ひねくれモーニング
「今日も良い日になりますように。」
ラジオを聴きながら寝起きのコーヒを飲む。聴こえてくる不幸話は、俺には嫌味にしか聞こえない。
「今日も…?」と思いつつも、朝から捻くれても仕様がない。ベランダの鉢に植えた、何の種だったか忘れてしまった芽が、日に日に伸びているのを見て、この瞬間だけは心が綺麗になる。
真っ直ぐな朝の光を浴び、仕事へ向かう。
畑には霜が降りている。夏は40度近くあり、体が溶けてしまいそうだったのに、当たり前なのだけど、何だか不思議だ。折角だから霜を踏んでおく。
ヒヨドリやムクドリが飛ぶ。言葉だけが飛び交い、他人の失敗で自分の正義を振り回す世に嫌気が差していたが、鳥たちが自由に飛び回っているのを見ていると、小さな世界で縮こまっているのがバカらしくなってくる。見上げた空は、青く透き通り、冷たい風が却って心地良い。
同じような日々を過ごすだけで精一杯。周りがどんなに幸せであろうがなかろうが、ひたすら一歩一歩進むだけ。子供の頃の自分が、今の自分を見たらどう思うだろう。悲しむだろうな。夢は夢でしかなく、現実は厳実だった。
惨めなものに自分を重ねるのは楽かもしれない。ゴミ、ドブネズミ、クソ。それに対して「美しい」と言えば、根拠がなくても、なにか良いことを言っているような気になれる。
そのようなことを思って歩いていると、先の方に何かが車にでも轢かれたのでだろう、無様に潰れた死体がある。自分もいつかはそうなってしまうのか、むしろ既にそうのように自分は見えてしまっているのではないか。とてもじゃないけど、美しいとは思えない。 ネズミかな、どんな顔で死んだのだろう。その顔を見たら案外、親近感が湧くかもしれない。
そっと、横を通り過ぎる時、横目で死体を見てみれば、
「潰れた柿じゃねぇか。」
クールに決めようと思っても決まらない、二回目の成人ももうすぐの男の、捻くれた一日が今日も始まる。