レンタル・ラブ・エージェント星恋のメモリー

星見学園の春、桜並木は淡い花びらで彩られていた。星野愛梨、17歳の恋愛代行エージェント「スター」は、部室の窓辺でホロタブレットを手に深呼吸する。新たな依頼――「本当の気持ちを知りたい」。差出人は匿名、詳細は「図書室で待つ」の一文だけ。愛梨の胸がざわめく。月島玲奈への初恋が、冬の告白で過去になったはずなのに、桜の香りに心が揺れる。

「またナゾだね、悠真」。愛梨は佐伯悠真に微笑む。悠真は教科書を閉じ、「愛梨の推理、春も冴える？」と返す。冬のマフラー以来、二人の距離は少し近づいたが、恋人未満の甘酸っぱさが残る。悠真の瞳には、貧困を越えた優しさが滲む。

放課後、エージェンシーの部室にチームが集まる。月島玲奈はホロタブレットを操作し、「匿名依頼はリスクが高い。感情データが不足」と冷静に言う。だが、愛梨を見る瞳に微かな温もり。佐伯美月は桜色のマカロンを配り、「匿名ってドキドキ！恋のナゾ、解きたいね！」。美月の笑顔は、玲奈への想いを隠す仮面だ。AI「Cupid-9」がホログラムで現れ、「依頼者の入力パターン、過去の依頼者と一致率87%」と報告。愛梨はペンをカチリ。「このナゾ、私のカルテに刻むよ」。

図書室での面談。夕暮れの光が本棚を柔らかく染める。依頼者は1年B組の葵、冬に愛梨たちが救った彩花の友人だ。葵は本を抱き、「好きな人の…本心がわからない」と呟く。声が震え、指がページを強く握る。愛梨は葵の瞳に映る怯えを感じ、「その人との思い出は？」と優しく問う。葵は囁く。「桜並木…一緒に歩いた時、笑ってくれた」。愛梨の心臓が締まる。玲奈と並木を歩いた記憶が蘇る。悠真がそっと手を握り、「大丈夫、解けるよ」。その温もりに、愛梨の頬が熱くなる。

玲奈がCupid-9で葵の行動ログを解析。「葵は3年A組の悠斗と頻繁に接触。悠斗は文芸部で、葵と同じ本を借りる」。美月が目を輝かせ、「悠斗くん、クールな文芸男子！葵ちゃんの恋、応援したい！」。愛梨は目を閉じ、推理を巡らせる。「葵のナゾは、悠斗の笑顔の意味。でも、本心がわからない理由は…」。葵が涙をこぼす。「彼、誰かを待ってる気がする」。愛梨の胸に、玲奈を待つ自分の姿が重なる。

調査は桜並木へ。花びらが舞う中、悠真が「愛梨、春なのに寒そう」とジャケットをかける。愛梨は笑う。「ナゾハンターに春風はスパイス！」。だが、玲奈の視線に心が揺れる。美月が玲奈の袖を摘み、「桜、綺麗だね。一緒に見よう？」。玲奈は頷き、指先が微かに震える。Cupid-9が並木の監視データを解析。「悠斗が葵と歩いた日、別の女子にメッセージ送信」。愛梨は葵の言葉を思い出す。「悠斗は誰かを待ってる…でも、葵には笑顔を」。

悠斗との対話は文芸部の部室で。彼は本を手に穏やかに言う。「葵はいい友達。並木で話すの、楽しかった」。だが、瞳に影。「昔、好きだった子がいた。今も…連絡を待ってる」。愛梨の喉が詰まる。玲奈への想いを封じた自分と重なる。悠真が囁く。「愛梨、葵の心を救おう」。その声に、彼女は頷く。

部室で、愛梨は葵に提案。「悠斗に気持ちを伝えて。本心を知るのが、ナゾの答えだよ」。葵は震えるが、愛梨の手の温もりに勇気を貰う。桜並木での再会。葵が「悠斗くん、好き」と告白。悠斗は驚き、優しく言う。「ありがとう、葵。友達として、君の笑顔が好きだ」。葵は涙を拭き、微笑む。「これで…歩ける」。愛梨は玲奈を見る。玲奈が小さく微笑む。「いいカルテだね」。愛梨の心が温まる。

美月が玲奈に囁く。「私も、桜の下でナゾ解きたい」。玲奈の頬が桜色に染まる。悠真が愛梨の手を握り、「次のナゾも、一緒に？」。愛梨は笑う。「当然！私のカルテ、終わりじゃないよ」。

部室の窓に桜の花びらが舞う。愛梨はペンダントを握る。「恋のナゾ、解き続けるよ」。Cupid-9に次の依頼が届き、チームは笑顔で動き出す。桜並木が春風に揺れ、星見学園の新たな物語が始まる。

END