歩く骨の兵士たちを見て、軽装の女性が悲鳴を上げる。
「っ、総員! 動ける者は戦闘準備を――!」
カイトが慌てて剣を抜きかけた、その時だった。
「ようこそ、ネクロエリシュオンへ。歓迎するよ、ヒューマンの一行」
私はアニスとソレルを左右に従え、怯える彼らの前に静かに姿を現した。




