表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ひねくれモーニング

作者: あお

 「今日も良い日になりますように。」

 ラジオを聴きながら寝起きのコーヒを飲む。聴こえてくる不幸話は、俺には嫌味にしか聞こえない。

 「今日も…?」と思いつつも、朝から捻くれても仕様がない。ベランダの鉢に植えた、何の種だったか忘れてしまった芽が、日に日に伸びているのを見て、この瞬間だけは心が綺麗になる。


 真っ直ぐな朝の光を浴び、仕事へ向かう。

 畑には霜が降りている。夏は40度近くあり、体が溶けてしまいそうだったのに、当たり前なのだけど、何だか不思議だ。折角だから霜を踏んでおく。

 ヒヨドリやムクドリが飛ぶ。言葉だけが飛び交い、他人の失敗で自分の正義を振り回す世に嫌気が差していたが、鳥たちが自由に飛び回っているのを見ていると、小さな世界で縮こまっているのがバカらしくなってくる。見上げた空は、青く透き通り、冷たい風が却って心地良い。


  同じような日々を過ごすだけで精一杯。周りがどんなに幸せであろうがなかろうが、ひたすら一歩一歩進むだけ。子供の頃の自分が、今の自分を見たらどう思うだろう。悲しむだろうな。夢は夢でしかなく、現実は厳実だった。


 惨めなものに自分を重ねるのは楽かもしれない。ゴミ、ドブネズミ、クソ。それに対して「美しい」と言えば、根拠がなくても、なにか良いことを言っているような気になれる。

 そのようなことを思って歩いていると、先の方に何かが車にでも轢かれたのでだろう、無様に潰れた死体がある。自分もいつかはそうなってしまうのか、むしろ既にそうのように自分は見えてしまっているのではないか。とてもじゃないけど、美しいとは思えない。 ネズミかな、どんな顔で死んだのだろう。その顔を見たら案外、親近感が湧くかもしれない。

 そっと、横を通り過ぎる時、横目で死体を見てみれば、


 「潰れた柿じゃねぇか。」


 クールに決めようと思っても決まらない、二回目の成人ももうすぐの男の、捻くれた一日が今日も始まる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
今日あったことを小説という体でアウトプットしているかのようなリアリティとコミカルなツッコミが可笑しくてついクスッとしてしまいました。とても面白かったです! あおさんの作品を勝手ながら楽しみにしていま…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ